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軽減税率は購読者数減の解決につながらないー軽減税率という「泥縄」にしがみつく新聞メディア

 12月16日、与党の税制改正大綱がとりまとめられた。このうち、消費税率引上げに伴う負担増に関し、低所得者対策の一環として新聞、より正確に言えば、週2回以上発行される定期購読契約が締結された新聞について、軽減税率が適用されることとされた。新聞への軽減税率の適用がなぜ低所得者対策なのか、全く釈然としない。

 新聞協会はかねてより新聞への軽減税率適用を訴えてきた。つまりは、新聞の購読者数の減少、広告収入の減少で財政的に厳しくなったところに、消費税率の引き上げでさらなる減収に繋がることを危惧したからということなのであろう。考えてみれば新聞メディア、特に大手は消費税増税キャンペーンには乗っていたのに、自分のこととなると軽減税率とは、ずいぶん都合のいい話と思われても仕方がない。

 新聞協会は、欧州を例にして、諸外国においては新聞については軽減税率が適用されていると主張してきている。確かに、欧州諸国においては、例えば、フランスは2.1%、スウェーデンは6%といったように、10%を超える付加価値税に対して、新聞について軽減税率を設けている。イギリスに至っては0で、軽減ではなく非課税である。(ただし、ブルガリアやスロバキアのように新聞について軽減税率を適用していない国もある。)

 しかし、ここで考えなければいけないのは、そもそも軽減税率の適用品目は国によって異なり、低所得者対策ということであれば、生活必需品が対象に含まれて当然だが、今回の我が国の場合は含まれていないということである。欧州諸国においては、何も新聞と生鮮食料品のみを軽減税率の対象としているわけではなく、他の生活必需品と一体で検討した結果そうなっているだけである。

 また、欧州諸国で新聞を軽減の対象としたり、非課税としたりしている背景は、メディアの多元性の確保といったことがあると思われ、低所得者対策とは観点が異なるように思う。別の言い方をすれば、民主主義の発展に資する、情報源の多様性の確保と、メディア間の公正な競争の担保という観点からそうなっているということのようである。

 さて、今回の新聞への軽減税率の適用、新聞業界にとっては「藁をも掴む思い」ということなのだろうが、その藁を掴んで、藁しべ長者のごとく、新聞購読者数の増加を見込むことができるのだろうか。
 
 端的に言って、増加するとは思われない。新聞の購読者数は年々減少する傾向にあり、特に若年層でその傾向が著しい。(もっとも、元々若年層での購読者は少ないのだが。)税率8%でそうなのだから、軽減といっても言い方を変えれば税率据え置きなのであり、価格が安くなるわけでもないところ、そんなことで読者が増えるとは到底思えない。(もっと言えば、低所得者は若年層に多いようであり、その若年層において新聞購読者数が少ないのに、低所得者対策とは、ますます根拠に乏しい結論であると言わざるをえない。)

 そもそも、メディア接触や情報コミュニケーションの在り方が変化しているのであるから、通信と放送の融合といった実態も踏まえて、新聞は抜本的な業態変革を図ることに注力すべきであると思う。軽減税率に血眼を上げている暇はないのではないか。(新聞の役割が完全に終わったとは言わないが、新聞社の役割の新しいカタチを模索すべきであろう。)

 今回の軽減税率のもう一つの論点として、根拠の薄い軽減税率の適用と引き換えに、政権への協力を暗に約束させられたのではないかということがある。単純に考えて、軽減税率のような大きなメリットが与えられる一方、いつその適用から外されるかという緊張感が生まれれば、自ずと論調は政権寄りになり、メディアの監視機能やチェック機能は十分に機能しなくなることは容易に想像できる。もっとも、近年では、先にも触れたとおり、情報接触は多様化し、新聞によって意見が左右されるということはなくなってきているのではないかとも思う。特にネットメディアが発展している昨今においては、新聞が権力チェック機関としての役割を十分に果たせなくとも、他のメディアがこれに代わることは十分可能である。そうなれば新聞離れは更に進むことにもなろう。(自分で自分の首を絞める、ということになるか。)

 大切なのは、メディアはどうあれ、ジャーナリズム、ジャーナリストであることであろう。

 軽減税率という「泥縄」を掴んだ新聞メディア、溺れて沈む前にこうしたことに気づくのだろうか?

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