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第190回国会における安倍内閣総理大臣の施政方針演説

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一 はじめに

(未来へ挑戦する国会)

 開国か、攘夷か。

 百五十年前の日本は、その方針すら決められませんでした。終わらない議論、曖昧な結論、そして責任の回避。滅び行く徳川幕府を見て、小栗上野介は、こう嘆きました。

 「一言以て 国を亡ぼすべきもの ありや、
どうかなろう と云う一言、これなり
  幕府が滅亡したるは この一言なり」

 国民から負託を受けた私たち国会議員は、「どうにかなる」ではいけません。自分たちの手で「どうにかする」。現実を直視し、解決策を示し、そして実行する。その大きな責任があります。

 経済成長、少子高齢化、厳しさを増す安全保障環境。この国会に求められていることは、こうした懸案に真正面から「挑戦」する。答えを出すことであります。

 批判だけに明け暮れ、対案を示さず、後は「どうにかなる」。そういう態度は、国民に対して誠に無責任であります。是非とも、具体的な政策をぶつけあい、建設的な議論を行おうではありませんか。

 私たち自由民主党と公明党の連立与党は、決して逃げません。安定した政治基盤の下、そして、この三年間の大きな実績の上に、いかなる困難な課題にも、果敢に「挑戦」してまいります。

(世界経済の新しい成長軌道への挑戦)

 世界経済の不透明感が増しています。これまで力強く成長を牽引してきた新興国経済に、弱さが見られます。

 二十一世紀に入って十五年。安い労働力、緩い環境規制、「より安く」生産できる地を求め、新興国への投資が拡大しました。工業化は、人々を豊かにし、新興国に大きなマーケットを生み出しました。

 しかし、経済が成長すれば、労働コストは上がる。公害も発生します。「より安く」を追い求める、デフレ型の経済成長には、自ずと限界があります。

 そのリスクが顕在化する前に、世界が目指すべき、新しい成長軌道を創らねばなりません。

 イノベーションによって新しい付加価値を生み出し、持続的な成長を確保する。「より安く」ではなく、「より良い」に挑戦する、イノベーション型の経済成長へと転換しなければなりません。

 模倣、過酷な労働、環境への負荷。安かろう悪かろうは、世界のマーケットから一掃すべきであります。二十一世紀にふさわしい経済ルールを世界へと広げる、大いなる「挑戦」。TPPは、その最初の一歩であります。

 イノベーションを次々と生み出す社会へと変革する。その鍵は多様性であります。三人寄れば文殊の知恵。多様性の中から、新たなアイデアが生まれ、イノベーションが起こる。「一億総活躍」は、そうした新しい経済社会システムを創る「挑戦」であります。

 自然との共存の中で育まれた、おいしくて、安全な日本の農産物。環境と調和し、最大限の省エネを追求してきた「メイド・イン・ジャパン」の品質。日本は、古来、付加価値の高いものづくりを実践してきました。そのマインドを世界へと広げる。日本のリーダーシップが求められています。

 伊勢神宮、美しい入江。日本の長い伝統や文化、豊かな自然を感じられる、伊勢志摩の地で開く五月のサミットは、その大きな舞台であります。基本的価値を共有する主要国のリーダーたちと、世界経済の未来を論じ、新しい「挑戦」を始める。そのようなサミットにする決意であります。

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