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トルコ軍機による露戦闘爆撃機の撃墜について ―リフレックシブ・コントロール作戦の視点から―

政策提言委員 本村久郎

1.はじめに

9月28日、プーチン大統領は、1年ぶりにオバマ大統領と個別会談後、「『イスラム国(IS=Islamic State)(以下ISと記す)』に対してアメリカが主導する空爆に参加するかどうか検討している」「とても建設的で実務的で率直な会談だった」「ロシアがIS空爆に参加するには国連の承認が必要で、ロシアがシリア領内に地上部隊を投入することはあり得ない」と述べた。しかし、その2日後にはシリア領内に戦闘爆撃機を配置し、空爆を開始した。目標はISと主張しながらも、主たる攻撃目標はシリア北西部の反政府勢力であった。

その後、トルコによるロシア機撃墜をうまく利用し、アサド政権支援の態勢を確立し、ロシアの空爆により反政府勢力は劣勢となった。

ロシアは、この一連の流れの中で『リフレックシブ・コントロール:Reflexive Control(反映統制)』(以後RCと記す)という情報戦を駆使してロシアに有利な状況を醸成してきた。シリアにおける今後のロシアの行動を予測する上で、このRCについて認識しておくことが重要となるであろう。

2.ロシアによるシリア内での空爆の経緯

9月30日、ロシアはシリア領内でIS掃討を名目に空爆を開始した。同日、カーター米国防長官は、シリアでのロシアの空爆地域は反政府勢力が制圧しているホムス県やハマス県で、IS不在地域だった可能性が高いと明言した。米国は空爆の1時間前にロシアより通告を受けていた模様である。一方、ロシア国防省は空軍が爆撃したのはISの軍備や通信施設、兵器や燃料の備蓄で、民間インフラは爆撃していないと説明した。これに対してシリアの反政府勢力は、ロシアの戦闘機がザファレアネ、ラスタン、タルビセの町を含む複数地点を襲い、複数の子供を含む民間人が少なくとも36人死亡したと主張した。

戦争研究所(ISW:Institute for the Study of War)の分析では、9月30日には4カ所の反政府勢力支配地域を攻撃し、10月1日には5カ所の反政府勢力支配地及びシリア中央北部の2カ所のIS支配地域に空爆を拡大させた(図1参照)。ISへのロシアの空爆は2割以下である。一方、ロシアは30日に「シリア領内の過激派組織IS」(IS)の拠点20カ所を空爆した」と発表したが1、アメリカはロシアの空爆の主目標は反政府勢力の拠点であるとの懸念を示した。ロシアのISへの一部空爆は、有志連合と協調して空爆しているという主張を正当化させるものに過ぎないことは明らかである。

この時、米露両外相は、シリア領内で両国の軍事行動において不測事態の発生を避けるために「軍事関係者同士で協議するのが急務である」と合意したにもかかわらず、10月3日にSu-30が、4日にSu-24が引き続いてトルコ領空を侵犯した。 これに対しトルコは、駐トルコのロシア大使を外務省に呼び厳重抗議した。トルコのエルドアン大統領はロシアに対し、「トルコへの攻撃はNATOへの攻撃に相当する」と警告した。同大統領は「さまざまな協力関係にあるトルコのような友人を失えば、失うものは大きいことをロシアは知るべきだ」と述べた。

図1.9月30日~10月1日のロシアの空爆地域(ISW)
北大西洋条約機構(NATO)は、ロシアに「シリア反体制派と市民」に対する空爆を停止するよう求めている。一方、ロシアはISを含む過激派勢力を空爆の標的にしていると主張した。トルコを含むNATO加盟国28カ国は5日の声明で、「無責任な行動による極度の危険」への警告を発し、ロシアに領空侵犯の即時停止を求めた。ロシアは3日の領空侵犯がわずか数秒のことで、悪天候によるものだとしている。4日の領空侵犯についての公式なコメントは出していない。

米国のジョン・ケリー国務長官も、トルコには領空侵犯した戦闘機を打ち落とす権利がある、と発言した。8日にブリュッセルで開催されたNATO国防相理事会で、対応を協議した。ストルテンベルグ事務総長は記者会見で、ロシアによるトルコの領空侵犯を受け、同国を「防衛する用意がある。必要なら展開する」と述べ、NATO地上軍を派遣する用意があると表明した。

