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グローバル・ラグジャリー・ブランドはなぜ好調か? カネがカネを生む状況は既にBRICsでは当たり前

The rich get richer, the poor get children.
(金持ちはより裕福になり、貧乏人は子沢山)

これはボードビルの唄、『楽しいじゃないか?(Ain’t We Got Fun?)』の有名な一節です。

最近のグローバル・ラグジャリー・ブランド(贅沢ブランド品)の業績を見ると、どれも好調です。

今日もティファニーが全くソツのない好業績を発表して株価は新値を舞っています。

世界を見回すといろいろ不透明要因には事欠かないのに、なぜ贅沢ブランドばかり潤っているのでしょうか?

そのひとつの理由はバーナンキFRB議長の意図的な株高演出です。
バーナンキ議長は米国の不動産市場の低迷が長く続くと考えたので、(少なくとも株式市場という消費のもうひとつのエンジンだけは、いまスイッチを切ってはいけない)という意図から追加的量的緩和政策(いわゆるQE2)を発表し、あからさまに株式市場のテコ入れに乗り出しました。

米国民の多くは401(k)などを通じて株式を沢山持っている(個人資産の約35%)ので株高になると裕福層を中心に羽振りが良くなります。

もうひとつの理由は中国をはじめとする新興国の新興裕福層の台頭です。

中国では1970年代半ばにそれまでの「万人が平等な社会を作ろう」という試みがとんでもない間違いであることに気がつきました。なぜなら横並びへの執着が人々の労働意欲を根絶してしまったからです。

すっかり衰退して活力を失った中国社会をみて訒小平は白猫黒猫論を展開します。

それは「白い猫でも黒い猫でもどっちだっていいじゃないか。ネズミを取る猫こそが良い猫だ」という価値観です。

ここで言う白い猫とか黒い猫とかはイデオロギーを指し、共産主義ないし資本主義と置き換えても良いでしょう。そのような看板を掛け替えるのは政治的に大変な作業だから、「この際、レッテルはさておき、ネズミを取れる猫は罰しない」というプラグマチックな発想で国民が私利を追求するのを容認したのです。

これと同じような言葉で「先富論」というのもあります。「経済を立て直す過程で誰かが自分より先に豊かになったって、それは仕方ない。だから先を越す奴をとがめるのではなく、自分もリッチになることを目指そう」というわけです。

このような発想の転換があったからこそ中国は第二次大戦後から文化大革命にかけてすっかり沈滞した経済の立て直しに成功したのです。

今は中国も豊かになり、貧富の差の拡大は中国の政治的安定を脅かし始めています。しかし間違ってはいけないのは、だから中国はより平等な社会への回帰を願っているか?といえば、それはそうではないという点です。

むしろ経済の外的要因(インフレの高進、人民元の切り上げなど)はよりリッチ層にとって有利な条件が揃いつつあると言えるでしょう。

中国は大きな国なので「平均」で物事を考えると間違えます。(これはアメリカにも言えることです。)

つまりとてつもないリッチ層が沢山居れば、その一方で貧しい人も居るということです。その全体を「底上げ」的に豊かにするというのはたいへん困難な作業です。(一例として農家の労働生産性と都市部の労働生産性はぜんぜん違うので格差是正は起こりにくいです。)

既に中国の裕福層は巨額の金融資産を蓄積しはじめているので、ここからは放っておいても冒頭で紹介した唄のように「カネがカネを生む」状況になると思うのです。

いや、むしろ格差は今後も更に大きくなると思うし、裕福層の成長スピードの方が貧困層の所得向上より早いペースだと思います。

心情的には貧困層に同情したくなりますが、投資戦略としては市場が急拡大している方に賭けるのは合理的です。

さて、中国の話ばかりしましたが、他のBRICs諸国も裕福層と庶民の格差はたいへん大きいです。そして全てのBRICs諸国で中国と同様の裕福層の台頭という現象がいま起こっています。

NYの五番街のハリー・ウインストン(ティッカー:HWD)では最近、ふらりとサロンに立ち寄った中国の富豪が特大のダイヤモンドを買ってゆく事がとても増えているそうです。またダイヤモンドを散りばめた時計もヒットしています。

このような変化に気付いた同社ではダイヤモンドの原石のソーシング(調達)を確保するために外部の投資ファンドと協同してダイヤモンド・ファンドを設立しました。

これは自社のバランスシートでは在庫に抱えきれないダイヤモンドを一旦、ファンドに売ってプールしておき、需要に応じてそのファンドから原石の供給を受けるという意図があるのではないかと僕は考えています。

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