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復旧から程遠い鬼怒川水害被災者たち――緊急対策費600億円にも嘆息

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被災者ではなく「被害者」だと挨拶をする被害者の会の逆井正夫・共同代表。(撮影/まさのあつこ)

2015年9月の関東・東北豪雨水害から約3カ月。茨城県常総市の被災者らは完全復旧からほど遠い状態の下で新年を迎えた。

家屋全壊は53件、大規模半壊1462件、半壊は3524件など、被災者の多くは仮設住宅やみなし仮設、自力によるアパート入居などで年末年始を凌いだ。同市災害対策本部によれば「自宅に帰った人の中には修理が終わらず2階だけで過ごす人もいる」という。さらに、53人が市内4カ所のホテルでの二次避難を続けている。

昨年12月20日、鬼怒川と八間堀川の決壊・越水の被災者ら約200人が地域交流センターに集い、水害被害者集会を開いた。

無堤防地区の若官戸に土地を持つ元養鶏場経営者は「01年から堤防を要望していたのに聞き入れられなかった」と国土交通省の不作為を批判。農機具が全壊した農家は、「市役所は6割補助してくれるというが、総額2000万円以上もする。自宅も全壊し、とても再建できないので農業をやめる。ソーラーパワーの業者はまた事業を再開するという。もう見たくもない」と吐き捨てた。

別の地主は「河川管理者は住民には砂をバケツ1杯、木を1本たりとも伐ってはいけないと言ってきたのに、なぜ堤防代わりだった砂浜を削ってソーラーパネルの設置を許したのか」とちぐはぐな対応に憤った。

また、より下流側で1・8メートルの浸水被害を受けたという自営業者は「機械も水没、在庫も流され、家の解体にも1000万円かかる。どうやって捻出したらいいのか。農業者には補償があるのに、商工業者には融資の支援しかない。生活の糧を奪われたのに来年の固定資産税も払わなければならない。自営業だから国保も払わなければならない」と不安と不公平感を訴えた。

集会で講演した水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之さんは、水害が起きた鬼怒川の下流部は流下能力が大幅に不足していたと指摘。「巨額の河川予算が投じられている湯西川ダム事業を中止し、その予算で鬼怒川下流部の河道整備をすみやかに進めるべきである」と、鬼怒川上流の栃木県民が提訴した湯西川ダム、南摩ダム、八ッ場ダムをめぐる住民訴訟で裁判所に意見書を出した経緯を報告し、水害が起きたのは長年、危険性を放置した行政の責任だと述べた。

【制度改善要望と賠償を】

集会を準備した「常総市水害・被害者の会」(共同代表:逆井正夫さん、堀越辰男さん、古矢邦夫さん)は、(1)住宅応急修理制度の収入制限の撤廃、(2)全壊でも100万円にとどまる支援の最高限度額を500万円に引き上げること、(3)商店や企業の再建支援への補助金の拡充、(4)二重ローンの軽減措置、(5)建築廃材を個人負担ではなく災害ゴミとして処理すること、(6)ペット同行避難を推進するガイドラインを反映しなかった県と市に抗議し、今後は改善を図ることなど、国と県、市に対して11項目のきめ細かな要望をまとめ、参加者に「さらに声を集めて政府交渉を進めたい」と呼びかけた。

その上で、鬼怒川を管理する国交省と八間堀川を決壊させた茨城県には河川管理の瑕疵があるとして、実際に受けた損害と既存制度での補償の差額の弁済を求めていくことを確認した。会場には、高杉徹常総市長や衆議院の塩川鉄也議員・梅村早江子議員も参加した。他にも自民党国会議員からもメッセージが寄せられた。

国交省は昨年12月4日、茨城県と常総市など被災7市町とともに堤防整備など6年間で600億円の「鬼怒川緊急対策プロジェクト」を発表したが、集会では「私たち被害者にはそれで何かいいことはあるのか。若宮戸は土嚢が置かれているだけ。次の雨期までに(築堤を)やっていただかないと同じことが起きる。6年は待てない」と不安を訴えた78歳女性もいた。

通常国会では「被害者」支援の拡充が求められる。また現場には住民の意見を反映した堤防警備が必要だ。

(まさのあつこ・ジャーナリスト、1月8日号)

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