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アメリカ人が獲得した「家族」という新しい宗教

元旦に「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」、2日に「Ricki and the Flash」(邦題:幸せをつかむ歌 3月公開予定)を観ました。前者は世界的人気を誇るSF超大作、後者は大女優メリル・ストリープ主演のヒューマンドラマという対照的な映画でしたが、根底に流れているのはどちらも「家族」というテーマではないかと思いました。
 

■「善悪の対立」から「成長の物語」に方向転換したスター・ウォーズ


私はスター・ウォーズをリアル・タイムで観てきた世代です。
 
シリーズ最初のエピソード4は1977年公開。まだ米ソ冷戦の真っただ中でした。当初のストーリーは単純明快。悪の帝国を象徴するダース・ベイダーと正義のために立ち上がった人々が作る共和国の戦士たちが戦う物語。波乱万丈はあっても善は悪に必ず勝って大円団を迎えるという定石をきちんと踏襲していました。
 
このストーリー展開はルーク・スカイウォーカーが主人公の3部作で共有されますが、次のアナキン3部作になると若干、物語が混戦してきます。善の側だったはずのアナキンが徐々に悪の側にからめとられていき、最後は悪を代表するダース・ベイダーになってしまう。そして彼こそが前シリーズの主人公ルークとレイア姫の実の父だったことが明らかにされるのです。
 
最新作のエピソード7では、新しい主人公レイがフォースの力に目覚めるところから物語が始まります。レイは子供のころに連れ去られ、辺境の星で今も家族の再会を願いつつも、独力でたくましく暮らす女性。そして、彼女のパートナーになるのは冒頭で悪の側から「人を殺すのなんかいやだ」と善に寝返った黒人青年のフィン。
 
物語が進むにつれオリジナルシリーズの登場人物が登場してきますが、ハン・ソロは新しいダース・ベイダーの息子に殺され、隠遁しているルークはレイの実の父親ではないかと示唆されます。
 
最新作では勧善懲悪という単純明快な従来の物語ではなく、より複雑に善と悪がからみあい、そこに家族のメンバーが巻き込まれていくあまりに人間的な物語への変容が起こっています。しかも若い登場人物たちはその中で家族との相克や喪失に悩みつつも、自分の能力や存在意義を発見し、成長していきます。
 

■自分の夢のために子供を捨てた母親


いっぽう、「幸せをつかむ歌」の主人公リッキーは、ロックスターになるという夢のために3人の子供を置いて出奔し、老眼鏡の世話になる年齢なのに、いまだにスーパーでレジのバイトをしながらナイトクラブで歌い続けています。そこに離婚して自殺未遂を起こした娘の面倒をみてやってほしいと前夫から連絡が入り、長いブランクの後、リッキーは再び母親に戻ろうとします。
 
もちろん子供たちが大喜びで彼女を受け入れるはずがありません。母親に捨てられてどんなにみじめだったか、彼女がいかにひどい人間であるかとリッキーを攻撃し、傷つけます。しかし、最後には子供たちが母を認めて和解し、次男の結婚式でリッキーが彼の好きな歌を歌い、全員で踊るというあまりにもアメリカ的なエンディングで締めくくられます。
 
この映画でもスター・ウォーズと同じく、テーマは家族の喪失と再発見です。メリル・ストリープの2年前の映画「8月の家族たち」にも言えますが、さまざまな問題を抱える家族のメンバーが、反目や相克を抱えながらも最後には家族としての絆を再び取り戻すというストーリーが最近のアメリカ映画の大きなトレンドといってもよいのではないでしょうか。
 

■「アメリカ」を支える家族の絆


「幸せをつかむ歌」の中で主人公リッキーは「アメリカン・ガール」という曲を歌い終えてから「世界で最高の国に生まれて私は幸せ」と観客に語りかけます。彼女の生活は貧しいその日暮らしであり、さまざまな問題にあふれていますが、それでも彼女をしてそう言わしめるのは、アメリカ人特有の楽天主義であるとともに、やはり「家族」という存在が大きいのではないかと思うのです。
 
アメリカ人が家族に対してよく使う「I am proud of you」(私はあなたを誇りに思う)という表現を、私はこれまで、他の国の人から聞いたことがありません。逆に、どんなにダメだと思う状況に陥っても、こんな言葉を家族からかけられた経験があれば、そこを乗り越えていくことができるのではないかとも思うのです。
 
この2つの映画でも描かれているように、アメリカの家族というのは一筋縄ではいきません。離婚、再婚、連れ子、養子は当たり前。血のつながりがまったくない家族も珍しくありません(「幸せをつかむ歌」の中では、リッキーの元姑が「あなたは私の息子を捨てたけど、それでもあなたがずっと大好きだったわ」と再会を喜ぶシーンも出てきます)。
 
そんな中で、たとえその絆が断ち切れたとしても、何度でもやり直し、家族を再構成していくという営みをやめようとしないことこそ、現在のアメリカを支える活力の一つなのではないでしょうか。それは一面、宗教をなくしてしまった社会に生きる人間を支えるものとして、「家族」への信仰が始まったのではないかとも思えるのです。

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