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景気を回復させたいなら内需拡大じゃないの?

[FT]原油安より劇的 海運でみるグローバル化の停滞
2016/1/18 英・フィナンシャルタイムズ
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO96151490V10C16A1000000/

下げ止まらぬ日本株、長期投資家も売り 世界経済警戒
2016/1/18 [有料会員限定] 日本経済新聞
http://www.nikkei.com/markets/features/30.aspx?g=DGXMZO9623238018012016000000

さて株価が大幅に下げております。日経平均は1万7千円を割りました。
今年は日経平均2万5千円までいくとなどという、華々しい株式市場の活況を予言している人たちもおりましたが、どうなるんでしょうかね。所詮株価なんてのは、あまり実体経済を反映しません。
企業の業績がストレートに株価に反映されるならば誰も苦労はしません。

ところが安倍首相は昨年株価が上がったことについて、だから景気はよくなったのだ、アベノミクスは買いだ、成功だと自画自賛しておりました。その言ならば、今アベノミクスは失敗でしたと言わないといけないでしょうに。言い訳はしておるようですが。

株価が上がってきた要因の一つはGPIFなどで公的資金をつぎ込んできたからです。いわば官製相場です。ところが相場が下がっても図体の大きいGPIFは売るに売れない状態です。大丈夫ですかね?

日経あたりは原油安が悪い、だから景気が悪くなるなんてことを書いているようですが、それは日経自体が経済新聞ではなく「相場師新聞」であり「株屋新聞」だからです。

無論原油価格の低下で産油国は大変でしょう。それらの国々に投資している会社は大変でしょう。ですが、原油安、円高は日本経済、特に消費者にとって慶賀すべきことです。
ところが黒田日銀総裁は原油安は日本経済に悪いからと、追加緩和を行いました。

何度も申し上げておりますが、我が国のGDPの6割は個人消費です。そして多くの中小零細企業が小売や流通をはじめ、個人消費に関わる商売をしております。
これを元気にしないと賃金が上がらないし、景気も良くなりません。
ところが政府の方策はこの個人消費を下げる方向のものばかりです。

また個人消費は輸出と異なり、他国の経済影響の左右をあまり受けません。

ところが安倍首相や日銀は「物価を上げれば、消費者はモノをもっと買うようになる」と主張してインフレ誘導をしてきました。
そして実際に行ったのは円安誘導によるコストアップのインフレ誘導です。

消費商材の多くは輸入品です。国産品でも部材や原料は輸入です。農業にしても飼料や肥料、燃料は輸入です。コストプッシュ型インフレでは輸入者、生産者、流通業者、消費者がすべて負担が増えます。

実際問題としてコストをすべて消費者に転嫁でき、消費者がそれを是として、消費を増やせば安倍首相や黒田日銀総裁の仰るとおりになります。

ですがそうでしょうか。

普通の消費者が円安のせいで昨年1万円だったカシミアのセーターが1万4千円になったら、もう一枚買おうと思うでしょうか。「高いなあ、それじゃメリノールのセーターにするか。それとも去年買ったセーターがあるからいいや」、となるでしょう。
多くの消費者はタンスの肥やしとなった服を持っており、よほど流行を追う人間でなければ着るものをどんどん買わなくても不便はありません。それが実用目的の衣料であれば尚更でしょう。

逆に円高還元で、1万円のカシミアのセーターが8千円になり、2着で1万5千円というセールがあれば二着買うでしょう。また1着買って浮いた2千円でマカロンやフィナンシェなどを買うかもしれません。

どちらの方が消費が増える可能性があるでしょうか。輸入者、生産者、流通業者、小売店はコストが下がればその分、利益が増えるし社員の給料も増やせます。そして日本の企業の99.7%は中小零細企業です。

常識的に考えれば、需要が増えれば商品の価格は上がります。100個ある100円のりんごを80人が欲しがっていたものが、200人が欲しがれば、りんごの値段は120円や150円にしても売れます。そうであれば、利益も増えます。

このような需要が増えることによる、インフレであれば経済は拡大します。
だからといって、インフレになれば需要が増えるというわけではありません。

それは、ポストは赤い。ならばりんごは赤いのでポストである、というような胡乱な理屈です。

実際に昨年の百貨店の売上も一昨年を下回っています。

円安誘導で得られる利益は極めて少ないわけです。
上場企業で輸出比率が5割を超えるのはわずか8パーセント、約350社程度に過ぎません。円安の利益をダイレクトに享受できるのは殆ど彼らだけです。これらの企業が下請けに払うだけ、円安で見合った利益率を下請け企業に払ったり、社員に払ったりしたでしょうか。
安倍首相のおっしゃる「企業は儲かっている」というのはこの上場企業の中の僅かな企業だけです。アレな首相の日本企業とは上場企業で、輸出比率が高い企業のことだけを指しているのでしょう。

そら、1ドル80円で輸出していたものが150円になれば自動的に棚ぼたで儲かります。ところが、これらの企業が輸出を殆ど伸ばしていません。政府が人為的に誘導した為替で、自動的に利益が何倍になっただけのことです。そりゃウチだって、今と同じ売り上げて、1ドルが80円に戻れば何倍も利益は増えますよ、何の努力もしなくても。そりゃ濡れ手に粟ですわね。
こんなことは商売をしている人間は教わらなくとも肌で感じることです。ところが偉い議員やら経済学の先生はわからない。

経済学ほど怪しげな学問はありません。数式を使ってそれらしく見せていますが、再現性がない世界です。つまり科学と違って実験のしようがない。そこで声の大きい、偉そうなおっさんの主張が正しいということになります。それは宗教と同じです。
商売と経済学は工学と理学以上に違います。例えば理論物理学の学者が原子力発電所を設計したら大変なことになるでしょう。