事務総長は「シリアでのロシアの兵力拡大が、トルコの領空侵犯に関係していると判断している」と述べ、ロシアを強く牽制した。トルコのダウトオール首相は地元テレビのインタビューで「トルコ軍は明確な指示を受けている」と述べ、「仮に鳥だったとしても阻止する」と語った。

この時点でトルコは今後のロシアによる領空侵犯に対して断固たる対応、即ち侵犯機撃墜を決定していたものと思われる。ただ「トルコとロシアの間に危機は生じていないし、対話のチャンネルは開かれている」とも述べており、ロシアとの軍事衝突を回避したいと考えていたようである。

ロシア国防相はシリアにおける空爆は対ISであるように見せるために、定期的に偽情報を流してきた。ロシア国防省は9月30日から11月19日の間に45カ所でISを攻撃したと主張しているが、信頼できる地方からの報告では36カ所で攻撃が行われ、戦争研究所の評価ではこれらの空爆のうち25個がシリア反政府グループに対するものであった2

トルコはロシアに対してハタイ県の国境付近を飛行しないように要求し警告を与えていた。10月15日にはロシア空軍幹部がアンカラでトルコ軍幹部と会談し、再発防止を約束していたようである。

しかし、11月24日に領空侵犯したとしてロシア戦闘爆撃機Su-24をトルコ空軍のF-16がついに撃墜した。トルコは、「同国軍のF-16戦闘機が、国境に接近した軍用機に対し5分間で10回の警告を行った後、撃墜した」。また、トルコ大統領府も地元紙に、「撃墜は領空侵犯に対する措置だった」と述べた。

一方、プーチン氏は24日、「トルコ軍のF-16戦闘機から発射された空対空ミサイルに撃墜された」と語った。プーチン氏は露軍機が撃墜された際、対トルコ国境から1kmのシリア領空を飛行中で、機体はトルコ国境から4kmのシリア側に墜落したと説明した。ロイター通信によると、撃墜された軍用機の乗員2人はパラシュートで脱出。シリア北部に降下したが、シリア反体制派民兵の銃撃を受け死亡したという。プーチン氏は「今日の悲劇的な出来事はロシアとトルコとの関係にとって重大な結果をもたらすだろう」と述べた。

駐イラク米軍のウォレン報道官は24日、記者会見し、「(撃墜は)ロシアとトルコの間の出来事で、有志連合や米軍の関係する問題ではない」と述べ、両政府の対応を見守る考えを示した。米軍はトルコ側が警告を繰り返したが、撃墜された露軍機は反応しなかったことを確認していると発表した3

3.領空侵犯したロシア戦闘爆撃機撃墜事案の分析

(1) 撃墜事案の概要
各報道からの情報と日本テレビが入手した交信記録を参考に撃墜事案の経緯について考察する。

飛行経路等については各報道で概ね同様な内容になっているが、NATO外交筋が毎日新聞に明らかにした内容によると、NATOによるレーダーの航跡分析では、フメイミーム空軍基地を発進したロシアのSu-24戦闘爆撃機2機が24日午前9時22分ごろ、トルコ南部の領空に侵入した。旋回して同9時24分、再び領空内に約2.5km入り込み、17秒間領空侵犯した。トルコ軍は1回目の領空侵犯時に11回、2回目に10回、計21回警告した後、これを無視して領空に留まった1機をミサイルで撃墜した4。撃墜されなかった他の1機は、1回目の侵入後直ちに領空外に出たものと思われる。

また私が聞いた30秒程度の録音テープによると、トルコ空軍は地上の警戒監視部隊も戦闘機のパイロットも極めて緊迫した状況で、飛行進路を南に向けるように警告を行っていた。対象機は20度の方向、即ち、北に向かって飛行していた。対象機は40度や50度の方向に何度か変針してすぐにまた20度に戻しているようであった。筆者の推測では、この録音はロシア機の2回目の侵入前のものと思われる。トルコ空軍は緊急周波数(※緊急時あるいは警告時に使用する共通の周波数。通常、軍用機も民間機も常時受信できるようにして、その状態をモニターする)で警告をしており、また撃墜されたロシア機は後方をチェックするように数度変針しており、F-16の接近には気づいていたと思われ、「警告はなかった」「領空へ侵入していない」というロシアの主張は極めて疑わしい。

