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「民泊」:”違法”状態のまま産業化も進む米国

民泊とは、旅先で安く泊まりたい人に、家主が余ってる部屋を提供して「生活の足し」となる程度の報酬を得る形態です。その旅行者と家主をネット上でマッチングさせるというサービスで大ブレークしたのが米国発のAirbnbです。上場前ですがその市場価値はざっと3兆円とも評価されるほどです。

なぜAirbnbに関心を持ったかというと、つい先日の7日に、東京・大田区で「民泊条例」が成立したからです。今後、各地で広がるかもしれない自治体の規制が、すでに日本でも空き部屋登録が2万件ともいうAirbnbと正面衝突するおそれはないのか。個人と個人を結ぶネットに行政が介入する影響はどうなのか。その結果、観光立国推進のためにホテル不足解消を目指すという狙いに水を差さないかーーーー

というようなことを漠然と思っていた時に、たまたま、ほぼ同時期に、Airbnbがニューヨーク市の空き部屋登録リストについて詳細なデータを記者団に公開し、それを報じる一連の報道に接して、問題の一端がクリアになりました。

「民泊」が、一部では「生活の足し」というレベルをはるかに超えて、「グレーなビジネス」となり、周辺にサポートビジネスが続々と誕生、「産業化」しているということです。

不勉強で、今回初めて知ったのですが、ちょうど1年前に、ニューヨーク州のシュナイダーマン(Schneiderman)検事総長が<Airbnb in the city>というレポートを まとめていました。ニューヨーク市(NYC)でAirbnbは爆発的に増えているが、その72%は州法に違反している、と断じる内容です。

そのレポートの脚注によると「30日以 下のprivate roomのレンタルは持ち主が居住している場合は合法」とあり、多くはこの規制に反して、ホスト(家主)が自ら居住しない別物件を短期貸しをしているから違法と見たので す。

こうした違法行為の横行が、ただでさえ厳しいNYCの住宅事情を悪化させ家賃高騰につながっている、といった批判が高まったため、Airbnbは対抗手段として「典型的な NYCのホストは自分のアパートの余分な部屋を生活の足しになれば、と思って貸しているのに過ぎないのだ」という主張を裏付けるために、データを記者団に公開したそう です。今月1日のことです。

これを報じたNYTimesは、「Airbnbは違法ホテル運営者ではないことを当局に納得させるためにデータを公開した」「過去1年で、ホストたち の全収入の75%は1部屋か2部屋を登録しているホスト達による」「典型的なホストの収入は年間5110ドル」などと淡々と書いています。

しかし、HuffingtonPostは「ホストの64%、約3.8万人の稼ぎは年間1万ドル以下なのは確かだが、約1万のホストは1−5万ドルを稼いだ。そして127人は10万から35万ドルに達している」と書き込みました。

またFastCompanyの記事ではさらに踏み込み「ホストの90%は1部屋だけだが、6%は2部屋、4%は3部屋以上を登録しており、その4%のホストが全収入の24%を占めている」と分析しました。一部では法をかいくぐる「もぐりホテル業」が組織化されつつあるということを示唆したのです。

そして極め付きはBloombergBusinessの<The Rise of Airbnb’s Full-Time Landlords>(Airbnbの家主専門業者の勃興)という記事。これには、 そうしたもぐりホテルビジネスを実際に行っている具体例がいくつも紹介されています。そのうちの一人はサンディエゴで8軒の家を所有、6軒を家主に代わって運営し、年間50万ドルを稼い だそうです。そしてこう言います。「今はプロだらけになって競争が大変。より大きな会社には巨大なチャンスがあると思う」

そして、米ホテル宿泊協会(American Hotel & Lodging Association)の副社長にこう言わせています。「投資家にとってはホテルに投資するより有利だ。なぜなら、税金を払わないし、安全や立地に関する法律に従う必要もない」「現行法は無視されている。抜け穴の元で運営されているんだ」 日本でいえば旅館業法が骨抜きになっているということですね。

そうした何軒も何室もビジネス物件を所有するホスト向けにサポートビジネスも次々誕生しています。ホストが需給を考えて料金を自在に変えられるBeyond Pricing、タオルやシーツを取り替え、部屋の状態を点検・報告するGuestprep.com、登録物件の説明文を書くプロのトラベルライターを紹介するAirspruce、近所のカフェで鍵の受け渡しをするKeycafeなどなど。

日本にもそうしたサポートビジネスを手がける会社が存在します。Mister Suiteという会社では、こんなグラフも掲げて、「ホームシェア(民泊)運用を始めたい物件オーナー様・法人様のお悩み」に応えるサービスを謳っています。「ビジネス」と捉えているのですね。

そういえば、あのイケハヤ氏も1年前の記事「ネットで儲けたいなら「せどり」「アフィリエイト」より「Airbnb」でしょう」で、「複数の物件をうまくマネジメントすれば、それだけ利益も増えていきます」と指摘し、有望ビジネスだと紹介してました。さすが、です。

おそらく、あまり知られていませんが、日本でもビジネスとしての民泊が徐々に広がっているのでしょう。それが不健全に進まないようにするには、今回の大田区の条例は一定の意味があるのかもしれません。

しかし、「6泊7日以上の滞在」が条件になるなど、どうにも使いにくい内容に思えます。観光立国を掲げる政府は、民泊のあり方を検討する有識者会議が先月から議論を始めていますが、知恵を絞って欲しいものです。

(なお、大田区の条例に対応する「Stay Japan」なるサイトがスタートしています。とても素敵な3つの部屋がコンセプトルームとして紹介され、一泊7千円から1万円とありますが、問い合わせたところ、条例施行前のため予約はできず、あくまでイメージ的に掲載しているようです)

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