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同性愛を「気持ち悪い」と思うこと

「同性愛は異常だ」という発言をする人は、ある性愛の有り様が自分にとって気持ち悪い、ということを根っこにもっているんだろう。

 ヘテロセクシャルでも、たとえば自分の上司(疲れた中年のおっさん)が自分の職場の経理の女性といちゃいちゃしたりセックスしている姿を想像するのは「気持ち悪い」と思うことがある。あ、いや、別に「経理の女性」というのはあくまで一例であって、「なんで経理の女性なんだ」とかつっこまないでくれ。一例ですよ一例。「経理の女性」でなくても、その上司が同年代の妻とセックスしている姿も想像すると「気持ち悪い」。

 ぼくは、自分の多くの身近な年輩の男女のセックスを具体的に想像すると「気持ち悪い」。ぼく自身ももうすぐその年齢にさしかかるというのに、そう思ってしまうのは、何だかなと思うのだが、そう思ってしまうこと自体はまあ仕方ないんじゃないのか。*1

 性的な嗜好というものは、とても敏感なものだから、自分の嗜好とちょっとでも外れていたら、それを「気持ち悪い」と思うのは、それ自体はやむをえない。

 どんな人でも「気持ち悪い」と感じる、自分にとって地雷のような性のあり方はいっぱいあるはずだ。たとえば「セーラー服の女性とセックスするのは子どもとセックスしているようで気持ち悪い」とか「メガネをかけたひょろひょろの男性とセックスするのは想像できない」など。

リンク先を見る 身近な人全般のセックスを想像したくない、という人もいる。秋山はる『オクターヴ』では、主人公の雪乃が、かつていっしょに歌手デビューした友人(奈緒)が出ているAVを見て吐くくだりがある。

奈緒ちゃんの乳首の色なんて
知りたくなかったよ……
(2巻p.52)

リンク先を見る ヤマシタトモコ『HER』にも、「しりたくねーよ、ともだちの下半身」(p.144)という描き込みがある。

 「気持ち悪い」というスポットは、だれにでもそこかしこにあるはずなのだ。

 そして、「同性愛」という性愛の姿も、その一つであることは十分にありうる。


 そして、ふだん職場の年輩男女に接しているときには、彼・彼女らの性愛の姿については、ぼくらは想像しもしない。当たり前である。想像したくないし。つまりぼくがふだん接する人たちの大半は、彼ら・彼女らが性的な存在であることは伏せられている。伏せられたままつきあうのである。いちいちそのセックスやいちゃいちゃぶりを想像したりはしない。


 ところが、こと同性愛者にかんしては、性的存在であることを、ことさらに思い出してその情報をつけて思い起こそうとする。また、話題にする。


リンク先を見る 岡崎京子『リバーズ・エッジ』で主人公の若草ハルナが同性愛者である山田にセックスやキスのことを興味本位で聞き出そうとし、逆に山田からハルナのセックスやフェラチオのやり方について具体的に質問し返されて、ハルナが真っ赤になってしまう。そして山田から、

失礼だよ
ゲイだからって
すぐセックスの話をもち出すのは
若草さんだっていきなり聞かれるのはヤでしょ?
少なくともぼくはいやだ
ぼくは話したくない(p.134)

と告げられるシーンがある。


 同性愛者と聞くだけで、彼・彼女らの性的な側面を思い起こすのだ。それは異性愛者に対する時は、ほとんどないことである。*2


 ある地方議員が同性愛者を「異常だ」と口に出していったそうであるが、たしかにその地方議員にとっては本当に「気持ち悪い」ことだったのだろう。ぼくが上司のセックスを「気持ち悪い」と思ったように。

 問題は、それをたくさんあるはずの、自分にとって「気持ち悪い」性愛の姿の一つであると認識せずに、同性愛というものが人間のあり方としてあたかも「異常」であるかのような認識と結びつけてしまい、あまつさえ、それを口にしてしまったことだった。


 ぼくは、「同性愛は異常だ」と言う人や、口に出さなくてもそう思っている人にとって、ネックになっているのは、「気持ち悪い」という感情が固く頭の中に根を張っていることだと思う。「いや、実際気持ち悪いんだもん」と。これに対して「異常だというのはおかしい」という批判だけでは、「気持ち悪い」という感情が厳然としてあることに対処できない。「口に出したのがいけない」という批判も、やや上滑りである。もちろん口に出したのはいけないが、口にしなければ「異常」だと思っていていいのか、ということになってしまう。「気持ち悪い」という意識はいっこうにかまわないが、「異常」であるという意識はおかしいのである。

 実は自分の中にたくさんあるはずの「いま自分にとって性的感情をそそらない性愛のありよう」の一つにすぎないことを理解してもらう(もちろん、「気持ち悪い」ということも「異常」ということも口に出すべきことではない)ことこそがポイントではないのだろうか。



*1:「それは若い女性(非高齢者)しか性的価値がないという歪みが入っていないか?」と問われればそういう歪みが自分の性欲の中に入っているんだろうね。

*2:筒井康隆の小説『七瀬』シリーズでは、相手の心が読めるテレパスで、しかも美女である七瀬が、彼女を見たたいていの男性の頭の中ですぐ裸にされているのに遭遇する。男性が若い美女を見て「胸がでかいな」「セックスはどうなのかな」と思うことは日常的にありうる。

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