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女性戦闘機パイロット誕生で浮かび上がるもう一つの課題

戦闘機にも女性パイロットが登場するそうです。
戦闘機に女性パイロット 防衛省、初の起用へ 3年後めどに任務に」(産経151111)

 防衛省は、自衛隊で女性の登用拡大を図るため、自衛隊戦闘機のパイロットに初めて女性自衛官を起用する方針を固めた。安倍政権が掲げる「女性活躍推進」の一環で、週内にも正式決定する。政府関係者が11日、明らかにした。

 これまで自衛隊の輸送機や哨戒機などのパイロットには女性自衛官を配置していたが、戦闘機は重力による体への負担が大きく、妊娠や出産などで長期間任務に当たることができない可能性があることから、女性の起用を見送ってきた。


諸外国の状況、時流を考えれば当然ですし、大きな理由であった妊娠の問題についても、晩婚化と初産年齢の上昇を考えれば、問題はクリアされたと考えるべきです。
35歳以上の初産婦による高齢出産が増えていますが、戦闘機パイロットとしてのピークを過ぎてから妊娠しても、それほど危険性が高い訳ではないからです。

とまれ、空自が戦闘機への女性パイロット採用を渋っていた理由は、報道されている体への負担とパイロット適齢期に妊娠出産で戦線離脱する懸念だけではありません。

課題として、女性を受け入れるための設備投資が必要とする指摘もあります。
空自、戦闘機へ女性を登用 その利点と課題 遅れていた日本」(乗りものニュース151122)

女性用フライトスーツや長時間の任務に必要となる小便用ピドルパック、サバイバルベスト、ヘルメット、マスクなどの装備品、さらには地上の更衣室、産休など福利厚生のための制度の用意に至るまで、多くの課題を解決しなくてはなりません。


しかし、これらの問題は、既に女性を乗艦させている護衛艦などに比べれば、大した事はありません。

また、女性の進出に良い顔をしないパイロットが、阻んできたという意見もあります。
確かに、危険な任務に就いているのはパイロットだけだという変な自負を持った方も、過去には多かったのも事実ですが、それだけではない現実的な問題が、背景にあります。

それは、自衛隊のCSAR能力が高くないという現実です。
CSAR(シーサーと読む)とは、wikipediaによると、次の通りです。

戦闘捜索救難(Combat Search and Rescue:CSAR)は戦時下において、前線もしくは敵の勢力圏内に不時着した航空機の乗員を救出することである。
主に特殊部隊が行う。

不時着した乗員に対する敵方の捜索以前に救出することが求められ、作戦には救出を阻止する敵に対する上空からの掃討(多くの場合機銃掃射)も含まれる。
戦闘捜索救難任務を行う航空機は主にヘリコプターで、夜間や低空における飛行能力を強化しているほか、空中給油能力を備えるものもある。

日本では航空自衛隊の航空救難団救難隊がその役割を担っている。


航空自衛隊のCSAR能力は、近年まで完全なゼロでした
救難隊のUH-60Jには、機銃さえ装備されておらず、救助だけを想定していました。

それは、日本が全周を海に囲まれており、専守防衛のドクトリンを採用していることもあって、戦域は精々洋上であるため、救助のリスクは救難機が敵戦闘機から撃墜されるくらいだったためです。

ですが、策源地攻撃も個別的自衛権の範疇であると解釈されただけでなく、昨年には集団的自衛権の行使も容認され、戦域が拡大する可能性が出ています。

つまり、撃墜されたパイロットが、敵勢力圏内に降下する可能性も出てきたためCSAR能力を高めなければならないという議論が起こりました。現在では、救難ヘリに、5.56mm機関銃MINIMIも搭載されています。

ですが、この程度でしかありません。
北朝鮮まで飛行するための空中給油用プローブや、チャフ/フレア・ディスペンサー、ミサイル警報装置は一部の機体にしか装備されていません。

この状況で、女性戦闘機パイロットが、北朝鮮上空でベイルアウトしたらどうなるか……
救出は、米軍に頼るしかありません。
米軍が動いてくれれば良いですが、動いてくれるとは限りません。

女性パイロットを救出できないという状況は、心理的に受け入れがたいものがあります。
世論においても、そうでしょう。
そうなると、非難はCSAR能力が不十分な自衛隊に向いてしまいます。

女性戦闘機パイロットを誕生させる以上、防衛省・空自はCSAR能力の向上に向けて、検討を行っているはずです。
ですが、これはかなり大変な道のりとなります。

前掲wikiには、「主に特殊部隊が行う。」とありますが、現状の救難隊は、高い飛行技術を持ったパイロットと屈強なメディックがいるものの、特殊部隊ではありません。

米空軍では、パラレスキュージャンパー(PJ)と呼ばれる特殊部隊要員がいます。
敵性地域に降下したパイロットを救出するため、パラシュートで降下し、少数で戦闘を行いつつ、捜索・救難を行います。そのため、地上での戦闘能力は一級の物が必要になりますし、航空機を誘導するため、航空や通信にも熟知していないとなりません。さらに、医療スキルも必要です。
彼らの育成には、多大な時間と費用を要します。パイロット並です。

また、敵性地に彼らを投入、回収するためには、UH-60Jのような小型のヘリだけでは足りない状況が多く発生します。
米空軍の次世代戦闘救難ヘリCSAR-Xは、CH-47から派生したHH-47になる可能性がありますし、嘉手納にいる第353特殊戦航空群は、救難用途に使用される機体として、MC-130Pなどの固定翼特殊作戦機を保有しています。

日本が、本気でCSARを行うなら、こうした装備を、もちろん米軍ほどではないにせよ、装備してゆかなければなりません。

こうした装備・部隊を作り上げることは、そう簡単にはできないでしょう。

そのため、戦闘機に女性パイロットを搭乗させるとしても、そうした危険性の高いミッションには投入しないという運用をせざるをえないかもしれません。
しかし、現場でそんな配慮をすることは大変ですし、そんな扱いをされる彼女たちにとっても、屈辱でしょうし、心苦しいことになるでしょう。

課題の存在は明らかですが、解決の方向は、今のところ見えてきません。
注目して行きたいと思います。

私としては、大変な道のりであても、こうした能力を付けるべきだと考えています。
救難能力あるなしでは、その家族も含め、パイロットの士気にかかわります。
そして、それ以上に、パラレスキュージャンパーは、地上戦闘だけでなく、航空機の運用にも詳しいため、ノドンハントを行うなうための誘導なども可能です。イラクやアフガンでも、空港の占拠などの作戦において、航空との連携能力の高さから投入された実績があります。

CSARについては、なかなか分かり難いと思いますが、いい映画があります。

BAT★21

エネミー・ライン


この二つはオススメです。

なお、余談になりますが、今年2月に、この戦闘機パイロットへの女性登用を予測していた方もいらっしゃいます。
日本でも「女性の戦闘機乗り」は生まれるのか」(東洋経済150227)
慧眼ですね。

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