リンク先を見る立東舎文庫 吉本興業女マネージャー奮戦記「そんなアホな! 」 [文庫]
大谷 由里子
リットーミュージック
2016-01-20
大谷由里子さんの『吉本興業女マネージャー奮戦記「そんなアホな! 」』が再度文庫化された。解説を書いた。文庫の解説を書くのはこれで3回目だ。大変、光栄である。
「断る力」なんて言葉が流行ったけれど、私はどちらかというと「断らない力」で仕事をしてきた。最近は充電モードだし、断る機会もぼちぼち増えたのだが、この本の解説を書くことは実にエキサイティングだった。
タイトルがすべてを物語っているが、1980年代半ば、ちょうど男女雇用機会均等法が制定され、施行されようとしている頃に吉本興行に入社した、当時珍しかった女性マネジャー「まっちゃん」こと松岡由里子(のちの大谷由里子)の物語である。読んでいると、本当に「そんなアホな!」と叫びたくなる日々である。
今回、掲載された解説はどちらかというと、新入社員の奮闘記、女性の活躍という趣旨で書いた。さらに付け加えるならば、この本の面白さは「才能があるけど、面倒くさい人との付き合い方」という点にもあると思う。
ずばり、「横山やすし」的な人との付き合い方ということだ。才能があって、破天荒で、時に問題も起こし、でも寂しがり屋で、人間くさい。まさに「タレント」との付き合い方を描いた本である。
世の中には才能があるけど面倒くさい人という人たちがいる。一応、10年くらい物書き業界にいるが、たくさんのそんな人たちを見てきた(私はこれでも面倒くさくない方だ)。彼らはたしかに才能があるが、不安で、孤独で、そうであるがゆえに奇妙な行動を起こすことがある。バランスが悪い人だっている。「才能がある」とさらりと書いたが、その原石のような存在であるわけで、どうやったら光るかは分からない。
そんな人たちの懐に入り、気持ちを掴み、たとえ先輩であっても時には厳しいことを言いつつ、一緒に成功を目指して歩む。そんな姿が描かれている。
まあ、なんせ、吉本の芸人さんの裏話を読むことができるという点でたまらないのだけど。
1980年代に話題になった、泥酔したまま番組収録に臨んだ横山やすしさんを、収録中に舞台裏で殴った話の真相も書かれている。スポーツ新聞などにデカデカと掲載された、あのエピソードだ(って、若い人は知らないだろうな)。これもまた「マジ」だからできることなんだろう。
ちょうど、国民的中年グループの解散騒動で芸能事務所やマネジャーの件が話題になる今日このごろだが、「孤独でワガママな才能」と向き合う舞台裏が覗ける本とも言える。
より広げて言うならば、部下をマネジメントする、面倒くさい人と付き合うという点でのヒントに満ちた本とも言えるかもしれない。新人編集者にもぴったりだな。
リンク先を見るぼくらの仮説が世界をつくる [単行本(ソフトカバー)]
佐渡島 庸平
ダイヤモンド社
2015-12-11
才能に光を当てるという意味では、佐渡島さんのこの本も通じるものがあったな。この本は大変に参考になる本だったが、詳しいご紹介はまた別途。
画像を見る
面白い本との出会いに感謝!
リンク先を見る僕たちはガンダムのジムである (日経ビジネス人文庫) [文庫]
常見 陽平
日本経済新聞出版社
2015-12-02
文庫コーナーに行ったら、私の本もぜひ。
記事
- 2016年01月20日 08:09