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5回で6万円余り! NYタイムズの高校生向け講義

広告収入の激減に悩まされる米国の新聞業界。以前、収入源の多様化に向けての動きを紹介しましたが、ニューヨークタイムズ(NYT)が、自社の人材を生かして教育分野で新たなビジネスを展開していることを遅まきながら知りました。日本の新聞社も真似できるかも知れないのでまとめておきます。

新ビジネス名前は「The School of The New York Times」です。大学進学を目指す高校生向けと専門能力の開発を目指す社会人向けの2コースがあり、高校生向けは週末にNYT本社ビル内に集まって講義を受け、社会人向けは映像配信によるオンデマンド教育です。

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NYT本社内で地球温暖化とエネルギーの講義を受講する高校生

驚くのは、その料金。複数の講座がある高校生コースは週末の午前か午後の2時間半、計5回の授業で525ドル(約6万3千円)もします。そのほかにメンバー料金が年間149ドル(約1万8千円。初年度は95ドル)かかります。通信教育の社会人向けは95ドル(約1万1千円)と345ドル(約4万1千円)に設定されています。ほかにも、いろんなイベントも行います。これらを積み重ねると相当な収入になるはずです。ちょっと計算してみましょう。

イベントとしては、折々にNYTのホール(387席)を使った教育関連の有料シンポジウムを開きます。昨年10月に開いた「大学の選び方とその準備」という第一回シンポは95ドルと高額でしたが完売し、38ドルでライブ配信までしました。

夏休みには全国の高校生を対象に「文化と金融の中心、ニューヨークを知ろう」という2週間に亘る「NYC Summer Academy」を4回も開くと予告しています。宿泊、食事付きですが、なんと4,950ドル(約60万円)!

高校生向けは昨年11月から12月にかけて6講座を開きましたが、社会人向けは15講座の案内はあるもののいずれも「coming soon」とあり、春開講の予定のようです。で、各講座ごとの定員や実際に高校生が何人”入学”したかはNYTは明らかにしていません。

ただ、スタート前に教育専門サイトEducationWeekの記事は「高校生講座は30人規模になりそう」と報じていました。そうだとして、もし定員が埋まれば、6講座で180人が545ドルと初年度メンバー料金95ドルを払うので、ざっと12万5千ドル(約1500万円)。

二期目の高校生講座が今月23日の土曜日から始まりますので、2か月ごと、年6回のペースだと仮定すれば、年間約9,000万円。(実際には二期目は講座数が一期目より増えていますので、今後増えるなら、さらに見込むことが可能かもしれません)。

シンポジウムは95ドルで300席余りが売れたとして3万ドル(360万円)と38ドルのライブ配信料。これを年4,5回開くとすると1,500万円になりそう。

夏の高校生合宿は6月初めから8月にかけて2週間づつ次々開催とサイトには告知していますが、募集人数には言及がありません。仮にトータル100人が参加すればざっと6,000万円。200人なら1億2,000万円

本当にラフな計算ですが、ある程度推定出来る上記の数字だけで年2億円前後。これに社会人コースが加われば3億円に届くかも知れません。さらに、講座数を増やしていけば、数字はさらに将来的に拡大することでしょう。

もちろん、講師料がかかりますから、丸々儲けというわけには行きませんが、実は、講師陣にはNYTの現役または元記者、ネイティブ広告やビデオ広告を製作する自社チームのT Brand Studioのスタッフが数多く含まれ、このほかNYTへの寄稿者など関係者も少なくないので、法外なことにはならないようにも見えます。

さて、金目のことはこのくらいにして、なぜ、高校生が大枚をはたいてNYT本社に集まるのでしょうか?それは、どうやらAO入試が基本である米国の大学の選考システムと関わりがあるようです。

nytEducationのFAQページにそれを伺わせる内容が記述されていました。「週末コースは高校生が競争率の高い大学に入る助けになるという意味があるのか?」という質問への答えはこうでした。

学問的に厳しいいかなるプログラムの達成は、学生が大学に入る助けになるべきで、わがnytEducationもその例外ではないと感じている

そのために、具体的にどんな講座があったかですが、なぜか昨年11−12月に開かれた一期目の内容がサイトに残っていないので、Facebookへの投稿から拾ってみると、「ピュリツァー賞記者による地球環境問題」「大学入学のための説得力のある小論文の書き方」「スポーツマネジメントとスポーツメディア」「音楽、演劇、美術、テレビ批評の書き方」「若者の起業の基礎」「世界の中心、NYCをどう報じるか」と、なるほど学校の教室では学べないような、そして大学入学願書に書けば、”ハク”が付きそうな内容です。

おそらく夏の合宿もそうした意図があるのでしょう。しかし、それらもNYTというブランドがあってのことという側面もあります。指導するインストラクターとして専門性を持った社内外の人材に事欠かないということもあるかもしれませんが。

そして、もう一つの狙いは、若者の新聞離れを少しでも防ぐという意図もあるかも知れません。メンバー料金を払えば、NYTデジタルへのアクセスが自由に出来、その一方でFacebookページで講座内容に関する有益な記事の紹介も随時、行って、新聞記事への関心を高めるようにしているからです。さらに、NYT本社に通った受講者には、当然、NYTへの愛着も生まれるでしょう。収入源の多様化だけでなく、その意味でも目の付けどころが良かったように見えます。

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