
人文社会系の学者たちが集まって、与党・自民党に対抗する政策の提言を目指す「リベラル懇話会」が設立され、メンバーの大学教授らによる記者会見が12月15日、東京・永田町の衆議院第一議員会館で開かれた。同会には、経済学や法学、社会学など人文社会系の研究者ら約40人が参加しており、民主党への政策提言を行うことを目的に活動する。
記者会見には、東京大学の北田曉大教授や東北学院大学の小宮友根准教授、東京大学の清水晶子准教授、モンタナ州立大学の山口智美准教授の4人が出席し、設立目的や活動内容を説明した。(文・写真:岸田浩和)
自民党の政権運営や政策への「強い懸念」が出発点
リベラル懇話会は、今年12月から来年1月にかけて、民主党の岡田克也代表や長妻昭代表代行、細野豪志政調会長らと約4回の勉強会、政策懇談会を実施し、意見交換を行う予定だ。そのうえで、2月に民主党に意見書を提出する。会見の冒頭で、清水准教授は「私たちリベラル懇話会は、特定政党としての民主党の応援団ではない」と前置きしたうえで、現在の与党・自民党による政権運営や政策に強い懸念を持つことを背景に集まった有志だと、自らの立場を表明した。政権を担った経験をもつ民主党が現在、与党の政策に不満を持つ有権者の受け皿になりきれていない状況を踏まえ、「自民党に明確に対峙することのできるリベラル政党として、野党・民主党の立場を明確にしてほしいとの願いで、政策提言を行う」と語った。
リベラル懇話会と民主党の関係性について、「私たちは、いわば『押しかけシンクタンク』のようなもので、民主党から依頼を受けて立ち上がったわけではない」と、清水准教授は説明する。民主党に対して独立性を保持している点を強調し、整合的で実行可能性のある政策パッケージを提示することを第一に考え、ときには批判的な見解も辞さない姿勢を示した。
また、民主党側もリベラル懇話会が提出する予定の意見書に拘束される理由はないとしたうえで、「私たちの調査、研究、意見書が、来たるべきマニフェストに反映されることを強く願っている」と結んだ。
「厚みのある社会」のための具体的な政策提言を目指す

山口智美・モンタナ州立大学准教授
たとえば、少子化問題については「従来のような根性論や精神論で語るのではなく、国際比較や実証データに基づいた現状を直視したうえで、効果のある対策とは何かを見つけていく」と語り、さまざまな領域にまたがった社会の問題を横断的に検討し、「厚みのある社会」という観点のもとで実現可能な解決策を考えるのが私たちの会の趣旨だと話した。
一方で、与党に反対する一部の論者による「経済成長はあきらめて、低成長の成熟社会で仲良くやっていこう」という見解にも疑問を唱えた。
北田教授は「本来、左派やリベラルというのは、豊かで幸福な社会を作るためにあるもの」と述べ、「いま世界を席巻しているアメリカ型の新自由主義に対抗できる距離感は必要だと感じるが、経済成長を真っ向から否定するわけではない」と、自分たちの目指す方向性を示した。

小宮友根・東北学院大学准教授