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ラグビー人気拡大の要諦はピッチの充実にあり - スポーツ・インテリジェンス【第41回】

松瀬 学=文

過去最多集客の名勝負

日本相撲協会の故・北の湖理事長は大相撲の人気回復は「土俵の充実」にあると言い続けていた。ラグビーも同じである。空前のラグビー人気の拡大は「ピッチの充実」が一番だろう。やはり人気と試合内容はリンクする。国内最高峰の『トップリーグ(TL)』の試合を見て、つくづくそう思った。

「お客さん、多かったですね」と、東芝の冨岡鉄平監督は漏らした。12日の東芝×パナソニック(秩父宮ラグビー場)である。TLのリーグ戦過去最多の2万138人が押しかけた。

「(観客が)多いなあ、と感じる瞬間は、バックスタンドの角が埋まっているときです。そこが空いているときは、もうひとつ、この試合は注目されなかったのかなって。埋まっていると、試合に関心を持っていただいたのだなって思います」

観客が入れば、選手たちのモチベーションも高まる。東芝には、日本代表主将のフランカー、リーチマイケルやスタンドオフの廣瀬俊朗、ロックの大野均ら、パナソニックにはフッカー堀江翔太やプロップ稲垣啓太、スクラムハーフ田中史朗ら、合わせて9人ものジャパンが出場し、からだを張った。

このほか、東芝のフルバック、フランソワ・ステインやセンターのリチャード・カフィ、パナソニックのスタンドオフ、ベリック・バーンズやセンターのJP・ピーターセンら、南アフリカ、ニュージーランド、豪州の代表経験者が、世界トップクラスのプレーを披露した。何より視野の広さと判断力が光った。

これがインターナショナルレベルだ

ハイレベルの攻防が続いた。ひとり一人のプレーの精度が高く、強く、前に出た。彼らの実績だけでなく、両チームとも、ふだんのハードワーク(猛練習)と周到な準備も見て取れた。だからオモシロかった。

試合は17-17のドローである。冨岡監督は「もちろん勝ちに行っての引き分けでした。ただ、選手たちに対しては最大限の賛辞を贈りました」と言った。

「日本ラグビーのスタンダード(標準)を引き上げるため、ワールドカップの終了後、シーズン中にもかかわらず、多くのジャパンの中心選手がメディアに露出して、がんばってくれました。でも、試合の内容が伴っていないと、ラグビーは衰退していきます。だから、国内の最高峰の試合をしようと思って、最大限の準備をしてきました」

リーグ戦序盤はチケット販売方法の不手際などの理由で空席が散見されたが、日本ラグビー協会やチーム企業側の改善・努力もあって、無駄な空席も無くなった。

人気と強化が好循環にはいった。国際経験豊富なパナソニックのロビー・ディーンズ監督は「インターナショナルレベル」という言葉を繰り返した。

「素晴らしい2チームによる、最高の試合をお見せすることができたんじゃないでしょうか。日本のラグビーが、高度なワールドラグビークラスになってきている。インターナショナルのレベルになったと思います。インターナショナルの選手たちがグラウンドに立って、インターナショナルレベルの試合をお見せすることができました」

とくにコンタクトエリアの攻防は見ごたえ十分だった。ボールを持った選手、サポートプレーヤーの精度、ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)に入る、入らないの判断……。試合では、ターンオーバー(ボール奪回)の応酬となった。

さらなる高みへ求められるディシプリン

評価したいのは、この引き分けに、選手たちが満足していない点である。パナソニックの堀江主将は課題を口にした。

「最後の最後までどちらに転ぶかわからないゲームだった。ここからは、個人がどれだけうまくなれるか、も大事になる。個人の強さが大切になってくる。もっと、チームの強みを出せるよう、意識して練習していきたいと思います」

ラグビー人気の凋落を経験しているからだろう、スタッフも選手も人気拡大に必死なのである。ただ、好事魔多し、という言葉もある。こういうときはグラウンド外のディシプリン(規律)も重要となろう。

老婆心ながら、人気に決して浮かれてはならない。注目されている今こそ、言動には気を付けよう。よからぬ事を起こさないためには、何よりトップリーガーひとり一人が自覚と誇りを持って、社会的規範を遵守することである。

つまるところ、ラグビーをラブする者たちにとって大事なことは、ピッチ内外のディシプリン、これである。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)、『新・スクラム』(東邦出版)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。

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