記事

日本の大学ランキングが急落した理由とは?(その1)

1/2

 新年あけましておめでとうございます。

 気がつけば昨年の10月からブログを更新していませんでしたね。11月29日に鈴鹿医療科学大学で開催され、多くの皆さんに参加していただいた第二回日本薬膳学会での会長講演を初めとして、その前後に毎週のように全く別のテーマで講演をさせていただき、猛烈な忙しさでした。本来は去年の間に書いておくべきテーマであったのですが、お正月休みに入ってやっと書くことができたという状況です。日本の研究力の低下について書籍の執筆も頼まれているのですが、進捗がずいぶん遅れています。すみません。

 でも、このブログも、その書籍の一部にしますからね。

 さて、平成15年は日本人のノーベル賞連続受賞の喜ばしいニュースとともに、タイムズ社(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション、以下THEと略します。)による世界大学ランキングで日本の大学の順位が急落し、200位以内に2大学しか残らないという惨憺たる結果が報道され、関係者に激震が走った年でもありました。下村博文前全文部科学大臣も昨年の10月2日の記者会見で日本の大学の順位の急落について記者の質問に答えておられます。

 日本政府は日本の高等教育政策の中で、以前から世界大学ランキングを目標に掲げています(図表1)。第一次小泉内閣の時、国立大学が法人化される前夜の平成13年6月に出された「大学(国立大学)の構造改革の方針」(いわゆる遠山プラン)には、ランキング何位とまでは書かれていませんが、「国公私トップ30を世界最高水準に」と書かれています。

画像を見る

 第二次安倍内閣の時、平成19年6月の教育再生会議第二次報告では「世界の上位10校以内を含め上位30校に少なくとも5校が入る。」と書かれており、また、第2次安倍内閣の平成25年6月の日本再興戦略に「今後10年間で世界大学ランキングトップ100位以内に10校以上を入れる。」と書かれています。なお「世界のトップ100大学に⒑校」は、平成25年1月日の第一回産業競争力会議において竹中平蔵議員が提出した資料の中に書かれています。

 僕はこのような大学ランキングを政策目標に設定することは良いとは思いません。大学のミッションは多面的であり、1つの評価軸では適切な評価ができないということが一つの理由です。もう一つは、現在の日本のように財政状況が厳しく大学への公的資金総額が削減されている状況では、上位大学だけを重点化する政策が掲げられれば、すでに世界の中でも最も急峻な大学間傾斜がいっそう急峻となり、スカイツリーのような超急峻な大学間傾斜になって、多くの大学が弱体化し、結果的に国家全体としての大学力が低下するからです。

 目標としては国家全体の高等教育や研究力の数値目標を、その前に掲げるべきであると考えます。なお、大学間の「選択と集中」政策は、公平な機会を与えて競争させる「競争原理」とは対極の概念であり、持てる者を上から選び、公平な競争に人為的に決着をつける政策であると考えます。したがって競争原理によって期待される大学間ランクの交代は起こりにくくなります。

 法人化以降の高等教育政策(国立大学)の潮流は、大学への公的資金の総額削減、「選択と集中(重点化)」、基盤的資金の競争的資金への移行、ということであり、その結果、まず中下位の大学の弱体化が起こりました。今回の世界大学ランキングの低下は、「選択と集中」政策の恵みを享受してきたはずの上位大学だけの問題であり、今まで、地方大学の存在意義を訴えつづけてきた僕としては、あまり関心はありませんでした。しかし、中下位大学のみならず、上位大学の国際競争力も低下していることは、日本の大学が総崩れ状態であることを意味するとも考えられます。

 また、大学ランキングには、常に批判がある一方で、世界の人々に大きな影響を与えることも事実であり、留学生の大学選択や国家のブランド力にも関係してきます。どの国でも、政治家や報道機関や国民の大きな関心事になっています。