(2) 撃墜事案の分析
ア.トルコ空軍の態勢
F-16が配備されている基地は8カ所あるが、戦術訓練、試験飛行、偵察、機種転換教育を除くと、バンドゥルマ基地(攻撃、多任務)、バルケシル基地(多任務)、メルジフォン基地(防空制圧、防空)、ディヤルバルク基地(攻撃、多任務)の4基地である(図2参照)。位置と任務から考えるとメルジフォン基地の第152飛行隊が主として対応し、ディヤルバルク基地の第182飛行隊が補完しているものと思われる。しかし、今回侵入のあった地域まではメルジフォン基地が約550kmでしかも直線ではシリア領空を通過しなければならない。従って、トルコとの国境まで約50kmのシリアのフメイミーム基地から発進したロシア機には対応できない。

トルコのアダナ県にインシリック基地がある。この基地には本来空中給油機と輸送機を装備する第101飛行隊が配備されている。しかし、この飛行場には56個の戦闘機用シェルターが整備されており(最近建設されたものがその内の13個)5 、2個以上の戦闘機飛行隊が展開可能である(図3参照)。基地から当該地点まで約145kmであり、何とか対応可能な距離である。このことから、シリアの情勢に対応するためこの基地には、F-16機を装備する第152飛行隊あるいは第182飛行隊が長期間展開していると思われる。

図2.航空基地の配置 出典:本人作成



図3.インシリック基地(2015年8月2日撮影Google Earth)



イ.推定されるロシア機の飛行経路
基地から発進した2機のSu-24は北東に進路をとり、その後西に進路を変更し、トルコ領空に侵入したようである。その間の飛行距離は80~100kmと思われる。このうち1機のSu-24については領空に侵入したのか不明であるが、いずれにしても直ちに領空外に出たと思われる。領空侵犯したロシア機はトルコ空軍の地上レーダーおよびF-16の警告を無視して20度方向(北北東)に飛行進路を向け、そして再度、領空に侵入し領空を出たものと思われる)。そして、その2分後に再度領空に侵入し、F-16は警告の後、ロシア機が領空を出る直前にミサイルを発射し撃墜したものと思われる。ロシアの推定される飛行経路は図4のとおり。

図4.推定されるロシア機の飛行経路 出典:本人作成



ウ.なぜロシア機は、このような行動をとったのか?
10月3日、4日と連続して領空を侵犯し、15日にもトルコから領空の近くを飛行しないように警告を受けていた。しかしロシアはトルコの意志を過小評価し、短時間の領空侵犯を既成事実化しようとしたものと考える。大胆にもF-16からの警告を無視し、2分後に2回目の領空侵入を行っていることからも推測できる。トルコ軍も我慢の限界に達したのかもしれない。考えられるロシアのもう一つの意図は、挑発して撃墜を引き起こし、それを口実にシリア内での態を強化するためである。ロシアは人命軽視の国家である。空軍機が撃墜されても大きな目的のためには構わない、と考えていたのではないかと思われる。旧式のSu-24をしかも自衛用の空対空ミサイルなしで飛行させたことからもこのことは推測できる。

その後、プーチン大統領は「今日の悲劇的な出来事はロシアとトルコとの関係にとって重大な結果をもたらすだろう」とトルコを威嚇した。ロシアは待っていたかのように26日にはシリア北西部のラタキア基地に射程400kmの最新型S-400ミサイルを配備し6、12月には最新の空対空ミサイルを搭載した多用途戦闘機Su-34を配備した7

これによりトルコや有志連合国の活動を抑制し、シリア政府軍の支援態勢を強固なものにすることができたのである。その後の反政府軍の劣勢がそのことを証明している。シリアにおける挑発と威嚇によるRC作戦の一環である。

図5.S-400の射程 出典:本人作成


4.繰り返されるロシアのRC

(1) RC(反映統制)とは8
RCは、対抗者に対しあらかじめ準備した情報を送り、自国の望むあるいは優位になるような行動を、対抗者が自発的に選択したと思わせるように誘導し選択させるための情報戦の一つである。ロシアはソ連時代から40年にわたりこれを研究してきた。その手法は以下のようなものである。

