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防衛装備調達、産経新聞の先見性の無さ

オスプレイ、水陸両用車など「高額輸入品」導入で国内防衛産業が窮地に…しわ寄せは弾薬、被服にも
http://www.sankei.com/premium/news/151206/prm1512060012-n1.html
>V22オスプレイや水陸両用車AAV7など、高額な装備品の新規導入が相次いでいるが、そのしわ寄せが弾薬や被服など“地味”な分野の予算に及びつつあり、国内の防衛産業維持の観点から懸念の声が上がっている。
そんなことは前からわかっていた話でしょう。

ですからぼくはこの観点から何度も警鐘を鳴らしてきました。そのころ産経新聞や、いわゆる「保守の論客」の方々は脳天気に安倍政権の軍オタレベルの軍拡を褒めてきたんじゃないですかね。
一定水準の防衛費の中で突出した新兵器を買えば既存兵器の保守、訓練、弾薬、需品などにしわ寄せが来るのは自明の理です。
しかもその新兵器は大概維持費が他価格、これが固定費となって将来にわたって予算を圧迫します。ですからこれら新兵器の維持費も出ずに、稼働率は落ち、単なる税金の無駄遣いになる可能性大です。

しかもこれらの兵器は首相官邸からの肝いりのためか、まともに必要性も精査されずに導入が決定されました。ですからぼくは安倍政権の「軍拡」は自衛隊を弱体化させるだけ、敢えていえば利敵行為ですらあるとぼくはのべてきました。
>「弾薬は設備産業だ。火薬などを扱うので設備の維持管理に大変な費用がかかる。今は負のスパイラルに入っている。(予算削減で)操業度が落ち、単価が上がる。予算には上限があるので生産数が減る。この繰り返しだ」
弾薬の調達が少ないのはこれらの装備の調達だけではありません。多くの装備の変換が進まず、新旧合並立期間が長いことも理由です。
例えば戦車は74式、90式、10式、(そして機動戦闘車)で、弾薬が3種類です。
生産性が上がるはずもありません。これまた産経新聞は新しいおもちゃが導入されることを褒めるだけで、指摘してきませんでした。
>弾薬は原則として自国生産で賄うのは国際的にも常識で、国内防衛産業の衰退は、総合的な「国防力」の弱体化を意味する。
これは事実ではありません。
例えば英軍は訓練用小銃弾を以前はIMI,現在は南アのPMPから調達しています。同様にフランス軍は訓練用の砲弾の信管は米国製を使用していました。国内生産は最小に抑え、訓練弾は安く調達してきました。
ある程度は輸入に完全に切り替えることも視野にいれるべきでしょう。英軍は40ミリグレネード弾を、シンガポールから調達しています。全てを守ろうとすると全てを失います。
>自衛隊員向けの被服を作る縫製産業の関係者も、予算減で零細工場が窮状に陥っている実態を訴えた。出席議員からは、オスプレイ調達計画の再検討も必要だとの意見まで飛び出し、事務局長の佐藤正久元防衛政務官は「国内産業の基盤を維持するという防衛省の方針と、実際の数字が全然あっていない」と指摘した。
問題は単純ではありません。この手の会合は既存の防衛産業の企業の既得権の維持に主点が置かれております。
新規参入を許せばもっと安い調達コストでできる企業があっても、政治や天下りで排除してきました。ですから装備も需品も、相場からみれば極めて高いものになっています。

また縫製工場などが儲からないという話も、プライム企業などの中抜きが大きいことも理由の一つです。
例えば縫製工場が直接防衛省と契約すればよろしいのですが、そういうことが事実上できない仕組みになっています。直接契約すれば数分の1の値段になる製品も少なくありません。

これらの問題は放置されています。

同じ分野で競合もなく、温々としてきたのが防衛産業です。
高度成長期はそれでもGNPに比例して売上が伸びてきました。
しかしバブル崩壊後はそうはいかなくなってきました。ですが防衛省も業界も、業界再編やリストラを行ってきませんでした。
ある意味自業自得なところがあります。


防衛産業の基盤を維持したいのか、既存の防衛産業の利権を維持したいのかはっきりさせるべきです。

装備を買えば、維持費がかかる。扱うための人間も必要です。高い装備を買えば、既存の装備の維持や平坦、需品などが圧迫を受ける。こんなこととは当たり前のことです。
その当たり前のことを政治家やメディアがまともに語ってこなかった、あるいは知らなったことは大きな問題です。

特に陸自の場合、装備の近代化をするならば部隊や人数を減らすべきですが、それをやらずにいるから無理がきています。それは将官・将校のポストが減るから嫌だというわけです。
当事者意識がないわけですから、本来政治の出番ですが、政治も予算を増やせ、人間を増やせというだけで現実を見ていない。

本来ネットワーク化だけでも相当な費用がかかりますが、捻出できていない。そのくせ必要性も低い、10式戦車や機動戦闘車などの「火の出る玩具」を買って、自らの首を締めているわけです。

政治家、自衛隊ともに当事者意識が欠如しています。
ところが「愛国メディア」や「保守の論客」の方々は、安倍首相は常に正しいとか、自衛隊は正しいとかの翼賛報道ばかりするので、納税者は現実を理解できない。
保守の劣化は目を覆うばかりです。


Japan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
【海上自衛隊、空母を持つ野望】~マンガ「空母いぶき」のリアリティ その1~
http://japan-indepth.jp/?p=23226
【海上自衛隊、空母を持つ野望】~マンガ「空母いぶき」のリアリティ その2~
http://japan-indepth.jp/?p=23242
【海上自衛隊、空母を持つ野望】~マンガ「空母いぶき」のリアリティ その3~
http://japan-indepth.jp/?p=23254
【仏同時テロ:中東独裁国家への歴史的介入が原因】~難民急増の深層 その1~
http://japan-indepth.jp/?p=23079
【仏同時テロ:無自覚な“文明的暴力”を批判せよ】~難民急増の深層 その2~
http://japan-indepth.jp/?p=23082
【わざわざ旧式兵器を新たに調達する陸自】~国内企業のライセンス生産守る為?~
http://japan-indepth.jp/?p=22467

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
フランスは原発テロの悪夢にうなされている
自爆覚悟のテロは、防ぐのが難しい
http://toyokeizai.net/articles/-/93096
高額な早期警戒機が日本では「欠陥機」だった
周波数帯をまともに使えない大矛盾
http://toyokeizai.net/articles/-/88753

朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました。
イスラム国がトヨタのランドクルーザーを使う理由
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015110200004.html
陸自が導入した輸送防護車は使えない
机上の空論では済まない邦人救出の現場
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015100200004.html

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