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今年の本 私の10冊

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著者デビューする前から、普通のサラリーマンの頃からずっと書いている「今年の本 私の10冊」。今年も書くことにしよう。

「今年出た本で、私が読んだ本」の中から、順番をつけずに10冊選ぶというのがルール。できるだけ専門外の、趣味の読書から選ぶというのも方針ではある(とはいえ、毎年、その分野のものが入る)。この「今年出た本」から選ぶというのは、良いことなのかという話はある。普段、日常的に読む本は新刊ではないし。とはいえ、このルールで選ぶことにしよう。独断と偏見による。今年は10冊に絞るのに迷ったな。

気になった本を紹介しつつ、私の10冊を発表したい。なお、一応書評のようなものなので、これからの表記は敬称略とする。

「出版不況」なるテンプレがあるわけだけど、それは中長期的、構造的問題でもあるわけで。そんな中で、今年は「売らんかな」という企画がいっぱいあったわけだけど、一方で良書を出そうという試行錯誤を感じる年だった。

なんせ、又吉直樹『火花』(文藝春秋)の芥川賞受賞→ベストセラー→コーナー展示で文学盛り上がるとか、少年Aの『絶歌』(太田出版)をめぐる出版の倫理、ピケティ本ブームなどが話題となったし、戦後70年本や、民主主義とは何か本が話題になったのだけど・・・。

私が注目しているトレンドは、専門家がウェブ記事×連載×普段の活動で、書籍もベストセラーとなり、それが飛び火して社会運動化し、一般のメディアにも広がるという流れである。今に始まった話ではないかもしれないが、今年はそれが顕著だったと言えないか。具体的には内田良『教育という病』(光文社新書)や藤田孝典『下流老人』(朝日新聞出版)、木下斉『稼ぐまちが地方を変える―誰も言わなかった10の鉄則』(NHK出版)などがそうだ。3人ともネット上の連載や、SNSで意見を発信していったし、メディアも日々、社会問題としてこのテーマを扱ったし、結果として書籍もよく売れていった。マーケティング視点で言うと、ウェブ連動型販促という話になるし、参考にするべき部分はるだろう。もっとも、ここは参考にしてはいけなくて。ここであげた3人をはじめ、みんな売れるということは度外視し、その社会問題に専門家としてマジで取り組んでいるということがポイントだろう。

働き方に関する漫画でいうと、渋谷直角『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』(扶桑社)、那智泉見 (『社畜人ヤブー 』(PHP研究所)など、文化系ワナビーや、ポジティブ社畜を描いた佳作も生まれた1年だった。まったく趣味の話で恐縮だが、今年は島耕作シリーズが面白かった。狂い咲きとも言える。成功者の悠々自適話だと揶揄される会長編は老後の問題などを描きだしたし、学生編は若者が国会を取り囲む時代について、昔はどうだったのかということを現実的な問題も含めて紹介していて、60年代の若者は意識高かった幻想を打ち砕いていて好感がもてた。

前書きが長くなったが・・・、私の10冊!



圧倒的に面白かったのが、この本。985年、アメリカン・ポップスの青春が、終わった。まさに「ウィ・アー・ザ・ワールドの呪い 」。音楽史のようで、人々が手をつなげそうでつなげない時代がいつから始まったのか。ミュージシャンが書いた音楽論の本だが、圧倒的な調査による事実の積み重ね、その時代、歴史の因果の鎖を読み解く視点と技術、届ける文体が素晴らしい。



前作『自己啓発の時代』(勁草書房)も素晴らしかったが・・・。今回も考察対象と、事実の積み重ね、切り口が素晴らしい。自己啓発ブームとは何だったのかを学術的に検証した傑作。意識高い系本も、本当はこのレベルでやりたかった。



