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中国が素材を浪費しない国になる日

購買力平価で見た世界のGDPに占める中国の割合は15%弱です。

その一方で中国は世界のセメントの53%、鉄鉱石の48%、鉄鋼の45%、アルミニュームの42%、銅の39%、ニッケルの36%を消費しています。

このように実体経済の規模に比べて建設資材などの素材の消費が大きい理由は中国の経済が工場、インフラ、住宅、高層ビルなどへの投資を中心として発展してきたからです。

そういう偏った分野への投資の集中は別に中国だけに見られることではなく、歴史的には他の国でもありました。

そもそもなぜ偏った投資が始まるのかのもとを正せば、そこにexcess return opportunity が存在していたからに他なりません。

すごく不足しているものを最初に提供することが出来た人はガッポリ儲けることが出来るというのがexcess return opportunity の意味です。

しかしガッポリ稼いでいる人が出現すれば(自分も儲けたい)という人が出るのが資本主義の原理で、次々に新規参入を招き、その利益機会は漸減します。

ある時点からは初期投資のコストを勘案すればそれらの工場や高層ビルをつくることは儲からなくなります。すると折角の初期投資の費用が回収できなくなるのです。

この現象をcapital destruction(資本破壊)といいます。

米国のドットコムバブルのピークで登場したWebvanなどの資本集約的なアイデアは極めて資本破壊的でしたし、1990年以降の日本経済において資本破壊がどれほど個人や国家を苦しめたかは今更説明する必要も無いでしょう。

投資家はある日とつぜん(これまで自分がやってきた投資は実は資本破壊に類する間違ったことだ)ということに気が付きますが、その事に気がつくずっと前から投下資本のリターン(投資回収率)はじわじわと下がっているのが普通です。

大部分の投資家はこの(何となく昔よりは儲からないよね)ということに気がつかないまま資本破壊的な投資先にサイアクのタイミングで投資してしまいます。なぜならば過剰投資の最終段階では投資そのものがマネーゲーム化し、本業からのリターン(その設備やハコモノが生むキャッシュフロー)ではなく、キャピタルゲイン(転売による値上がり益)の確保へと投資家のフォーカスが移ってゆくからです。

この局面では値上がりがより沢山の投資を誘発するという「より馬鹿ゲーム(the greater fool phenomenon )」が起こります。(誰かが自分より後に来て、自分の建てたビルを買ってくれるだろう)というような発想です。

バブルの最盛期では日本の企業もどんどん転換社債などを発行し、そのカネで保養所を建てたり、研修センターを建てるなど、全くリターン(利益)を生まない投資を競ってしました。

それでもそのような投資行動がとがめられなかった理由は(いずれ値上がりして、転売出来る)という確信を国民全体が共有していたからです。

さて、現在の中国経済を考えた時、株式市場にはバブルは存在しません。しかし不動産をはじめとする固定資産投資の分野には明らかなバブルが存在します。

そういうと反論がどんどん出てきそうですが、僕のバブルの定義は住宅やアパートに関してはその物件を賃貸に回したときの家賃収入(キャッシュフロー)で投資コストがリーズナブルに回収できなければ、「より馬鹿ゲーム」的投資観に基づいた投資が蔓延しているというシンプルなものです。

日本では80年代にアメリカからの圧力で「輸出から内需へ」という産業の構造シフトが叫ばれました。

こんにちの中国もアメリカの消費者への過度の依存は中国の未来を危うくするという発想から「輸出から内需へ」という重点施策のシフトが主張されています。

しかし内需というのはきわめて曖昧な定義であり、多くの人が固定資産などへの投資と消費を区別していません。

いまそれらを分けて考えると、過去10年間の間に中国経済は固定資産投資への依存度を高めました。その一方で消費のGDPへの貢献度は逆に下がっているのです。

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ハコモノへの投資が上手く回らなくなった場合、それを追加投資で解決する(つまりより沢山のビルや工場を建てる)ことはできません。

しかし中国政府の方針はより庶民にアフォーダブルな廉価住宅を沢山建てることで現在の不動産市場の歪を訂正しようと必死になっています。

これは資本破壊を助長する行為であることは言うまでもありません。

バブルが弾けると固定資産投資のGDPに占める割合は減ります。それは日本の例でも実証されています。

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つまり「素材をあまり浪費しない社会」の到来です。

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