 このような理由で、今回、あまり気が進まなかった大学ランキングについても考察してみることにしました。

 今回の日本の大学ランキングの急落について、新聞報道やネット上でも、なぜ日本の大学ランキングが急落したのか、また、それをどう捉えるべきなのかについて、さまざまな意見が飛び交いました。そのほとんどは的を射たご意見であると思います。一部は、皆さんのご意見の繰り返しになるかもしれませんが、今回は、自分自身で分析した結果に基づき、僕なりの考察を試みたいと思います。

 まず図表2に示したTHEの世界大学ランキングにおける日本の大学のランキングの推移を見ていただきましょう。タイムズ社が大学ランキングをはじめた当初はQS社という会社がランキングのデータを分析していましたが、2010年からトムソン・ロイター社に代わり、その時点でいったん日本の大学のランキングは急落しています。そして、今回、2015年にトムソン。ロイター社からエルゼビア社にデータ分析担当会社が代わり、再度、日本の大学の順位が急落しました。

画像を見る

 THEの世界大学ランキングにおける2010年と2015年の日本の大学の異常と感じられる急落は、データ分析を担当した会社の評価方法の違いによるものと考えられます。今回のTHEのホームページには、評価方法が変更されたので、それまでの結果と、2015年度の結果とは連続性がなく、継時的な比較をすることは無意味であると書かれています。

 THEのホームページには、ランキングのもとになる評価項目について、その方法や重み付けが解説されており、日本の大学の順位急落の要因をある程度推測することができます。

 それによると、ランキングは大きく5つの大きな指標と、さらにそれを細分化した13の指標で点数が付けられます(図表3)。その5つあるいは13の指標について、重み付けがなされた上で、その合計点でランキングが決まります。「教育」「研究」「被引用数」のそれぞれが30点であり、この3つで90%の点数が決まってしまいます。このうち「被引用数」は、実は研究力の指標です。また、「教育」の評価項目の中にも、研究に大いに寄与する博士に関する項目の重みが8.25%あり、企業からの収入2.5%や国際共同研究2.5%も研究に寄与すると考えられますので、これらを合計すると73.25%が研究に関連する評価と考えられます。

 画像を見る

 なお、「被引用数」は、その論文が他の研究者の論文に引用される回数であり、その回数が多いということは「注目度」が高いことを意味します。「注目度」は、論文の「質」を表す一つの指標(代理変数)と考えられています。

あわせて読みたい

「大学」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    「インチキはいつか必ずバレる」熱海土石流は人災か

    毒蝮三太夫

    07月29日 08:08

  2. 2

    列車内での飲酒について、JR北海道から回答「お客様に強制することは大変難しい」

    猪野 亨

    07月29日 10:28

  3. 3

    集団免疫得られるワクチン接種率、70%程度では難しい=尾身会長

    ロイター

    07月29日 12:55

  4. 4

    五輪報道に「手のひら返し」と批判も オリンピックに沸くテレビ・新聞の報道

    ABEMA TIMES

    07月29日 09:54

  5. 5

    小池都知事“一人暮らしは自宅を病床に”発言に「一人で死ねってこと?」と怒り爆発

    女性自身

    07月29日 11:27

  6. 6

    コロナ対策は菅内閣にも直結 東京の新規感染者数が5000人超えなら菅内閣はもたない

    田原総一朗

    07月28日 14:43

  7. 7

    高校に通わなかった東大名物教授の独学勉強法 本や教科書は疑って読むクセ

    宇佐美典也

    07月29日 12:00

  8. 8

    東京3000人は五輪強行開催によるモラル崩壊の証。もう誰も自粛しない

    かさこ

    07月28日 08:46

  9. 9

    「きれいごとだけでは稼げない」週刊文春が不倫報道をやめない本当の理由

    PRESIDENT Online

    07月28日 12:30

  10. 10

    西村大臣の酒類販売事業者への要請撤回 首相官邸の独断に官僚からも疑問の声

    舛添要一

    07月28日 08:34

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。