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「規律と努力」7連覇を支えた帝京大チーム文化の神髄とは - スポーツ・インテリジェンス【第44回】 - 松瀬 学

入れ替わる選手と7連覇

1996年からチームを率い、20年目を迎えた。その節目の年にラグビー界の金字塔ともいえる『7連覇』を達成した。7年連続の大学日本一。学生の手による胴上げで7度、宙を舞った帝京大学ラグビー部の岩出雅之監督は言葉に万感の思いを込めた。

「ホッとしています。久々に厳しい決勝戦でした。重みのあるゲームを体感できて、勝利できたことをとてもうれしく思います」

57歳。もはや名監督のひとりである。勝負師であり、教育者でもある。目はコワく、でも優しい。その鋭い視線はすべてを見つめているようなのだ。学生のプレーを。人間としての成長を。学生の将来を。

社会人の新日鉄釜石(78~84年度)、神戸製鋼(88~94年度)と並ぶ7連覇とはいえ、学生は意味合いがちがう。毎年、メンバーが入れ替わる学生にあって、連覇は至難の業なのだ。若者を育てながら勝たないといけない。

「結果としての連覇はうれしいですけど、釜石や神戸製鋼とは違います。学生は夢を持つことがエネルギーとなります。4年間、あるいは1年間を、学生が高い目標を持って、きちっと努力していくことが大事なんです。そうやって社会で生きる力を身に付けてもらいたいのです」

そうなのだ。長い目で見た場合、優勝することが山のてっぺんではない。学生の人生を考えたら、卒業後の人生の方が長くなる。未来につながるものを積み上げていく機会として、ラグビーがあり、出会いがあり、日々の鍛錬があるのだろう。

連勝途切れても動ぜず

過日の全国大学選手権の決勝戦。主将のフッカー坂手淳史は左ひじ負傷でリザーブに回り、エースのフルバックの森谷圭介も直前の練習中のケガにより欠場することになった。そんな不測の事態があっても、岩出監督の自信は少しも揺るがなかった。

前半は苦戦した。が、岩出監督は学生たちに「もっとゲームを素直に楽しんでこいよ」と声をかけただけだった。

力みがとれた帝京大は強かった。全員で前に出て、右に左にテンポよくボールを動かし、トライを加えた。底力の差を見せつけ、27-17で東海大を降した。

そういえば、今季、関東大学・対抗戦グループでは筑波大に苦杯を喫し、対学生の公式戦連勝が『50』でストップした。大丈夫か、と思いきや、岩出監督は少しも慌てなかった。筑波大に負けたショックは? と聞けば、「全然」と笑った。

「(筑波大に)敗戦したからといって、チームに対しての信頼と自信は変わらないと、すぐに学生たちに言いました」

ひと呼吸おいて、こう続けた。

「だって、そこは怒らんところでしょ。怒ったら、アカンところでしょう」

それだけ、チーム作りに自信があるということである。指導の要諦は「本気・根気・元気」と漏らしたことがある。グラウンドでは、きめ細かく、丁寧に指導する。とくに基本プレーに関しては、繰り返し、からだにしみ込ませる。グラウンド外でも、ウエイトトレーニングや食事、そうじ、学校の授業など、私生活もちゃんとするよう指導する。

私生活の規律も「チーム文化」

帝京大ラグビー部のクラブハウスを覗くと、その玄関の綺麗さと学生の礼儀のよさに驚く。クツはきれいに並び、泥も落ちていない。だれもが気持ちいい挨拶をしてくれる。

それがラグビーの勝負に関係あるのだろうか。そういぶかしがる人もいるかもしれないけれど、これは断言できる。ある。絶対に。

帝京大の7連覇は、私生活の規律と、努力の継続というチームの文化があればこそである。いかに潤沢な環境や学校の支援、学生の才能があっても、岩出監督の指導力とチーム文化がなければ水泡に帰す。

連覇の苦労は?

「守りに入ったら苦しい。居心地の良さとか、チャレンジする気持ちがなくなったらしんどいですよ。エアコンで(部屋の中が)あったかい空気になったら、そこを守りたくなるでしょ。でも改善しないと。挑戦心を持たないと、イノベーションは起こせません」

では、今季、プラスしたものは?

「質ですよ、質。4年生の活動の質とか、上級生の質をもっと上げようと思って努力してきました。コミュニケーションもです。グラウンドの中も外も、4年生ががんばってくれると、全体的に質が上がってきます。みんなのがんばりも違ってきますよ」

チームのスローガンはずっと変わらず、「エンジョイとチームワーク」である。約150人の部員の笑顔は、そのスローガンの実践ゆえだろう。別れ際、「7連覇の喜びは?」ともう一度、聞いた。

岩出監督はこちらの肩を軽くたたき、顔をくしゃくしゃにしたのだった。

「うれしくないわけがないじゃないですか」

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