昨今の国会答弁をみていても首相はデフレ=不況、インフレ=好況としてか思っていないように思えます。
インフレ=好況のなであれば、オイルショックの時は空前の好況だったはずです。
ところが実際はそうではありませんでした。当時は狂乱インフレと呼ばれており、インフレ=不況=悪という認識の論調が主流でありました。

原油価格が下がり、円が上がればエネルギーが安くなるだけではなく、国産を含めた多くの消費財が安くなり、消費を刺激するのではないでしょうか。実際問題として、円安誘導で物価が上がった現在、石油が安くなったらか助かっている企業や国民が多いでのはないでしょうか。

結局政府がやっているのは公共事業で土建にバラマき、補正予算でバラマいたりしていますが、これらは国の借金を増やすだけであり、しかも乗数効果が低いので需要の拡大にはさほど寄与しません。
借金が増えている上に、税金やその他の社会保障費、公共機関の値上など個人の負担が増えております。
常識的に考えれば、消費を抑えて将来に備えてもっと貯金をしようというのが普通の日本人の考え方ではないでしょうか。それで経済が拡大するでしょうか。

株式市場にしても公的資金を株式市場につぎ込んで人為的に操作して株価を釣り上げただけです。ところが株主の多くは外国人です。トリクルダウンとやらの多くは外国に流れております。

安倍首相は雇用が増えたと胸をはっておりますが、「この3年間で雇用者数は145万人増えたが、正社員は2万人でしかなく、増えた分の97.9%、142万人が非正規雇用。しかもそのうち90万人が65歳以上の高齢者。
一方、25~44歳の男性正社員は69万人も減っている」(柿沢未途衆議院議員のFBより)
景気が良くなって雇用が増えたなら、もっと消費が活発になっているはずです。

消費を増やすのであれば、一つは女性の社会進出を助ける方策をもっと取ることでしょう。託児所などを増やすのも手でしょう。例えば国や地方自治体の施設に託児所を作る。それだけだと官に対する優遇になるので、その分公務員の給料は減らす。給料が安くても子育てしやすい、そのような環境を作ってはどうでしょうか。福利厚生分公務員の給料は下げてもいい。給料は安いけど、安定し福利厚生が充実しているのが公務員であり、高いインカムを期待する人は民間に行ってください、というのもありでしょう。
更に申せば、市役所などに託児所や保育園を作って、それを民間にも開放するとてもあるでしょう。
また母子家庭や父子家庭のお父さんお母さんを役所で優先的に採用するというのもありでしょう。補助的な仕事をやっている間に、簿記とかネットなどの技術を習得させることありでしょう。

民間の借家では大きな間取りの家やマンションがあまりありません。例えば4LDKとか、100平米を超える物件に関しては税金を安くするとか、誘導策をとってはどうでしょうか。どうせこの先、人口は増えません。ならば広くて快適な住居に住めるようにすべきです。そうすれば、もっと多くの書籍や洋服、フィギアや絵画を買うでしょう。あるいは一部屋をオーディオ・ルームとか、筋トレのジムにする人もでるでしょう。あるいは車庫に3台入るような物件ならばカーマニアはもっと自動車を買うでしょう。
スペースがあればそれだけ物を買えるし、おけるようになります。
政府は3世代住宅を優遇すると行っていますが、これは単に邸宅を増やすだけのように見えます。単位トイレや風呂が複数あればいいみたいな話です。しかも木造建築オンリーです。これは単なるお金持ち優遇でしかありません。
それよりも、広いマンションを増やす、あるいは狭いマンションをぶちぬいて一件の広い物件にリフォームするようなことを奨励すべきでしょう。端的にいえば普通の人が一部屋多い住まいに住まれば、消費の拡大に大きく寄与するでしょう。

たかだか15%の輸出し、そのために内需を絨毯爆撃で傷めつけるよりも、6割の個人消費を増やす政策を優先すべきではないでしょうか。また円高になれば日本企業が外国の会社を買いやすくなり、その外国の企業の配当も期待できるし、世界的な競争の中で日本企業の体力を高めることになるでしょう。

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
防衛補正予算1966億円の買い物リストを検証
ヘリ、装甲車などの装備を買おうとしている
http://toyokeizai.net/articles/-/100679

富士重勝訴でも晴れない防衛調達費の不透明
防衛省の調達システムは問題が多すぎる
http://toyokeizai.net/articles/-/97503
フランスは原発テロの悪夢にうなされている
自爆覚悟のテロは、防ぐのが難しい
http://toyokeizai.net/articles/-/93096
高額な早期警戒機が日本では「欠陥機」だった
周波数帯をまともに使えない大矛盾
http://toyokeizai.net/articles/-/88753

Japan In Depth に以下の記事を寄稿しました
【納税者も驚愕、陸自衛生学校体育館狂騒曲 その1】~「戦争ごっこ」レベルの第一線救護~
http://japan-indepth.jp/?p=24303
【納税者も驚愕、陸自衛生学校体育館狂騒曲 その2】~最前線で隊員の命を救えるか?~
http://japan-indepth.jp/?p=24309
【納税者も驚愕、陸自衛生学校体育館狂騒曲 その3】~浮世離れ?「衛生」総本山で疑惑のコンサート~
http://japan-indepth.jp/?p=24312
【納税者も驚愕、陸自衛生学校体育館狂騒曲 その4】~「謝礼は互助会等から支出】の不思議~
http://japan-indepth.jp/?p=24337
【納税者も驚愕、陸自衛生学校体育館狂騒曲 その5】~「コンサートごっこ」をしている場合ではない~

朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました。
イスラム国がトヨタのランドクルーザーを使う理由
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015110200004.html
陸自が導入した輸送防護車は使えない
机上の空論では済まない邦人救出の現場
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015100200004.html

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