ア.Distraction:作戦準備段階において、敵の致命的な地点に虚実の脅威を作り出し、色々な方針に沿った作戦の再考を強いて混乱や注意散漫を引き起こす。
イ.Overload:大量の過負荷、大量の矛盾する情報を敵に頻繁に送ることによって過大な負荷を課す。
ウ.Paralysis:重要点か弱点に対する特定の脅威認識を作り出すことによって活動を停滞させる。
エ.Exhaustion:敵に無意味な作戦の実行を強いて、それにより減少した兵力で戦闘に突入させることによって消耗させる。
オ.Deception:戦闘作戦の準備段階で敵が危険な地域に部隊を再配置するように欺瞞する。
カ.Division:敵が同盟の利益に反するような作戦を実施しなければならないと確信させることによって同盟内に分裂や対立を引き起こす。
キ.Pacification:敵の警戒を緩めるように、攻勢作戦ではなく事前に計画された作戦訓練が行われていると敵に信じさせるように和平工作を行う。
ク.Deterrence:敵に相手が克服できないほど優位であると思わせることによって抑止する。
ケ.Provocation:自国に優位なような行動を敵に取らざるを得ないように挑発する。
コ.Overload:準備段階において敵に過大な情報を処理させることによって過大な負荷を与える。
サ.Suggestion:法的、倫理的、思想的あるいはその他の分野において敵に影響を与えるような情報を提供することによって暗示にかける。
シ.Pressure:敵の国民の目に政府が信用できないと映るような情報を提供することによって敵を圧迫する。

(2) ウクライナ及びイラク情勢におけるRCの実行
戦争研究所の報告9によると、ロシアは2014年早期からのウクライナにおいて、米国と欧州同盟国が消極的な態度を自発的にとらせるために、このRC技術をかなり巧く使用した。その重要な手法は次のとおりである。

・階級章をつけない軍服姿の“リトル・グリーン・マン”の派遣を含む、ウクライナにおけるロシア軍の存在を隠したり不明瞭にしたりするために、その存在を否定し欺瞞する。
・恐怖をばらまき、クレムリンの目標は限定的であり、最終的には米国および欧州として受け入れられると彼ら自身に納得させ認めさせるために、紛争におけるロシアの真の目標と目的を隠蔽する。
・紛争へのロシアのかかわりの拒否し、紛争関係者というよりはむしろ利害関係パワーとしてロシアを認めるよう国際社会に要求する。そして1990年代のコソボによる一方的な独立宣言や2003年のイラク侵攻のような、同様の西側の行動を指摘することによって、ロシアの行動の表面上もっともらしい適法性を維持する。
・NATOと非NATO諸国の上空に投入できる巡航ミサイルや核戦力使用の示唆、ロシアの軍事能力と成功の誇張によって西側を威嚇する。
・公式メディア、ソーシャルメディアを通して、ウクライナについて物語を創作するために広大で複合的な世界的努力を展開する。

ロシアはこれらの手法を複合的に活用して、西側をウクライナに物質的に干渉させず、NATO内の意見の不一致を生じさせ、ロシア自らのために紛争への介入環境を整え、ロシアの目的を達成することに成功した。 この成功に味を占めたロシアは、反政府勢力に押され劣勢にあったアサド政権を支援するために、反政府勢力への空爆実施のための布石を打ち始めた。

プーチン大統領は、ロシアのシリアへの軍事介入について国民及び国際社会へ活発に偽情報を流している。プーチン大統領はシリアへの軍事介入の真の目的を隠すために、ISについて偽の物語を創り出し、国際社会を操るためにこの物語を利用している。9月28日には国連での演説で、ISと戦うための「幅広い対テロ連合」の創設を求めた。しかし、9月30日からの空爆は、ISを倒すためではなく、中東での米国の影響力を抑制するためのものであることは明らかである。プーチン大統領はシリアにおける真の目標を不明確にして、それによって米国とその同盟国が無意識にロシアの目的達成に加担するように操ろうとしている。重大な作り話は次の5つである10。これらの作り話は、ロシアの真の意図を隠し、同時多発テロに触発され対イスラム国への積極的対応を取るフランスの取り込み等、有志連合の分断を図るRCの有効な偽情報となる。

プーチン大統領は、ロシアのシリアへの軍事介入について国民及び国際社会へ活発に偽情報を流している。プーチン大統領はシリアへの軍事介入の真の目的を隠すために、ISについて偽の物語を創り出し、国際社会を操るためにこの物語を利用している。9月28日には国連での演説で、ISと戦うための「幅広い対テロ連合」の創設を求めた。しかし、9月30日からの空爆は、ISを倒すためではなく、中東での米国の影響力を抑制するためのものであることは明らかである。プーチン大統領はシリアにおける真の目標を不明確にして、それによって米国とその同盟国が無意識にロシアの目的達成に加担するように操ろうとしている。重大な作り話は次の5つである 。これらの作り話は、ロシアの真の意図を隠し、同時多発テロに触発され対イスラム国への積極的対応を取るフランスの取り込み等、有志連合の分断を図るRCの有効な偽情報となる。

