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ドイツの奇跡の復興とEUのおいたち (3/4)

しかし困ったことがおきます。

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ベトナム戦争で財政赤字を抱えた米国はインフレに苦しみ、1971年8月にドルの金との兌換を停止します。

これに先立ちドイツは1971年5月からドイツ・マルクを変動相場制度に切り替えます。

これらの事により1940年代から続いてきた固定相場制度、つまりブレトン・ウッズ体制は1973年までには崩壊するのです。

変動相場になる前と後での欧州の輸出を比べると、一般論で言って変動相場採用後は輸出が低迷しました。これは為替変動で利益が吹き飛ぶかもしれない輸出市場より国内市場を優先する企業経営者のマインドを反映しています。またドルがどんどん刷られるようになると世界がインフレになり労働者の賃上げのプレッシャーもたかくなりました。つまりインフレのアンカーが引き摺られるようになったちいさな国がそれぞれの通貨を変動相場に晒すより、或る程度、為替相場を固定し、安心して輸出に励めるようにするニーズはこうやって高まったのです。1955年に既に欧州通貨協約(EMA)の試みはスタートしたのですが、ブレトン・ウッズ体制が崩壊した後で通貨統合への運動の機運は一層高まったと言えると思います。

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さらに長期で見れば通貨を統合できれば社債や株式などの証券市場の発達を促進できるし、それは資本調達コストを下げるというメリットもあります。

この一覧表は通貨ユーロが誕生するまでのみちのりをまとめたものです。

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欧州石炭鉄鋼共同体は1950年、欧州経済共同体EECは1958年、カスタムズ・ユニオン(関税撤廃)は1968年、EMSは1979年、コモン・マーケット(非関税障壁の撤廃)は1993年、マーストリヒト条約は93年です。そして最終的なマネタリー・ユニオン(通貨統合)は99年に実現しました。(=ユーロの創立メンバー11カ国の通貨は固定された。但し貨幣、紙幣の導入は2003年。)

通貨統合は最初からリスクを内包していました。なぜならヨーロッパには経済の強い国もあり、弱い国もあるからです。普通、経済の弱い国は通貨が下落します。すると国民の生活水準は下がりますけど、賃金が安くなると逆に輸出競争力は上昇するのです。

このように為替レートが自由化されていると自然にその国の実力に応じて為替の水準に訂正が入り、バランスが保たれます。でも極端な為替の変動は世界の貿易そのものを低迷させるし、1930年代のように経済のブロック化を招く恐れがあります。ドイツを中心として通貨を固定するという考えはそういう思考プロセスを経て到達されたものなのです。

通貨統合前の欧州の為替市場のメカニズムを説明します。ドイツは優等生なので金利政策は歴史的にきつめです。ドイツがきつめの金利政策を敷くと、欧州の通貨は米ドルに対して強含みやすいです。それは欧州に不景気をもたらします。そしてドイツ・マルクが対米ドルで強くなると、周辺欧州諸国へのしわ寄せが大きくなり、結果として周辺欧州諸国の通貨が弱含む傾向がある。通貨統合により為替レートを完全に固定してしまえばこのような問題から解放されると欧州の各国首脳は考えたのです。そこで1999年にマネタリー・ユニオン、つまり通貨統合に踏み切り、欧州域内の主要国の間で為替レートを固定しました。

通貨統合後の欧州経済はどうなったでしょうか?

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欧州の経常収支を見るとドイツは輸出が好調なので黒字ですけど、南欧は赤字であることがわかります。

これは極めて単純化した良い方をすればドイツの作った製品をスペイン、ギリシャ、ポルトガルなどが買ったということなのです。だから経常収支のグラフがゼロを境にしてちょうど鏡映しのように対称の形をしているのです。

ギリシャやスペインなどの比較的経済が弱い国がユーロの通貨統合に参加するとドイツの企業はギリシャ人やスペイン人に車や家電製品を売ったときユーロで代金を受け取れます。またギリシャやスペイン人の方でも強い通貨で買い物ができます。北ヨーロッパの人々が南にセカンドハウスを求めたので不動産ブームが来たし、景気もよくなりました。だからギリシャやポルトガルやスペインの経常収支がこのグラフのように赤字になっているということは、ユーロの共通通貨への参加が今言ったようないろいろな現象をもたらし、それが一回きりのブームにつながったことを示唆しているのです。

さて固定レートをするためにはある程度各国の財政政策のバランスがとれていることが必要になります。そこで安定成長協定(SGP)という約束が結ばれました。財政赤字はGDPの3%以内に収めなければいけないとか、国の借金はGDPの60%以内にとどめることなどがそれです。しかし2005年にドイツがこのルールを守れなくなってしまい、いちばん言いだしっぺのドイツが守れないのなら、他の国が守れなくても当然だということになってしまい、SGPは形骸化しました。

さらにマネタリー・ユニオンが開始された1999年以来の欧州の成長率(1.8%)を見ると米国の成長率(3.1%)より劣っています。つまりこのころから慢性的な低成長の問題が頭をもたげ始めたわけです。

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