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ベンチャー政党は、なぜ「直接、国民に聞こう」と考えたか - 塩田潮の「キーマンに聞く」【18:前編】松田公太(日本を元気にする会代表)

安保関連法案では与党にすり寄ったのではない

【塩田潮】参議院議員5人の「日本を元気にする会」は、今年の通常国会での安全保障関連法案の審議では、法案修正を唱え、最終的には修正は実現しなかったものの、主張した修正案を安倍晋三内閣で閣議決定に持ち込ませました。

【松田公太(日本を元気にする会代表・参議院議員)】国論を二分したテーマでしたが、私は集団的自衛権の一部行使容認については基本的には賛成だったんです。ところが、5月に国会に提出された法案を見たら、たとえば存立危機事態という新しい概念をつくったり、ホルムズ海峡での掃海などが可能になるという内容で、ちょっと憲法の範囲を超えていると思い、反対しなくてはならないと考えました。

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松田公太氏(参議院議員・日本を元気にする会代表)

党内も反対と賛成に割れていました。それでネット番組をつくったのです。われわれは賛成論と反対論の両方の有識者を呼んで議論する内容にしましたが、その過程で、法案修正というアイデアが生まれた。衆議院での強行採決を見ていて、参議院で何ができるのかということになり、国会として歯止めを、といった話になったとき、新党改革の荒井広幸さんが「事前チェック」と言い出した。入り口は同じ考え方でしたから、われわれは荒井さんのところに行って「一緒に」という話をした。そこから動き始めたんです。

うちの党にも「廃案しかない」と言う人もいましたが、どこかが修正をかけないと、法案は歯止めのないまま通ってしまう。われわれでやろうという話になり、「修正します」と発表した。与党側は初め「付帯決議で納得してくれ」と頑なに言っていたけど、「閣議決定に」というところまで持ち込んだので、それでよしとした。閣議決定では、修正案をそのまま使うことになったんです。

われわれはもともと是々非々主義で、修正案も是々非々だったわけです。周りから与党にすり寄ったとか、安倍政権に与したとか言われましたが、全然そういう気持ちはありません。あれは絶対に歯止めになっています。そういう思いでやったわけです。

【塩田】日本を元気にする会は、旧みんなの党の解党後、2014年12月に結成されましたが、なぜこの党名に。

【松田】結党の前、無所属のまま参議院で会派をつくり、私が会派の代表となりました。会派結成のとき、インスピレーションで「楽しくやろう、日本を元気にする会」と言いましたが、それが結党で党名をどうするかというときにみなさんから「意外によい。噛めば噛むほどいい感じ」と言われ、「日本を元気に」は理念としても共通していたこともあり、そのまま政党名としたんです。

実は、私が2010年に参院選に出馬したときに掲げていたキャッチフレーズが「楽しく元気にジャパン」でした。海外で育って、日本はちょっと変わった国という間違った印象を持たれていることを感じることがあり、非常に残念だったので、日本は素晴らしい国だと打ち出したかったのです。また、その頃は民主党政権で、デフレが悪化し、首相が毎年、交代する状況だったので、日本を元気にしたいという気持ちも強くありました。

【塩田】松田さんが党首になったのは。

【松田】みんなの党解党のとき、私は中立的なポジションにいて、解党時の代表の浅尾慶一郎さん(現衆議院議員)、初代代表の渡辺喜美さん(元行政改革担当相)の両方と話ができるのは松田さんくらいしかいないから交渉してほしいと言われ、両者と話し合いを行いました。ですが、埒があかない状況に陥ってしまっていたため、私からみんなに「解党しかない」と切り出したのです。そして、政党助成金も残った分は全部、国庫に返納を、という話でまとめようとしたのです。最終的に渡辺さんも「わかった」と言って、解党となりました。その流れから自然に代表に、となったんだと思います。

国論を二分するテーマは国民に聞く

【塩田】結党の際、党として打ち出したい独自の考え方や路線、姿勢があったのでは。

【松田】私がずっと温めてきたのは「直接、国民に聞こう」という政治です。国論を二分するようなテーマは国民と話し合いながら進めていくという考え方で、政党をつくるならこれをやりたい、とみなさんに説明しました。

直接民主型の政治ですが、何でも国民に丸投げして決めてもらおうということではありません。既成の政党は、党議拘束などで、黙って言うことを聞けと言って、むりやりトップダウンで収めようとする。自民党のように年功序列制度ができ上がっている党ではみんな従いますが、ベンチャー政党にはそういう仕組みや構造がない。でも、みんなで絶対に守らなければならないものがなければ党としてまとまりませんので、直接民主型政治を唱えました。

【塩田】日本は代議制民主主義です。直接民主型をどんな形で取り入れますか。

【松田】もちろん元気会は党としての政策を持っており、結党のときに22の基本政策を発表しています。ですが、重要な政策や法案については、国民に直接、問うてみる。議員はネット番組やパンフレット、ホームページ等で自分の考えを訴えて国民に全部、吟味してもらう。それによって議員間で五分五分のものが六対四や七対三になるかもしれない。われわれはその結果を守って、国会の本会議場でその比率どおりに投票するという仕組みです。

国論を二分するようなテーマについても同じです。私は、みんなの党時代に、この発想に基づいて、原子力発電所の問題で国民投票法案をつくりました。首相公選制も提案しました。自民党が今、ネットで候補者公募を、と言っていますが、その取り組みも以前にみんなの党で実施済みです。ネットで公募し、ネットテレビで面接、街頭演説、討論の風景を全部見てもらって、最後に一般の人たちの投票で公認候補を決めるという仕組みを作り、実行しました。

