- 2016年01月08日 16:09
フジテレビはもう、視聴率なんか諦めればいいのに
1/21月2日にNHKで「新春TV放談2016」が放送された。2009年以来、この時期に毎年放送されているもので、NHKなのに主に民放の番組についてあけすけに意見を言いあい、ほんとうに”放談”なのが面白い。毎年楽しみに見ている。
そしてここ数年、毎回フジテレビが話題にのぼる。ドラマやバラエティの視聴率ランキングを紹介するのだが、いい順位に入ってこないのだ。今回は人気ドラマのトップ20に一本も入っておらず衝撃だった。フジテレビには頑張ってほしいなあ。いつもみんながそう言う。フジテレビが頑張ってくれないとテレビ全体が元気なくなっちゃうんだ。そんな話になる。確か前々回「テレビ朝日のえらい人もそう言っていた」という話も出た。
それくらいフジテレビのことをみんなが気にしているのは面白い。そう、ある年代以上にとっては、テレビとはフジテレビのことだった。80年代以降、フジテレビが先頭を走っていて、他の局がそれに追いつこうと躍起になるのがテレビ界だったのだ。そうやってフジテレビも、他の局も面白い番組を作っていった。90年代は視聴率では日本テレビのほうが上で94年から02年まで三冠王を奪われていた。にも関わらず、イメージ的にはフジテレビが先頭を行っていた。
そして2003年からはまたフジテレビが三冠王となった。2011年に日本テレビが再び三冠王を奪ったのだが、それ以降、急激にフジテレビは調子を落とした。みんなが言っているのはそのことだ。もう一度、頑張ってよ。また先頭を走ってよ。他局のお偉方までそう思ってるなんて、不思議な現象だと思う。
ところでドラマの視聴率ランキングに一本も入らなかったフジテレビだが、例えば『無痛』は個人的には昨年の連ドラの中で断然良かった。テレビドラマって、まだ新しい面白さが切り開けるんだなあ。見ながらそんなことを思った。もちろん『下町ロケット』も毎週見てほんとうに楽しかったが、どちらが新鮮かといえば間違いなく『無痛』だと私には感じられた。去年は『デート』も新しいと思った。
ここ数年、視聴率がダダ下がる中でも、フジテレビのドラマは面白いものが次々に出てきた。『最後から二番目の恋』『リーガルハイ』『間違われちゃった男』『鍵のかかった部屋』『それでも、生きてゆく』・・・それぞれ面白かったし、新鮮だった。クオリティの高さと新しさを感じた。
中でも『最高の離婚』は本当に最高だと思った。日本のドラマの一種の到達点だと評価している。シナリオも演出も演技もある高みに登り詰めていて、その力が理想的に合算されていると感じた。
80年代後半にトレンディドラマと呼ばれていた頃は正直、フジのドラマを馬鹿にしていた。若かったのでメジャーなものを斜めに見ていたせいもあるが、そんなにクオリティが高いものではなかったと思う。そこからものすごく成長したのではないか。視聴率が良かった頃よりいまのドラマのほうがずっとずーっと、質が高いと私には思える。
だがいま挙げたドラマは視聴率的にそう高かったわけではない。『無痛』に至っては初回以降10%を超えなかった。『下町ロケット』の快進撃の陰で、ひっそり放送されこっそり終わった感じだ。それでも、去年いちばん良かったドラマは私にとっては『無痛』だ。
『無痛』は、だがしかし視聴率は取れない。地味だから仕方ないのもあるがいまのテレビを取り巻く環境から言って、受け止め方が難しいこんなドラマは視聴率を取れやしないのだ。不思議なのは、視聴率的にしんどいのにどうしてこんなに数字が取れそうにないドラマをやるのかということだ。でもそこがフジテレビなのだと思う。視聴率なんかとろうとせずに、私がいいと思うドラマを制作してほしい。
ここ数年で、テレビ放送の結論が出た、と私は考えている。それは要するに、テレビ放送の到達点は、日本テレビなのだ、ということだ。これまでのフジテレビは、「テレビとは日テレなり」の結論にたどり着くための壮大な回り道だったのだ。
例えば日曜夜9時、とくに見たい番組もないなあと、久しぶりに『行列ができる法律相談所』を見てみると、超絶的な面白さだったりする。ゲラゲラ笑いながら、どこかデジャブ感に包まれて気づくのは、その面白さが十年前とほとんど変わらないことだ。これは驚愕だと思う。日テレの日曜夜はテッパン、とよく言われるのだが、ほとんどはずっと続いている番組だ。変わらないから保守的だと批判しているのではなく、十数年間同じ水準の面白さを保ち続けていることに凄みさえ感じる。並大抵の努力ではなかったはずだ。それこそが、最終的にテレビに求められることではないか。
テレビにとっていちばん大事なのは、家族の誰もが安心して視聴できることだったのだ。それが結論だった。60年経ってやっと判明した。テレビは昨日と違う画面を映し出すより、毎日同じ画面を映すほうが愛される。視聴率だってとれる。新しいことなんかやろうとしてはダメだ。
フジテレビの困ったところは、例えそれがわかったとしても、できない会社であることだ。新しいことに取り組まないと気が済まない、生きていけない人たちなのだ。だからフジテレビはこの先も視聴率がとれないだろう。
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「新しいこと」はなぜ視聴率を取れなくなったのか。震災で日本人が変わったと亀山社長がコメントしたそうだがそれもあるだろう。その前のリーマンショックもあると思う。だが視聴率のダダ下がりは2005年以降の話だ。そしてキー局の視聴率推移を見ると、フジテレビ以外もダダ下がっていて、日テレだけが下がっていないことがわかる。
テレビは、非日常から日常になったのだと思う。新鮮さ、新しさ、上昇志向の発信源だったのが、その役割はネットに移り、テレビには安心や安定を求めるようになったのだ。
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リンク先を見る※NHK放送文化研究所2015年3月フォーラム発表スライドより
例えば関西と関東の人気番組を10年前といまと比べたNHKの調査結果がある。10年前は関西と関東でラインナップがほとんど変わらない。言ってみれば10年前は、関西の人も東京の番組を観たがったのだ。非日常を求めたからではないか。いまの関西の人気番組は、関西出身タレントが中心のものだ。日常を求めるようになったからだと言えないか。



