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迷ったら高橋是清に訊け!

あらかじめ言っておくが本稿は財政金融問題を扱うワケではない。そして、オチもない。
私もエントリーさせて頂いているBLOGOS FINANCEでは昨今、日米の富裕層の比較、幸福感などが議論されて盛り上がっているようなので、私も思うところを書き記しておく。

唐突であるが最近、高橋是清にハマっている。
彼の財政金融政策がどうこうというよりも、波乱万丈の人生に裏打ちされた人間の器の大きさに魅了されているのだ。

どんな人物かは説明は不要であろう。

有名な逸話としてペルーの銀山の話がある。
彼が農商務省にいた時に、ペルーの銀山経営の話が持ち上がり、会社を設立し職を辞してペルーに行った。ところがそこが廃鉱であることが判明。失意のうちに帰国。会社解散の残務整理に追われただけでなく、責任を取らされて財産を全て没収。屋敷から追い出されるなど散々な目にあっている。

そんな理不尽な状況に追い込まれた時の彼の心境はいかばかりだったか。
「随想録」に次のように記されているが、至言である。

リンク先を見る随想録 (中公クラシックス)
高橋 是清
中央公論新社


P.86
子供の時から激しい苦痛にはたびたび出会ったが、自分ひとりで受ける苦痛は、どんなことでも辛抱しやすい。けれども一家を持って、相当に暮らしていた者が、俄然、生計に困るようになって、家族のものに着る物を着せられず、食う物も与えられんとあっては、尋常一様の苦しみであないことは勿論だ。

しかし私は、常に家の者にも、元来無一物で世の中に出てきたのだから、いくら貧乏して困ったといっても、以前の境遇に戻ったと思えば辛抱もできよう立派な邸宅に住み込めば嬉しいとよろこび、九尺二間に縮まれば難儀だといって悔やむようでは、人間本来の面目を解さぬものである
境遇がいかに変わっても、それに処する精神は、常に一貫して変わらないように心掛けなくてはならんと、こういって説き聴かせていた。

全ての人間の栄枯浮沈は、定め難いものである。この間に処して、悲境に陥っては、楽境にある時の気持ちをもって、日々を愉快に、楽しく暮らし楽境にあっては、かつて悲境にあったときのことを忘れず、欲を制し奢りを戒めていくことが、人々の心の修養の要諦であろう。

この心の平静さは凄すぎる。貧乏になっても「生まれた時の状態に戻ったと思えばいいじゃないか」っていう発想はなかなかできない。さらに当時高まりつつあった拝金主義についてこう断じている。

p.90
金を貯めるということは、人生の副産物であって、本来の目的は他になければならぬ。(中略)金を貯めることが、人生奮闘の最終目的となって、身を肥やし、栄華を極め、肉欲的の奢りをほしいままにせんがためにあくせくと働いたところで、その労力はなんらの価値はなく、また、かくして貯めた金は全然、塵埃に等しいものであると思う。

高橋是清にとって人間出世の目標は精神的であって物質的ではなかったのだ。精神的な充足が目標となれば、「自己の貧しきを厭わず、人の富を羨まなくなる」としていた。
凡人の私には一生かけても到底達することのできない境地ではあるが、人生の達人としての氏の言葉は重く、かつ心に染み入る。

金融関係のブログをやっている私がいうのもナンだが、この歳になっていろいろ分かってきたきた。人生、やっぱりカネにこだわり過ぎちゃぁおしまいだね。向上心は大切ではあるけれど、人間の欲は尽きることがない。他人と比較ばかりしては不平も溜まるし疲れるだけだ。「足るを知る」ことも大切じゃないかな。

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