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- 2016年01月14日 22:22
特集:地政学的リスクと2016年の日本経済
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いくら「申酉騒ぐ」とはいえ、申年の2016年は年頭から驚かされっぱなしです。①サウジアラビアとイランの断交、②北朝鮮の核実験(水爆?)、③上海総合株価の乱高下、などです。加えて「米国の12月非農業部門雇用者増減数は+21.9万人の強さ」「NY原油先物価格が12年ぶりに30ドル割れ」などと意表を突くデータも相次いでいます。
お蔭で日本は、年初から円高、株安が進んでいます。その一方で、地球上で日本くらい地政学的リスクから遠いところにいる国もない。原油安も追い風ですし、2016年は日本経済にとっては案外悪くない1年という気もする。思うに申年の地政学的リスクとは、大騒ぎはするけれども実害はそれほどない、一種の「から騒ぎ」なのではないでしょうか。
ただし北朝鮮についてはまったくスルーしている。実はユーラシアグループは、北朝鮮の脅威を「見切って」いるように見える。2011年と12年には連続して北朝鮮を第5位に選んでいるものの、その後はまったく無視しており、2013年、14年にはRed Herrings(リスクもどき)のひとつに数え上げているからだ。
お蔭で日本は、年初から円高、株安が進んでいます。その一方で、地球上で日本くらい地政学的リスクから遠いところにいる国もない。原油安も追い風ですし、2016年は日本経済にとっては案外悪くない1年という気もする。思うに申年の地政学的リスクとは、大騒ぎはするけれども実害はそれほどない、一種の「から騒ぎ」なのではないでしょうか。
●お馴染み『Top 10 Risks』が想定する2016年
まずは毎年恒例のユーラシアグループ、「2016年のTop10リスク」を確認しておこう1。次ページにある通り、今年は年初早々から3位(中国の波紋)と5位(サウジアラビア)が的中した形だ。後者については、今週号のThe Economist誌もカバーストーリーで取り上げていて、「今年のサウジは要注意」ということは一種のコンセンサスであるようだ。ただし北朝鮮についてはまったくスルーしている。実はユーラシアグループは、北朝鮮の脅威を「見切って」いるように見える。2011年と12年には連続して北朝鮮を第5位に選んでいるものの、その後はまったく無視しており、2013年、14年にはRed Herrings(リスクもどき)のひとつに数え上げているからだ。
○2016年のTop 10 Risks
(1)同盟の空洞化 (The Hollow Alliance)
過去70年間にわたって最重要だった大西洋同盟は弱体化した。ロシアのウクライナ侵攻やシリアでの紛争により、米欧間の亀裂が深まった(AIIBへの欧州諸国の参加も?)。そうなると国際的な救助隊は存在しなくなる。これでは中東の大荒れは必至。(2)閉ざされる欧州 (Closed Europe)
2016年の欧州は開放と閉鎖の両方向に引き裂かれ、格差と難民とテロと政治圧力が欧州の理念に立ち塞がる。英国のEU離脱リスクを過小評価するなかれ。経済は統合されたままでも、その他の分野はそうでなくなるだろう。(3)中国の波紋 (The China Footprint)
たとえ穏やかなものであっても、中国の発展は世界中に波紋を投げかける。中国は世界で唯一、グローバルな戦略を持つ国。最重要な国が最も不安定である、という認識は、心の準備がない他の国々を苛立たせる。(4)ISISと仲間たち (ISIS and "Friends")
世界最強のテロ集団ISISは、不適切な対応も相まってナイジェリアからフィリピンまで賛同者を広げている。彼らが狙いやすいのは仏、露、トルコ、サウジ、そして米国。そしてスンニ派を取り込めていないイラクなどもご用心。(5)サウジアラビア (Saudi Arabia)
サウジ王国は今年、王室内の不一致で不安定さを増し、中東での攻撃姿勢を強めるだろう。先代のサルマン王時代には考えられなかった内紛の脅威が高まっている。サウジの心配は間もなく制裁が解除されるイランだ。(6)テクノロジストの台頭 (The Rise of Technologists)
シリコンバレー企業からハッカー、引退した篤志家まで、野心的なテクノロジストたちの台頭が、政策や市場の不安定さを増している。(7)予測不可能な政治家たち (Unpredictable Leaders)
ロシアのプーチン、トルコのエルドガン、サウジのサルマン副皇太子、ウクライナのポロシェンコなど、変な指導者が国際政治を掻き回す。1人なら邪魔者だが、4人では不安定性だ。(8)ブラジル (Brazil)
ジルマ・ルセフ大統領が生き残りを目指す間に、国家の危機は深まる。ルセフが弾劾を生き残れば経済改革への推進力は失われ、居なくなればテメル副大統領には荷が重い。(9)選挙が足りない (Not Enough Elections)
2014年、15年は新興市場での選挙が相次いだ。ところが16年は機会が.なく、国民の不満を深める。新興国は過去10年の収入増加により、国民の要求水準が高まっている。(10)トルコ (Turkey)
エルドガン大統領は、現行の議会制を大統領制に替えようと図る。しかしビジネスや投資環境は悪化。クルド勢力制圧やISIS掃討の見込みは薄く、逆にテロ攻撃の危険が高まる。*リスクもどき (Red Herrings)
――米国有権者は、イスラム教徒に国を閉ざすような大統領を選出しない。中国経済はハードランディングせず、政治の安定も続く。日本の安倍首相、インドのモディ首相、中国の習国家主席は強い指導力を維持し、アジアのリスクを軽減する。- 吉崎達彦(かんべえ)
- 双日総合研究所取締役副所長・同主任エコノミスト。



