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リビアに「カダフィ残党IS」 - 畑中美樹

イスラム国(IS)のイラク、シリアの支配地域が縮小するなか、戦闘員が新拠点とすべく東西に2政府が併存するリビアに大量移動を始めたと伝えられる。真実ならば地中海の対岸にIS拠点が出来るだけに、フランスやイタリアなどは警戒を強めている。

 だが、筆者の知る限りリビアでISが長期にわたり存在していたのは、従来からイスラム過激派が活動してきた東部のデルナのみである。ISの他都市への流入を難しくしてきたのが同国固有の3つの理由だ。それらは、

 ①42年間のカダフィ時代にイスラム過激派が徹底的に弾圧・排除され処刑されたこと。

 ②依然部族主義が残り、よそ者が市町村に入り込みにくい風土であること。

 ③今でもカダフィ時代の密告主義が残り、地場の民兵組織に容易に通告されてしまうこと、である。 

郊外の山岳部への撤退を余儀なくされたIS

 デルナではIS戦闘員がカダフィ政権崩壊後の無政府状態に付け込む形で2014年4月頃から流入を始めた。当初、若者中心の武装集団は聖戦思想の宣伝や最新兵器の供与に魅了され、ISに忠誠を誓ったり支持表明を行った。

 だが、ISの残虐性が明らかになるにつれ若者の大半は離反し「デルナ青年イスラム評議会」を結成のうえ、2015年7月からはISとの戦闘に転じた。結局、9月には人数に勝る同評議会が勝利し、ISは郊外の山岳部への撤退を余儀なくされている。

では、ISの活動が中部シルテで活発化との欧米メディアの報道はどう見れば良いのか。実はシルテは故カダフィ大佐が育った街であり今もカダフィ・シンパの戦闘員が数多く存在する。リビアが安定化すれば行き場のなくなる彼らがISを名乗って事件を引き起こしてきた。そのあたりを先刻承知の国民は彼らのことを「カダフィ残党のIS」と呼んでいる。

カダフィ派の処遇が鍵を握る

 ただし注意しなければならないのは、シリア、イラクのISにもサダム・フセイン政権時代の軍人・諜報機関員・バース党員が数多くいる点である。リビアのカダフィ派も彼ら同様、反欧米思想を持ち新体制下には居場所がない。この点にISが目をつけ、まだシルテに来ていないその他のカダフィ残党も呼応すれば、シリア、イラクの再現も考えられる。逆に言えば、今後のカダフィ派の処遇が鍵を握っているということだ。

 実際、シルテはデルナから追放されたISが移動後、地場のカダフィISとの共闘により夏ころ制圧された形である。2015年12月初旬現在のIS戦闘員は1500人だが、内訳をみると「カダフィ残党のIS」700人、デルナからの移動者などのIS戦闘員800人だ。

 折しもリビアの東西政府は12月17日、国連の仲介で統一政府を創設することで合意した。新政権がカダフィ派をどのように処遇することになるのか注目したい。

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