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新時代への過渡期で混迷した本年

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 「光陰矢のごとく学成り難し」といわれるが、世界秩序の再構築と人類平和実現への道もまた成り難く、21世紀を迎えて早くも15年を経たが、未だに新時代の世界の構図さえも描けないまま、クリスマスのイルミネーションだけは年々華やかになったが、わが国の内・外を取り巻く情勢は暗い不穏なニュースが相次ぎ、不安と不安定さを抱えて本年も暮れようとしている。

 本稿が掲載される頃には、恒例となった本年度の世相を象徴する流行語大賞の発表もされるであろうが、本年の回顧を筆者としては、新時代に移行する過渡期における混迷で生じた、「鎹(かすがい~建材の合わせ目を固く繋ぎ止めるために打ち込む二本足で『コ』の字型鉄製の大きな釘のようなもの)」が外れ、「箍(たが~桶や樽の木片をしっかりとまとめて丈夫にするために嵌める鉄や竹製の輪)」が緩み、諸秩序が乱れた「狂乱の年」であったと総括しておこう。

 なぜなら、国際的には、ISの無差別テロ攻撃と、それに対応する関係諸国の足並みが乱れた無差別的反撃や、世界各地での領土や国境を巡る紛争、TPPは何とか一応の妥結を見たが、参加各国の今後の批准承認過程では波乱・再修正さえ余儀なくされかねないことなど、国内では、大手建築関係業者による豪華マンションの不適切な基礎杭打ち、旧村上ファンドの再度の株価操作疑惑浮上、首相が自画自賛しても、実体経済の確実な体質改善や成長路線への軌道乗せが実感できず、貧富格差が益々増大するばかりであること、何をどうすることかが一向に解らない一億総活躍によるアベノミクスの仕上げ、消費税率アップに伴う軽減税率の是非、諸トラブル発生ですっかり信頼を失くしたマイナンバー制度、再び不動産バブル破綻が懸念されること、幼稚な激情型凶悪犯罪の続発や言葉使いの乱れ、社会道徳性・精神文明の荒廃などといった「一億総白痴化」ともいうべき現象が示すように、まさに年初に予言した通り、新時代のあるべき姿を模索するも曖昧模糊として、未だその具体的な姿も、それに到る道筋も紆余曲折として見出せず、ましてや着実な成果などは期待し得ない未知・未完成、中途半端のままで、むしろ、何もかもが真理から逸脱し、好ましい政治や経済、自由化や市場主義、科学技術の進歩、省力化、人間の幸福の価値尺度など、あらゆる事柄の正しい目的の理解や、それを達成するためのアプローチ手法や対応などを履き違え、言行不一致のすり替えで、間違った道を歩み、「窮すれば通じる」が、逆に悪足掻き小手先の彌縫策的まやかし対応の積み重ねで、もうどうしようもないほどの矛盾と、糸が複雑に絡み合った状態の「窮すれば鈍する」といったマイナス悪循環の混乱に陥る「狂い」が生じ、だから何事も円滑に進まず閉塞し、このままでは、下手をすれば暴走・脱線しかねないとの危険性を感じるからである。

 こういったさまざまな複雑多様で難しい問題をすべて精算・処理しきらないと、世界が全人類が、日本が希求する恒久的な平和で幸福な新時代に生まれ変わることは出来ないが、それは10年や20年といった短期間で簡単に改められる程のたやすいことではなく、通常、過った状態を改め正すには、その状態を生み出すのに要した期間や努力や経費の3倍は必要とされるし、それには全世界各国、全人類の、厳しい地球全体の深刻な現状の正しい認識と、理念や意識の抜本的な改革、競争より協調・協力、目的・目標を一にした、焦らないで根気強い努力が要求されるものと覚悟して取り組まねばならない。

 本年は、戦後日本が再び重大な変化を示した年であったといえる。それは、安倍政権下で一強多弱の独裁政治体制となり、その多数の勢力に頼って一気に、①新憲法の否戦・平和主義、国民主権、自由・平等という基本的で崇高な3大理念が軽視され、憲法改正論議をして国民の納得と承認も得ず、為政者の解釈の仕方だけで都合よく大きな方向転換の舵を切って、集団的自衛のためという美名と屁理屈で、専守防衛の自衛隊を、武器を持って海外に派兵し、必要なら交戦も可能な軍隊にするという、再び実質的な軍事国家に変質・転換させたこと、②主権在民を尊重せず、アメリカの意向に従う米主権の属国化、政・官・財が主体、民衆従の行政となったこと、③自由・平等を、無視し、事実上、大企業や富裕者優遇、社会的弱者の福祉カット、同一労働をしながらも正規と非正規社員との待遇格差などの政策で差別化し、貧富格差の増大を助長するシステム、例えば消費税の軽減税率導入論議でも、所得の如何に係わらない一律扱いでは、購買額が高い所得者の減税感の方が強く逆不公平となるし、その穴埋め財源確保策として、法人関係税制の見直し案でも、赤字中小企業にまで外形標準課税をし、その分優良大企業など主体の業績に応じた法人税率の軽減処置というのでは、所得再分配の適正化とはならず、優越者優遇、弱者切捨てとなる意図的な階級・差別社会としたことの3点である。

 本年に起きた重大な事柄に関しては、先ず第1に、世界的にも国内的にも、世紀転換の節目での主役交代が着実に地殻変動的に進み、それを実感できるまでになってきたことである。

 たとえば、人類の意識変化では、財物的豊かさだけが幸福のすべてではないと気づき始めたことや、厭戦感の高まり、イデオロギーの面では、自由志保運主義と社会主義のいずれについても、その両極端な行き過ぎに批判的になって修正を求められるようになり、従来のような統制・締め付けが効かなくなってきたこと、主導国とその指導者の面では、20世紀を主導した超大国アメリカに対する信頼と、その威圧力が相対的に低下したこと、もう一方の覇権国であったソ連邦の崩壊で冷戦が終結したが、そのロシアが本年になって再び復権を目指し強気な行動を起こすようになってきたこと、今世紀に入って急躍進して日本を抜きアメリカを追い上げ、世界的影響力を持つに至った中国が、早くも成長の頂点から停滞・下降に転じたことが確実になったこと、事実に反した難癖をつけて日本苛めをし、それで国内統制力を強め、経済発展と存在価値を高めてきた中国や韓国が、本年後半からその方針を少しづつ改め、日本との友好回復、欧米と距離を置き、再びアジア重視にスタンスを移したこと、これらにより世界を主導し統制してきた突出したグレートな国や指導者がなくなるGゼロ状態となり、その覇権的主導の善悪は別として、世界の枠組みと統制と秩序が再び大混乱したこと、地球温暖化に伴う異常気象などで、地球の生態系がが狂い待ったなしの深刻な状態になったことなど、世界の基盤構造大変化である。

 第2は、こういった世界的秩序混乱の隙をついてIS国(注:ISを国家と表現することは、国家自治運営主体、国民、領土と国境、国際的認知などが未確定・不明で、国家としての基本条件を満たしいていないので不適切であり、無国籍者のテロ集団というべきもの、またイスラム国やその信者すべてが、好戦的なテロ主義との捉え方も間違いである)などによる卑劣なテロの暴挙が続発、拡大するようになったこと。

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