記事

名古屋の集団狙撃事件、密売グループに関係か

名古屋市で起きた集団狙撃事件が、イラン人密売グループに関係しているとの見方が出てきました。狙撃事件の現場近くで、注射器数十本がみつかったといいます。

覚せい剤密売人は、たいてい、「パケ」と呼ばれる小袋入りの覚せい剤と一緒に、「ポンプ」と呼ばれる注射器も取り扱っています。
使われるのは、糖尿病患者がインスリン注射に使う小型のものです。医療用に使われる正規の価格は1本当り20円弱程度ですが、もちろん患者以外の人が入手することはできません。
そこで、密売人たちはヤミルートで注射器を入手するのですが、その方法は外国から不正に輸入したり、生活苦の患者や医療ルートからの横流し品などを買い取ったりと、多彩です。

最近では、覚せい剤使用者の多くが、長年にわたって乱用を続けてきた人たちで占められていて、使用方法も、注射によるものが多くなっています。注射使用することで使用時の強い快感が得られることに加えて、この方法が最もロスが少ないのです。
いきおい、密売人も覚せい剤と注射器をセットで販売することが多くなります。夜の繁華街で注射器がまとめて見つかれば、密売人の痕跡かと疑われるわけです。
<ニュースから>*****
●名古屋の襲撃、被害者はイラン人 麻薬めぐりトラブルか
名古屋市中川区の市道で20日未明、外国人とみられる複数の男から集団暴行を受け、死亡した男性は20代のイラン人で、麻薬密売グループに関係するとみられることが愛知県警への取材でわかった。現場近くからは注射器数十本が見つかっており、県警は薬物をめぐるトラブルの可能性もあるとみて捜査を進めている(以下省略)。
2015年12月23日 朝日新聞
*****

●密売グループ周辺での暴力事件

密売人の縄張りや仕入れルートをめぐる抗争、密売によって転がり込む利益をめぐる内輪もめなど、薬物密売グループの周辺で暴力沙汰が起きることは、珍しくありません。殺人や監禁といった陰惨な事件も多発しました。後ろ暗い商売をしている密売人なら、被害を受けても警察に届けることはないとみて、狙い撃ちしたという、悪質な強盗事件もありました。

名古屋での狙撃事件も、これまでよくあった、密売グループ周辺の暴力事件のひとつかもしれません。
でも、私は、この事件の一報を知ったときに、ひと昔前、イラン人密売グループ周辺で暴力事件が頻発したころのことを思い浮かべていました。発生場所が名古屋だったことや、イラン人グループが関係しているといったこともあります。でも、最近の覚せい剤供給ルートに何やら大きな変化が生じているように感じていたところに、こうした事件が起きたことが、気になっているのです。

2006~2007年ころ、薬物密売に関わるイラン人グループの周辺で暴力事件が頻発したことがありました。警察庁の薬物・銃器情勢に関する当時の資料には、次のような記載があります。
「イラン人薬物密売組織は、薬物密売に絡む他組織との抗争、組織内のトラブル等から、過去には逮捕監禁、けん銃使用による殺人事件等を敢行しており、同組織の凶悪化・武装化が認められる。」
相次いだ暴力事件は、その都度、密売グループ間の勢力争い、指揮系統の変化による抗争などと説明されてきました。しかし、今思えば、日本の密売覚せい剤の流通が大きく変化した時期に当って、覚せい剤流通構造の再編成が進んでいて、その過程で、暴力事件が頻発していたのだと考えることができます。

1990年代後半から、日本の暴力団は覚せい剤の密輸密売への関与を深めていました。中国や北朝鮮から豊富に供給された覚せい剤の密流通を取り仕切ることは、暴力団にとって有力な資金源になっていたのです。
ところが、21世紀に入ったとたん、北朝鮮からの海上密輸ルートは遮断され、覚せい剤への取締まりを強化した中国からの密輸も、急速に困難になり、日本に流入する覚せい剤が極端に減少したのです。
この時期に、新たな覚せい剤密輸ルートを開き、日本に覚せい剤を密輸した主な勢力は、イラン人など外国人グループでした。2007年ころは北米大陸から、次いで中東やアフリカから、外国人グループの手を経て覚せい剤が密輸されるようになったのです。それまで、覚せい剤取引の主役だった暴力団は、しだいに、日本国内に密輸された覚せい剤を買い受ける立場へと軸足を移していきました。

さて、2015年末の現在、日本の密売市場には、世界規模の密輸ルートを経由して覚せい剤が流れ込んでいますが、最近の密輸摘発ケースのなかに、気になる動きがあります。世界でも最大級の覚せい剤生産地であるメキシコから、数十キロ、時に百キロを超える大量の覚せい剤が直接送り込まれているのです。
こうした密輸を主導している組織は、まだ明らかになっていませんが、どうやらこれまでの密輸ルートとは異なる要素が見え隠れしています。わが国に流入する覚せい剤密輸ルートに、また新しい要素が登場しているように思えてなりません。

ともあれ、構造変化が起きる時期には、既存組織の周辺で暴力沙汰が頻発しがちです。密売グループの不穏な動きが、市民社会を脅かすようなことがないよう祈らずにいられません。

あわせて読みたい

「覚せい剤」の記事一覧へ

トピックス

議論福島第一原発処理水の海洋放出は許容できるリスクか?

ランキング

  1. 1

    毎日の誤報「公正」は口だけか

    青山まさゆき

  2. 2

    NHK「しれっと」報道訂正に疑問

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  3. 3

    タクシーのマスク強制が嫌なワケ

    永江一石

  4. 4

    JALの旅行前検査 医師が「ムダ」

    中村ゆきつぐ

  5. 5

    トランプ氏の側近3人 暗躍失敗か

    WEDGE Infinity

  6. 6

    タワマン強盗の恐怖を被害者激白

    NEWSポストセブン

  7. 7

    橋下徹氏 毎日新聞は訂正すべき

    橋下徹

  8. 8

    鬼滅旋風で頭抱える映画配給会社

    文春オンライン

  9. 9

    田代まさし闘病で収監延期の現在

    SmartFLASH

  10. 10

    都構想リーク記事に陰謀の匂い

    青山まさゆき

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。