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IS対アルカイダ 両者の合流はあり得るのか - 岡崎研究所

フィナンシャルタイムズ紙のカラフ中東担当編集員が、12月2日付同紙にて、ISISとアルカイダがともにテロを通じて影響力を熾烈に争っている様子を描写し、その危険性を示しています。

ISIS戦術変化でアルカイダと足並み揃う?

 すなわち、ISISの機関紙Dabiqは、読んでいて戦慄を覚えるが、ISISの歪んだ思考を理解する類例のない手がかりを与えてくれる。最新号(12号)には、アルカイダに焦点を当てた記事が載っている。同記事は、サーワ運動が、アルカイダの構成員に広まっていると言っている。サーワ運動は、10年前、アルカイダのイラク支部を打倒するために米国と協力したイラクの部族のグループで構成されていた。アルカイダのイラク支部は、最終的にはISISとなった。

 ISISは、「今のアルカイダは道に迷い、未来はISISのものである」として、世界一のテロ組織、オサマ・ビンラディンの真の後継者であると主張している。

 2013年にシリアでのジハードの目標をめぐり袂を分かって以来、ISISはアルカイダに執着しているように見える。ISISは、その残虐さと、イラク・シリアにカリフ国を作る動きにより、自らを母体アルカイダと区別してきた。アルカイダは海外で活動する殺人マシーンだが、ISISは当初は世界中のジハーディストにカリフ国建設への参加を呼びかけた。ISISは他の地域より中東に脅威を与えると見えたので、西側の反応は初めは弱かった。

 過去数カ月、ISISは戦術を変えた。軍事的圧力の強化に直面し、勢いを維持するため、海外での攻撃を加速させている。数週間のうちに、シナイ半島上空でのロシア機の撃墜、パリでの残虐行為、ベイルートでの爆弾攻撃、チュニスでのバス爆破への犯行声明を出した。ISISとアルカイダの目標は今や揃っている。その影響は恐ろしい。

 ISISによるパリ攻撃の数日後、アルカイダは、マリの首都バマコで高級ホテルを襲撃した。アルカイダは、ISISとは異なり同ホテル襲撃でムスリムの人質に害を加えなかったことを示し、ジハーディストたちにアピールした。
アルカイダは、その中核グループが大幅に縮小した一方で、分派はグローバルな対テロ戦争を生き延びている。

両グループ合流の可能性

 Hassan Hassan(Isis: Inside the Army of Terrorの共著者)は、ISISとアルカイダは競争し成長している、と言っている。

 あるテロの専門家によれば、アルカイダの分派は、アフガン、パキスタン、東南アジアだけでなく、マグレブ、サヘル、ホーン岬、イエメンにおいていまだに強力である。他方、ISISはレバント、リビア、西アフリカ、コーカサスでより優勢である。

 ISISとアルカイダはイデオロギーをめぐっては争っていない。相違点は、戦略と戦術、そして大部分がリーダーシップについてである。専門家はバグダディかザワヒリのいずれかが消えれば両グループは再び合体し得る、と予測する。

 今日のテロ情勢は第一に、あらゆる異なったプレイヤーが関与しており、第二に、アラブの春により生じた地域的真空がグループに活動領域を与えている、と元FBI特殊エージェントのAli Soufanは指摘する。

 テロ情勢はますます複雑化し得る。自称国家を防衛するため、ISISはますます危険なものになろう。他方、アルカイダは、地域的な同盟者を作り、破壊するのがより困難になろう。双方とも、テロを通じて力を拡大することを狙うであろう、と分析しています。

出典:Roula Khalaf,‘The deadly contest between Isis and al-Qaeda’(Financial Times, December 2, 2015)
http://www.ft.com/intl/cms/s/2/297def12-9819-11e5-95c7-d47aa298f769.html#axzz3tMQosZoj

*   *   *

両組織念頭に置いた対策を

 ISISはイラクのアルカイダを母体として成長した組織です。したがってアルカイダと似た思想を持っています。しかし、目的が今は異なっています。
ISISはカリフ制国家を樹立し、それを強靭なものにしようとしています。他方、アルカイダはカリフ制国家建設の問題はさておいて、イスラム世界への西側の「侵略」を排撃することが最重要課題であり、それができれば、中東の腐敗した現政権は崩壊するという、いわば国際主義的な考え方をしています。この違いをイデオロギーの違いとみるか、戦術の違いとみるかは、どちらも可能です。一国社会主義のスターリンと世界革命推進を主張したトロツキーの違いをどう考えるのか、というのとよく似た問題と言えます。

 論説は、ISISのアルバグダディかアルカイダのザワヒリがいなくなれば、両者は合同しうるという見方を紹介していますが、「バクダディは残虐過ぎる」とのザワヒリによる批判、それに対する「私はザワヒリに従うより神に従う」とのバグダディの反論はそれぞれの組織に浸透しており、両組織の考え方の相違に鑑み、そう簡単に合併しないと思います。

 テロ対策の立案という点では、ISISもアルカイダも念頭に置いておく必要があり、二つの組織への対応は対策立案を複雑にすることは否めません。その上、ISISは海外活動にはそれほど力を入れていませんでしたが、軍事的圧力への反応として米欧諸国およびロシアを攻撃することに今後力を入れてくるでしょう。ISISにもアルカイダとその分派にも気を付ける必要があります。
なお、サミットやオリンピックを控え、日本国内のモスクでの過激な説教を探知する方策を考える必要があります。

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