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米国債格下げが当然である理由

米国の債務上限引き上げ問題の解決がここへきてまた遠のいている観があります。

なぜなら下院共和党案に一部議員が拒絶反応を示しているからです。

でもアメリカの機関投資家は「問題はそこじゃない」という認識を持ちつつあります。

つまり仮に8月2日の期限までに債務上限が何らかの譲歩により無事引き上げられても米国は最上級の格付け、トリプルAを失うという観測が支配的になりつつあるのです。

その理由としては2つが指摘できます。

一番目の理由は現在残っているどの財政赤字削減策が採択された場合でも赤字の圧縮額は格付け機関が求めている「4兆ドル程度の圧縮が必要」という目標からは程遠いという点にあります。

安易な「意思決定の先延ばし案」だけしか選択肢が残っていない以上、折角、債務上限を今回引き上げることに成功しても、また暫くすると同じ議論をイチからやり直さなければいけないのです。

もうひとつの理由はもっと根源的な理由です。

それはちょうど小学校の先生が通信簿で「オール5」を乱発するような「トリプルAバブル」が過去に起こり、いまそのツケがわれわれに回ってきているという事です。

先ず世界で毎年どれだけの金額のトリプルA格付けを持った債券が発行されているかを示したのが下のグラフです。
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過去10年間にトリプルAという評価を持つ債券の発行額が5倍に増えていることに注目して下さい。2009年にはついに1年間で6兆ドル相当のトリプルAの債券が世界で発行されたわけです。

するとみんなが推薦入学で大学に進学する、大学出の学歴を持った若者が増えるから学士様の肩書が突然価値を持たなくなるという、我々の誰もが理解できる希少性の喪失が起こったわけです。

それではなぜトリプルAの評価を受けている債券が大量に増えちゃったのでしょうか?

いまトリプルAの評価を持つペーパーの中身をみると、その大部分はソブリン債(国の発行する債券、つまり国債)ないしはABS(アセット・バックト・セキュリティーズ)です。

このうち2006年まではABS、つまり住宅ローン抵当証券やその派生証券が大量に発行されました。

そのような証券はトリプルAの評価を格付け会社から獲得できるように特別な工夫が施されていました。

このためトリプルAの評価を持つ債券が大量に市場に供給され、これが廉価なファイナンスを可能にしたので住宅バブルを煽る一因を作りました。

しかし2007年に入って「どうも住宅市場の様子がおかしいぞ」という事になるとABSの発行は減退しました。

2008年にリーマン・ショックが起こり、世界の経済が停滞しました。

そこで米国政府をはじめ各国が景気テコ入れのための特別予算を組み、その支出を可能にするために国債、つまりソブリン債を大量発行したのです。

つまり2009年には主役がABSからソブリン債に交代したのです。こんにちもその状況が続いています。

もうひとつ理解しておくべき事は1990年頃にはその年の全債券の発行額に占めるトリプルAの割合は20%しか無かったのに、その後、毎年トリプルAを持つ債券の比率が上昇し、いまでは55%程度がトリプルAになっているということです。

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この背景にはABSの商品設計を工夫することで本来、トリプルAに値しないようなクズ債券でもトリプルAを獲得できるようになったこと、格付け機関が商売を優先してトリプルAを乱発した事などがあります。

また最近は米国政府が景気テコ入れの特別予算のために債券の大量発行を行ったこともトリプルAが増えたことの原因となっています。

まとめます。

いまの資本市場は「石を投げればトリプルAに当たる」というほどトリプルAで溢れちゃっています。トリプルAというのは本来、Risk-free asset、つまり「無リスク」と考えられる債券です。でもある年に発行される全債券のうち、55%が「無リスク」の最上格というのは、どう考えてもおかしいよね。

PS:このへんの深い話は次回の「CFDトレーディング・ハドル」セミナーで言及したいと思います。

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