・作り話1:ロシアはISを打ち破るために軍事介入した。
・作り話2:ロシアの空爆の目標はテロリストグループでる。
・作り話3:ロシアはシリアの反政府武装勢力とも働きたい。
・作り話4:ロシアの連合創設への取り組みはテロリズムと戦いのためである。
・作り話5:ロシアが加わった西側の協力は、イスラム国を撃ち破り、シリア内戦を終わらせるだろう。

さらにトルコのロシア機撃墜も、国際法上の問題はないとしても、RCの一つであるロシアの挑発に乗ってしまったといえるであろう。

最終的に、シリア中部の主要都市ホムス郊外の反体制武装勢力が支配してきた最後のワエル地区で停戦が成立し、武装勢力側が9日、撤退を開始した。「アラブの春」で反体制デモや武装蜂起が早くから拡大、「革命の首都」とも呼ばれた反政府勢力の要衝ホムスを政権が完全に掌握することになった11。これにりロシアは当面の目標を達成したのである。即ち、RC作戦によるロシアの勝利ともいえる。

5.おわりに

ロシアは嘘つき国家であるという認識が必要である。ロシアの指導者が自己の目的達成と権力の維持を求める限り、今後もさらにRC作戦を発展させていくであろう。

イスラム国対応でロシアは欧米に協力する姿勢を示しているが、欧米が否定するイランのアサド政権に対して、ロシアがその劣勢を支えるという構図において本当にISに効果的に対応できるかは疑問である。

もちろん、イスラム国が我が国に対してテロを起こすという可能性があるという中で、シリアやイラクにおけるISの動向も重要であるが、北方領土問題を抱える我が国としては交渉相手がこのようなRC作戦を用いるロシアが相手であることを理解し、軟な友好方針ではなく現実戦略に軸足を置かなければ、返還という国の目的は達成できない。

さらに問題は、ソ連の申し子である中国共産党はその手法を継承しており、いや中国本来の交渉術かもしれないが、モンゴル自治区の支配、チベットの支配、ウイグルの支配はすべてこの手法を用いてきた。現在も南シナ海における支配拡大のためのASEAN分断や米国干渉の拒否等はこの実践であろう。今後中国が東シナ海、特に尖閣領有の主張あるいは占拠においてこのRC手法、即ち、欺瞞と脅しを手段とした手法に備えた体制の確立が緊喫の課題である。


1「ロシア外相、シリア反体制派の一部も空爆対象と示唆」日経電子版、2015年10月1日。
2 “Russia’s False ISIS Narrative in Syria”, ISW, 2015.12.1
3 「トルコ、露軍機撃墜…シリア国境 露大統領「重大な結果」」、読売新聞、2015年11月25日。
4 「撃墜前、2回領空侵犯…トルコ計21回警告」、デジタル毎日、2015年11月28日。
5 2015年8月2日のグーグル画像。
6「露、シリア基地に最新鋭ミサイルを実戦配備 有志連合に圧力」、産経ニュース、2015年11月27日。
7 “Reports: Russian Su-34 fighters now carrying air-to-air missiles in Syria”, UPI, 2015.12.1
8 “Russia’s Reflexive Control Theory and the Military”, TIMOTHY L. THOMAS, Journal of Slavic Military Studies, 2004
9 “Putin’s Information Warfare in Ukraine”, ‘Russia Report’, Maria Snegovaya, ISW, September 2015.
10 “Russa’s False ISIS Narrative in Syria”, ‘Backgrounder’, Hugo Spaulding, 2015.12.1.
11 「アサド政権軍が主要都市ホムス全域奪還へ、反体制派と停戦」、産経ニュース、2015年12月9日。


本村久郎(もとむら ひさお)
1977年、防衛大学校卒業。航空自衛隊で、操縦者としてF-4EJ、F-15Jに搭乗。1985年、米空軍F-4戦技教官課程入校。1989年~1991年、独連邦軍指揮大学留学。西部航空方面隊司令部幕僚長、幹部候補生学校副校長、防衛大学校防衛学教育学群長を歴任。2010年、幹部学校教育部長をもって退官(空将補)。

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