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食品と廃棄物とのあいだ

廃棄物として処理専門会社に引き渡した食品が、横流しされ特価食品として売られていたという事件が拡大している。想定外の事態で取り締まりの態勢も不備だったというのだが、ありそうなことだという感想もある。

 数年前のことだが、大手デパートの取材撮影で、閉店前後の店内の様子を見たことがあった。こちらは閉店後に落ち着いたところで店員さんの働く風景を「やらせ」で撮影する予定だったから、邪魔にならないところで時間待ちをしていた。そこは取材目的に隣接するパンなどの食品売り場の横だった。時間がきて店内に客の姿がなくなったところで、職場の後片付けが始まったのだが、その光景が強烈な印象だった。

 裏から大きな台車つきの金網カゴが引き出されてきて、売れ残ったパンがその中へ素手で掴んでポンポンと投げ入れられて行くのだった。ついさっきまで商品として大事に扱われ、1個100円以上で売られていた菓子パンたちも、両手でぎゅっとまとめて放り込まれていた。味自慢のパンが、産業廃棄物になる瞬間だった。

 パンだから行き先は家畜の飼料か肥料か知らないが、とにかく手間と費用をかけて廃棄しなければならないわけだ。完売しないかぎりは残った食品は捨てなければならない。デパートだから閉店間際の値引き販売などはしないようだ。こういうところで「食べられるのにもったいない」などという理屈は通用しないのだと思った。 

 食品廃棄物は、日本では年間1700万トンも出ているそうだが、世界全体では生産される食料のうち、ほぼ3分の1に当る13億トンが廃棄されているというFAOの衝撃的な報告がある。もちろん廃棄率が高いのは先進国で、貧困国では廃棄される食料は、ごく少ないいうことだ。ここにも大きな格差が存在している。

 食品会社としたら、少しでも疑点のある食品は絶対に販売ルートには出せないという信用の問題があるだろう。消費者の目は厳しくなっている。だが、廃棄物を多く出すのが良心的な商売というのは、ちょっと違う気がする。大手の食品会社は、「廃棄されない食品の作り方」を、経営指標に取り入れるべきではないだろうか。

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