直接民主主義的な発想へのチャレンジは、みんなの党の時代からずっとやってきました。今までのような国会議員だけの内輪の闘いよりも、外に向けて発信し、みなさんと一緒に考えて決めてもらうほうがよっぽどすっきりしています。

【塩田】直接民主主義的な手法をと思ったのは、何がきっかけだったのですか。

【松田】タリーズコーヒーの経営者だった時代からずっと首相公選制を考えていました。アメリカで大統領選挙の盛り上がりを肌で感じながら育ちましたが、国のトップを国民が決める形を日本でも実現したいと思っていた。そこから発展して、原発を始め、重要なことは国民と一緒に考え、決めたほうがいいのでは、という気持ちが芽生えてきました。

今はインターネットの力もあります。日本のように教育レベルが高い国では「集合知」を活用できるのでは、ということに思い至ったのです。「集合知」という考え方は、実はタリーズ時代から経営者として使ってきました。当時、社長一人の脳味噌なんてたかが知れている、みんなで頭脳を合わせようと訴え、「集合天才」という言葉をつくって社員に説きました。その流れもあって、「集合知」で最後は正しい答えが導き出せるのではと思ったのです。

加えて、リーダーシップだけでなく、フォロワーシップも重要で、首相公選制でトップを決めたら、自分たちで選んだのだから、自分たちで盛り上げ、みんなでその人を守ろうという思いを持つ。それが重要だと思いました。

インターネット政党はあり得るのか

【塩田】政党政治が大衆迎合主義に陥るのでは、という点を懸念する人もいます。

【松田】ポピュリズムみたいなことはあり得ると思いますが、ネットの会員数が増えれば増えるほど、そのリスクが減ると思います。また、政治家が意見の違う人たちに対抗できるように、一人一人が信念を持って議論をできるようになればそうはなりません。

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【塩田】一方で、それなら代議制民主主義は不要では、という議論も出てくるのでは。

【松田】それはまったくありません。国会議員は自分が信じる政策や法案をわかりやすく国民に説明する能力が必要とされます。その前に理解する能力が必要ですね。実は、既存政党の国会議員は党議拘束があって自分で判断しなくてすみますから、法案を理解しない人が多いですよ、本当に。そういうこともあり、われわれは結党以来、まず参議院の党議拘束をなくしたいと言ってきました。

【塩田】一方で、インターネット選挙の解禁をずっと主張していますね。

【松田】実はそれは全部つながっているんです。出馬したときから、民主主義国家で選挙期間中、インターネットが使えないとは、どういう国だろう、と仰天しました。こんなことはあり得ないと思って、インターネットの解禁を公約の一つにしたのです。当選後、議員立法でやっと解禁まで持っていったんです。私はさらにこの先、なんとかインターネット投票を実現したいと思っています。

【塩田】ヨーロッパにはインターネット政党というのがあり、最初に著作権上の海賊行為の解禁を唱えたことから「海賊党」と呼ばれていますが、政府のインターネットへの規制に反対するところから出発した海賊党をどう見ていますか。

【松田】ドイツで国政選挙に打って出て、一時期は支持率13%で第3位になるなど、すごく勢いがありましたが、今は弱くなっています。期待がしぼんだ理由は、一つは国政政党になれなかったこと、もう一つは主要政策がすべて丸投げだったことです。もしかしたら、政策も法案も真逆のものが可決されるかもしれない。国民からすると不安だと思います。ですが、海賊党は、インターネット政党があり得るというその可能性を打ち出した点は歴史的な意義があると思います。

実は国政政党としてその仕組みを入れているのはわれわれが世界初です。今後、われわれが議員50人規模になり、100 万人くらいの会員を確保すれば、重要な意味を持ちます。「ミニチュア国民投票」を頻繁にやる形になる。世論調査はせいぜい1000~2000人の調査です。もしわれわれが100 万人規模の会員を持てば、大きなムーブメントになると思います。

【塩田】100 万人というのはネット会員みたいなものでしょう。それは党員ですか。

【松田】党員です。われわれの場合は無料で、しかも他党の党員でもいいと言っています。自民党は党規約に重複入党禁止を書いてありますので、まじめにやるのであれば、ダメでしょう。ですが、ネットですから、名前も本名が出るわけではありません。

松田公太(まつだ・こうた)
参議院議員・日本を元気にする会代表
1968年12月、母の故郷、宮城県塩竃市で生まれる(現在、46歳)。水産会社勤務の父親の転勤で5歳のときにアフリカのセネガルに渡り、10歳で帰国。翌年から高校まで、アメリカのマサチューセッツ州レキシントンで過ごし、86年に筑波大学国際関係学類に入学。卒業後、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行。95年に友人の結婚式でボストンに出かけたとき、スペシャルティコーヒーと出合う。96年に三和銀行退社。97年にタリーズコーヒーと独占契約し、東京・銀座に1号店を開店。98年にタリーズコーヒージャパンを設立して社長に就任。2006年に伊藤園に株式を売却し、07年に社長退任。10年の参院選にみんなの党の公認で東京選挙区から当選。14年にみんなの党の解党で無所属に。その後、参議院の会派「日本を元気にする会」を結成し、15年に新党「日本を元気にする会」を結党して代表兼幹事長に就任。著書は『すべては一杯のコーヒーから』『仕事は5年でやめなさい。』など。

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