政治の季節だと言われる。右傾化などが話題となるのだが、成長なき時代、パイが減っていく時代にそもそも論で考えるべきことを提示している。こちらは論理展開が素晴らしい。著者の萱野稔人はネットでの情報発信を一切やらないのだが、ネット上で日常的に論じられる民主主義論、ナショナリズム論を大きく超えたそもそも論を論じているのが素晴らしい。学者が一般書を書く意義について考えた。

菊地 史彦
トランスビュー
2015-03-05


こちらは硬派な若者論。歌謡曲、映画、記録、TVドラマ、文学、マンガなどを素材に、戦後から現在までかなり長いスパンで、社会の中の若者を捉え直している。若者論といえば、ついつい目の前にいる、前の世代とは異なった奇妙な若者とその言動を捉えがちだが、このような俯瞰した視点を持つことは有益だと思う。



今年は戦後70年本が多数出版された。中でも切り口が面白かったのはこの本。文学者小森陽一、歴史学者成田龍一、社会学者本田由紀の3人が二一冊の岩波新書をもとに戦後を捉え直す。取り上げられた本を通じて時代の空気、変わるもの変わらぬものを確認できる。10代の頃からの岩波新書ファンとしてもたまらない内容。

田崎 健太
集英社インターナショナル
2015-07-24


ルポルタージュの傑作。「真説」というだけに、徹底した取材により人間長州力、本名・郭光雄、通名・吉田光雄の在日韓国人の奇妙な冒険について描きなおしている。プロレスファンとしてはたまらないが、その真実に迫るための圧倒的な取材量と視点が素晴らしい。今までの長州像がいかにいい加減かがよく分かる。

中室 牧子
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015-06-18


一般論として語られる教育ノウハウについて、データや理論を元に斬りこんでいく面白さ。この本を読んでいると、教育に関して論じられることは結局、教員や親(さらには国家)のエゴであって、その子供や、結局は社会のために役立たないことなのではないかと思えてくる。これも学者、専門家が社会にいかに貢献するかということについて考えさせられる本。別の切り口で言うならば、ここ数年でディスカヴァー・トゥエンティワンは自己啓発本出版社から硬派な出版社に変わりつつあると言えるかも。



今年は武田砂鉄の年だった。視点と切り口が素晴らしい。各所で絶賛されているが、この本は読み方が大事だと思う。いちいちエピソードは面白い、文体も。ただ、「紋切型社会」というタイトル、コンセプトを常に意識して読むべきだ。彼自身、よくメディアに露出したし、ウェブ上では多数の論考を書いていたが、この「紋切型社会」というコンセプトをもっと広げて欲しかった。



女性×働くに関するそもそも論。ここ数年、「女性の活躍」をテーマにして書かれた本は多数あるが、本書にはその「そもそも論」が書かれている。濱口桂一郎の視点はつねに日本的雇用のそもそも論に向かっていると思うし、その問題提起を続けてきた。我が国における女性の労働の歩みを丁寧に論じている。「女性活躍」のための国家レベルでの政策や、企業レベルのでの施策は多数打ち出されているが、そもそも論を理解しないと、私が一貫して批判しているように見せびらかしの女性活躍、儲からない女性活躍、気合いと根性の女性活躍になってしまう。読んでみて、もっと処方箋を提示して欲しいとか、最近の事例についても触れて欲しいなどと思うかもしれないが、女性の活躍にはそもそも論の確認が必要なのだ。



現役の漫画家が漫画作りの舞台裏、ノウハウを明かした本。プロを感じる一冊。個人的にはジョジョの各部の世界観がどう違うかという解説がツボだった。

・・・他にも紹介したい本はいっぱいあったのだが、バランス考えてこの10冊。



個人的には、修論が書籍化され、大ヒットはしなかったがおかげ様で高い評価を頂いたこと。



この本で棚橋弘至と対談したこと。



エヴァに関するモヤモヤを本に出来たこと。



代表作が、馳浩、田中俊之との対談記事などもプラスしてパワーアップして文庫化されたことが嬉しかったな。

来年も読書を楽しもう、うん。

PS 前述したが、普段は古い本ばかり読んでいるからな。

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