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「改憲ありきで数を集めようという首相の姿勢は、危うい」(朝日社説)に反論する~;現行憲法を守っている「護憲」行為の何が悪いのか!

 13日付け朝日新聞社説は一読の価値があります。
(社説)首相と憲法 何のための改正なのか
http://www.asahi.com/articles/DA3S12155777.html?ref=editorial_backnumber
 社説は冒頭で、安倍首相が憲法改正案の国会発議に必要な3分の2の議席を確保する狙いを明確にしたことから触れています。

 自民、公明だけでなく、憲法改正に前向きなおおさか維新などとともに、「3分の2」を構成していきたい――。

 夏の参院選に向け、安倍首相が先日のNHKの番組でこんな考えを明らかにした。改憲をめざす勢力を幅広く結集することで、憲法改正案の国会発議に必要な3分の2の議席を確保する狙いを明確にしたものだ。

ログイン前の続き 憲法改正は安倍氏の悲願である。与党が衆院で3分の2を超える議席を持ついま、参院でも3分の2の賛成を得られる見通しがつけば、実現に向け前進する。そのためには次の参院選が大きなチャンスだと首相は見ているのだろう。これで改憲の是非が参院選の大きな争点になるのは間違いない。
 しかし安倍首相は「どこを変えるのかは、はっきりさせていない」と批判いたします。

 では、憲法のどこを改正しようというのだろうか。

 自民党内では、大災害などに備えるための「緊急事態条項」の新設が検討されており、首相も「大切な課題だ」と、その必要性にたびたび触れている。ただ、首相は先の番組では「どの条項かということについては、これから議論が深まっていくんだろう」と述べるにとどめ、どこを変えるのかは、はっきりさせていない。

 これは、憲法改正に向けた正しい筋道とは言い難い。
 賛同者を集める点に重きを置いているのは、「憲法論議のありようとして、まっとうではない」と批判を続けます。

 社会的、国際的環境の変化に応じて改正が必要だというのなら、まずはその根拠と改正内容を具体的に示す。そのうえで多数の国会議員や国民が納得できるまで議論を深めていく。そんなプロセスは欠かせない。

 しかし、首相はとにかく「憲法を変える」という目標を掲げて賛同者を集める点に重きを置いている。憲法論議のありようとして、まっとうではない。

 首相発言に対し、公明党の山口代表は「国会の数合わせだけではすまない問題だ」と述べた。当然の指摘である。

 緊急事態条項を議論するにしても、災害対策基本法などに緊急事態の規定はすでにある。憲法に新たに書き込む必要性がどれだけあるのかは疑問だ。
 社説は「改憲ありきで数を集めようという首相の姿勢は、危うい」と結ばれています。

 むしろ、これを突破口に次は9条改正などに進んでいこうというのが自民党の戦略だ。その狙いがある限り、緊急事態条項の是非だけを素直に論じることは難しい。

 安倍政権は、閣議決定による憲法解釈の変更によって9条を変質させてしまった。53条に基づく野党からの臨時国会召集の要求も無視した。憲法軽視は目にあまる。

 改憲ありきで数を集めようという首相の姿勢は、危ういと言わざるを得ない。
 ・・・

 さてこの朝日社説に見られるように護憲派リベラルの論説には、ひとつ致命的な論理の欠落があります。

 それは安倍首相は現憲法を忠実に遵守して手続きをしっかり踏んで、現憲法改正を目指しているという、当たり前の事実です。

 憲法96条を確認しておきましょう。
第九十六条

 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

 現憲法は、「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議」し、「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要」と、憲法改正には、最終的には投票による国民の承認が必要であることを明確にうたっています。

 憲法改正を目指す政治家ならば、憲法改正案の国会発議に必要な3分の2の議席を確保することを第一の目的とすることは当然であります。

 朝日社説はその行為自体を「改憲ありきで数を集めようという首相の姿勢は、危うい」と一方的に批判していますが、現憲法を遵守して手続きを踏もうとしている行為を一方的に批判することは逆に憲法九十六条を軽視している意味で、違憲的言論といわざるを得ません。

 朝日社説は、憲法96条が「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要」と、憲法改正には、最終的には投票による国民の承認が必要であることと明示していることを意図的にか、触れようとしません。

 朝日社説は「これを突破口に次は9条改正などに進んでいこうというのが自民党の戦略」と穿っていますが、それはそのとおりでしょう。

 ですが、一歩譲って安倍首相の憲法改正案が国民にとって不利益なものだったと仮定しても、最終的には国民の審判が担保されているのです。

 ・・・

 現憲法は、1946年(昭和21年)5月16日の第90回帝国議会の審議を経て若干の修正を受けた後、11月3日に日本国憲法として公布され、その6か月後に施行されました。

 以来69年の長きにわたり、一言も修正されることなく、まさに「不磨の大典」としてそれを改正するという議論そのものが、護憲派リベラルによってタブー視されてきました。

 しかし、ならば憲法96条はなぜ存在するのでしょうか。

 『悪法も法なり』という法諺(ほうげん。法律がらみの格言・ことわざ)があります。

 ラテン語で "Dura lex, sed lex"("The law is harsh, but it is the law":「法は過酷であるが、それも法である」)と言います。

 一般にはソクラテスが言ったとされていますが、ソクラテスの言行を記録したとされる文献である『クリトン』に、似た内容の話の記述があります。

 現行憲法が「悪法」かどうかはさておき、この法諺の意味するころを当ブログなりに整理しますと、次のように集約できます。

 一点は法治国家としては現在実効されている法の遵守が第一なのだという当たり前のルールです。

 法治国家においては、たとえ問題があっても現在有効な法律には従わなくてはならないのです。

 悪法といえども法なのだから、勝手に破られては法の整合性、安定性が保てないからです。

 従って憲法99条が規定している「天皇又(また)は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」ことは、当然のことです。

 もう一点は人の作る「法」の限界性であります、人の作る法は必ずしも「正義」を体現できているわけではない、ときに「悪法」も存在しうるという事実です。

 人の作った法について、その絶対正義を盲目的に過信することなく、たえず謙虚にその内容が社会正義と矛盾することがないかを、チェックし続けることです。

 もし改正の必要が見出されたならば、その場合もあくまで現行法を遵守しつつですが、正規の手続きを踏み、より良い法に改正すべき将来の手続きを踏めば良いということです。

 憲法96条で憲法改正手続きが明文化している意味はまさに、現行憲法においても将来の改正を自ら担保しているものです、国会において憲法改正の議論や手続きを行う行為はまさに現行憲法を守っている、「護憲」行為なのであります。

 朝日社説の「改憲ありきで数を集めようという首相の姿勢は、危うい」との論法は、最後に国民の審判を仰ぐ現憲法の96条の要(かなめ)のルールを無視しています。

 小学生でもわかる詭弁です。

 そのような論がまかり通るなら、現行憲法は未来永劫一言一句改正不可能となります。

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