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大阪市のヘイトスピーチ(差別扇動行為)規制条例案が可決 極右思想は力だけで抑えられるものではない

 大阪市議会では、2016年1月15日、自民党以外の賛成多数で、「ヘイトスピーチ(差別扇動行為)規制条例案」が可決されました。

 大阪では、地域柄なのかヘイトスピーチがかなり派手に行われ、中学生の女の子が在日韓国・朝鮮の人たちに対し、殺してやりたいと絶叫していた姿に衝撃を受けたものです。
橋下氏(当時、市長)と在特会のメンバーとのやり取りが注目を浴びていましたが、これ自体は橋下氏のパフォーマンスです。

 ヘイトスピーチの定義については、「特定の人種や民族の(1)社会排除(2)権利の制限(3)憎悪や差別意識をあおること--のいずれかを目的とし、人を中傷したり身の危険を感じさせたりする表現活動をヘイトスピーチ」(毎日新聞2016年1月16日)とされています。

 中学生の女の子の発言もそうですが、聞いている方が非常に不快になるもので、名指しされた方たちが持つ感情は、その比ではなく、恐怖心でいっぱいになります。
 このようなヘイトスピーチに対しては、これを規制し、罰則を与えよという主張があり、諸外国では取り入れているところもあります。

 しかし、日本政府は表現の自由という憲法上の権利から、特定個人の人格を否定するようなものでない限り、これを表現の内容に着目して規制してしまうことには慎重でした。
 私も考え方は、同じです。

国連人種差別撤廃委員会によるヘイトスピーチ禁止の勧告 禁止は諸刃 河野談話批判もヘイトスピーチ扱い

 大阪市の条例は罰則はなく、審査会が審査し、ヘイトスピーチに当たるということになれば、その団体や個人の名を公表するというものです。罰則がないことについてはとても重要です。
 表現の自由の内容に罰則がつくということになると、警察などの捜査機関の濫用が懸念されるからです。

 捜査機関がその場で「現行犯逮捕」を実施するということは、現場での警察官の判断によるものということになり、それが純粋なヘイトスピーチのみに限定される保証はどこにもありません。
 このような法律は、結局、いずれは体制に都合の悪い言動に対して発動されていくものであり、やはり表現の自由の価値は大きいのです。
 大阪市条例は、その制約の程度からすれば、許容される範囲ということになろうかと思います。

 とはいえ、やはりこの問題は単にヘイトスピーチを規制すれば良いというものでありません。
 昨今、ドイツでは「我が闘争」の出版が「解禁」となりました。それまでは「発禁」だったのです。しかし、「解禁」された途端に売り切れ続出というのですから、これではまさに「発禁」効果です。
 ドイツ国民の誰もが納得して「発禁」となったのではなく、とにかく外交上の問題から「発禁」にしたにすぎず、これでは表現の自由の意義は全く失われてしまいます。力でナチズムを抑えてきたにすぎません。
 あるべき姿は、我が闘争といえども発禁処分にはせず、その内容の問題点を共有することでした。

 ヘイトスピーチでも、あのような言動をする子どもたちが何故、出現したのか、私たちは、その原因分析を怠ってはいけないし、そこから目をそらすことも許されません。
 子どもたちに限らずヘイトスピーチが生み出される社会にも目を向けるべきです。
 フランスで極右勢力があれだけ勢力を拡大したのも一定の支持層が生まれているからです。あの極右政党の存在だけが問題ではなく、それを力で抑えるということはいつかそれが爆発しかねないものであるということを自覚する必要があります。

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