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被害側企業の名前を見出しに使う意味はあったのか?

 愛知県の産業廃棄物処理業者が、異物混入の疑いがあるとして廃棄を依頼された大量の冷凍ビーフカツを廃棄せず、食品業者に横流しし、スーパー等で販売されるという問題があった。(*1)

 被害にあったCoCo壱番屋(以下ココイチ)は、傷んでいる可能性があることから、食べないように呼びかけている。(*2)

 さて、事件を明確に整理すると。

 廃棄を依頼して引き渡したはずの冷凍ビーフカツを転売された被害者は、カレーチェーン店のCoCo壱番屋(以下、ココイチ)を展開する「壱番屋」だ。

 問題のビーフカツをココイチで働くパート従業員が発見。壱番屋に報告したことからこの問題が発覚した。

 報じられている内容を見るに、冷凍ビーフカツは店舗に配送するための袋に入れられた状態で売られていたようだ。この袋にココイチの名前は入っていないという。

 加害者は、ココイチから廃棄を依頼されたにも関わらず、ビーフカツを廃棄した産廃業者「ダイコー」。そして、これを買い取って卸した、めん類製造業者「みのりフーズ」であることは言うまでもない。

 さらにみのりフーズから買い取ったスーパー側どちらかと言えば加害者寄りであると考えている。食品業者から食品を買っただけだから、スーパーも騙された被害者であると考えがちだが、冷凍ビーフカツは壱番屋が製造し、店舗に配送する食材であったことから、消費者に販売する際に必要な、食品表示法等で求められる表示がされていないと考えられ、食品販売に必要な知識があれば、この商品がまっとうなルートを通ってきた商品ではないことは明らかであったはずである。スーパーはそんな明らかに怪しい商品を消費者に売っていた。だから加害者側であると考えている。

 ただし、ダイコーや、みのりフーズ側で、食品表示のシールなどを偽造していたとしたら、スーパーも被害者側であると訂正させてもらう。

 で、僕が驚いたのは、この事件が報じられる中で「ココイチが加害者側である」と勘違いしていた人がいたことだ。記事を読めばココイチが被害者側であるのは明らかなのだが、見出しだけをみて勘違いした人もいたようだ。

 では、この事件を各新聞社は、どのような見出しで報じていたのだろうか。ネット上の見出しを確認してみよう。

 読売新聞「ココイチ廃棄依頼のカツ、業者転売でスーパーに」(*3)
 朝日新聞「廃棄カツ、スーパーで販売 ココイチ製、産廃業者横流し」(*4)
 毎日新聞「ビーフカツ:廃棄依頼受けた産廃業者…スーパーに転売」(*1)
 産経新聞「廃棄ビーフカツが流通 壱番屋、不正転売と説明」(*5)
 日本経済新聞「廃棄カツ5000枚流通 壱番屋「業者が横流し」」(*6)


 さて、どうだろうか?
 各社とも決して間違えたことを書いているわけではない。しかし何かひっかかる。

 これらの単純にパッと見た時に「ココイチがなにかやらかしたのか?」という印象がある。「ココイチ」や「壱番屋」という、ココイチの名前が目立つからだ。だからさもココイチが問題を起こしたような印象がある。

 中でも産経新聞と日本経済新聞については、なぜか被害者側であるはずの壱番屋が問題を引き起こしたことに対して釈明をしているように読めてしまう。

 いずれにせよ思うのは、この問題を報じる見出しに「ココイチ」や「壱番屋」の名前を出すのが適切であったかということである。

 もちろん私達がよく知るココイチが巻き込まれた事件であったからこそ、これだけ大問題として注目されている側面はあるのだが、一方でよく知るがために今回のようなネガティブな話題で名前が報じられることはココイチのリスクとなりかねない。そのことに配慮すれば、ココイチの名前を見出しに出すべきではなかったのではないか。

 実際、毎日新聞は見出しにココイチの名前を出していない。ココイチの名前を出さなくとも、この事件を報じることは可能である。

 もちろん、どの新聞社の見出しであってもニュースの本文さえ読めば、ココイチが被害者であることは明確である。しかし、新聞本紙のように見出しがあれば必ず本文が見られる状態ならいいが、ネットでは見出しだけが流通して本文を読むことができない状態がありうる。

 ニュース系のサイトに見出しだけが並び、リンクをクリックせずとも情報を得た気になったり、新聞社自身が月額制で見出しと記事の冒頭のみが掲載され本文が読めないような状況では、こうした見出しが誤解を生む可能性は高くなる。

 新聞社としてはページビューを伸ばしたいのだろう、誰もが知っているココイチの名前を出せば、注目をあつめると考えたに違いない。しかし、そのことによってココイチが風評被害を受けかねない可能性に考えが及ばなかったのだろうか?

 今回の問題の報じられ方で、新聞社が決して見出しに配慮しているとは言えないという状況が明らかとなった。見出しの役割が大きくなるネット時代において、見出しが誤解を生む可能性に対して配慮する必要性は、より大きくなっていると言えるだろう。

*1:ビーフカツ:廃棄依頼受けた産廃業者…スーパーに転売(毎日新聞)
*2:産業廃棄物処理業者による、当社製品(ビーフカツ)不正転売のお知らせ(壱番屋)
*3:ココイチ廃棄依頼のカツ、業者転売でスーパーに(読売新聞)
*4:廃棄カツ、スーパーで販売 ココイチ製、産廃業者横流し(朝日新聞)
*5:廃棄ビーフカツが流通 壱番屋、不正転売と説明(産経新聞)
*6:廃棄カツ5000枚流通 壱番屋「業者が横流し」(日本経済新聞)

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