- 2016年01月04日 16:00
全内幕! 軽減税率「自公政権『人間革命』へ課税の愚」
PRESIDENT 2016年1月18日号
勝者と敗者をはっきり分けた消費税増税時の軽減税率導入をめぐる攻防劇。しかし、土壇場のどさくさ紛れに決まった制度の細部に「落とし穴」があったことはあまり知られていない。財政規律の原則論を振りかざす自民党執行部を払いのけ、対象範囲拡大という「満額回答」を得たはずの公明党に思わぬ誤算が生じているのだ。メディアからも勝ち組と報じられる公明党が陥った「愚」とは何か。その舞台裏を探る。
飲食料品全般は対象非対象はあの商品
昨年12月16日に正式決定した、軽減税率制度を含む2016年度税制改正大綱の過程は、権力闘争そのものだった。「軽減税率の税収減を補う財源が足りない」として、対象品目の限定をかたくなに主張する谷垣禎一幹事長ら自民党執行部に対し、劣勢の公明党は16年夏の参院選での選挙協力を盾に菅義偉官房長官ら首相官邸を取り込んで必死に応戦。最後は公明党の支持母体である創価学会幹部が「自民党候補に対する公明党の推薦状を引きはがす」などと一喝して、大逆転で公明党案の「飲食料品全般」を丸呑みさせた。
支持者に抵抗感が強かった集団的自衛権を容認する安全保障関連法の成立にも、連立政権の与党として協力せざるをえなかった経緯を考慮すれば、軽減税率の制度設計をめぐる勝利は「100点満点」のはずだった。だが、自民党の閣僚経験者の1人は「決して、そうとも言い切れないのではないか。肝心要のモノが対象に含まれていないのだから」と推し量る。
その理由に挙げるのは、税制改正大綱決定の前日に決まった「飲食料品全般」以外の対象項目だ。まず、自民党と公明党は宅配や郵送で定期購読契約している新聞代にも軽減税率を適用すると決めた。日刊紙のほか、週2回以上発行している新聞を対象とするとの内容だ。さらに宅配率等で条件が厳しくなる可能性もあるが、この線引きでは、インターネットの電子版や駅売りは対象から除かれたものの、「東スポ」や「日刊ゲンダイ」の定期購読も対象に含まれる。政党機関紙でも日刊の「公明新聞」(公明党)と、「しんぶん赤旗」(共産党)は消費税率8%に据え置かれることになった。公明党にとっては、これもまた合格点といえる。
しかし、さらなる対象品目の絞り込み過程で両党に温度差が生じた。昨年12月15日の公明党税制調査会では「新聞と出版を別々にする理由はないのではないか。両方とも軽減すべきだ」との声が相次いだが、自民党税調幹部は「出版物を定義するにはそれなりの時間がかかる」との反対論を繰り広げたのだ。翌16日に税制改正大綱決定が迫っていたこともあり、公明党も強引に押し切ることはなく、書籍や雑誌を対象にするかどうかは引き続き検討されることで終わった。
最終的に適用外にした理由は「書籍や雑誌の中にある残虐、性的な内容を含むものを除外しきれない」(自民党幹部)というものだ。線引きを設けると国が書籍・雑誌のよしあしを決めることになりかねないとの判断だが、新聞を対象とした理由でもある「活字文化の重要性」や「知的インフラ」の観点は、書籍・雑誌に対しては考慮されなかった。
「ちょっとした意地みたいなものじゃないかな」。ある自民党幹部が声を潜めて語るのは、完全勝利とされた公明党に対する自民党執行部や財務省の「意趣返し」が最終段階であったとの見解だ。
それは公明党の支持母体、創価学会の池田大作名誉会長による『新・人間革命』などの著作物が軽減税率の適用対象から外れた点だという。同書は芥川賞を受賞した又吉直樹氏の『火花』などをおさえるほどのベストセラーとされ、支持者からすれば「生活必需品」ともいえる。書籍・雑誌を軽減税率の対象としても、その税収減は200億~300億円と計算されており、同程度の財源が必要な新聞だけを適用にした理由はいまだはっきりしない。
カリスマの名著に増税されるという「愚」を許した公明党。政局に発展した攻防で久々の辛酸をなめた自民党の深謀遠慮が働いたとの声は消えない。
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