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復活なるか、新たな「前へ」の明大ラグビー - スポーツ・インテリジェンス - 松瀬 学

見えた「復活の兆し」

確かに王者帝京大を倒さないうちに、『明大復活』と書くのは早すぎる。でも、その兆しは見えた。先のラグビーの早明戦(32-24)で勝ったからだけでなく、新たなメイジらしいスタイルがあったからである。

何かといえば、FWの押しとバックスの展開力で『前へ』攻めるという意思統一だった。もっとも、チームの成長が見えたのは、ラスト10分間の自陣ゴール前のディフェンスだった。早大の再三のモール攻撃にも耐え、ゴールラインを割らせなかった。

ひとり一人の堅実なタックルとふたり目の寄り、倒れてはすぐに起き上がるひたむきさと連携があった。これはスタミナなどのフィットネスとディシプリン(規律)がないとなかなかできない。「残り4、5分のところで、(トライを)とられなかったのが大きかった」と明大の丹羽政彦監督は満足そうだった。

「今までのメイジなら、たぶん、最後は1本、(トライを)とられていた。ゴールも決められて1点差。ばたばたしながら、ノーサイドになっていたと思います。あそこ(ゴール前)を抑えた。この試合でまた、チームは成長したと思います」

ゴール前のディフェンスだけでなく、ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)も激しかった。FWの耳をよく見れば、つぶれて“ギョウザ耳”となっている。その点に触れると、丹羽監督はうれしそうだった。

「ええ。(ブレイクダウンの練習で耳がすれて)ギョウザができる人間が増えているんです」

規律なくして栄光なし

規律なきチームに栄光は、ない。帝京大の強さとて、練習や私生活の規律と無関係ではあるまい。明大ラグビー部をつくった故・北島忠治監督の話で好きなエピソードがある。ある日の練習試合、ストッキングを下ろしていた学生を呼んで、ちゃんとひざのところまで引き上げろと叱った。

その時、北島先生はこう、言ったという。「服装は我のためにあらず、相手に対する礼儀なり」と。いいなあ、このセリフ。

では、ことしの明大はどうなのだろう。“北島イズム”が背骨を貫く丹羽監督が就任して3年目。学生寮に住み込み、時間を守る大切さや、自己管理、規則正しい生活を粘り強く指導している。

昨季までは、門限や「食事中は携帯禁止」などの規則を破ると、丸坊主になるなどの罰を科していたが、ことしはあえて罰則をなくした。「自律」を促すためである。

中村駿太主将が説明する。「規則を守らせるのではなく、自ら守るのです」

中村主将はまじめである。明大ラガーらしく、明るく、おおらかでもある。「禁酒ですか?」と聞けば、真顔でこう、言った。

「はい。20歳以下は飲んでいません」

中村主将の父も明大ラグビー部のいいフッカーだった。家の居間には、故・北島先生直筆の『前へ』と書かれた色紙が飾ってある。この親にして、この子ありか。メイジ魂は筋金入りなのである。

“失速メイジ”払拭期す

もちろん、規律だけでチームは強くなるわけではあるまい。地道なフィットネスやフィジカル強化、日ごろのハードワーク(猛練習)があったからである。

選手個々の能力はまったく悪くない。隆盛時代、明大はシーズンが深まると、加速度的にチーム力が高まった。なのに最近の明大といえば、シーズンの深まりとともにチーム力の伸びが弱まっていた。

「“失速メイジ”と言われていることを払拭したい」と、丹羽監督は自嘲気味に言うのである。

「ことしは違います。失速メイジ、これじゃない。前進メイジです。“前へ”の精神です」

紫紺と白のジャージーの明大が、19季ぶりの大学日本一を目指す。今季のスローガンは『リバイブ(復活する)』である。

前へ――。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。

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