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組合は自民党より会社寄り

金属労協、ベア要求半分に 政府の姿勢よそに現実路線(日本経済新聞)

 自動車や電機など主要製造業の産業別労働組合で構成する金属労協は4日、2016年の春季労使交渉でベースアップ(ベア)に相当する賃金改善要求を月額3000円以上にすると正式決定した。大手と中小企業の賃金格差の是正、非正規従業員の待遇改善も要求に加える。要求の水準は6000円以上を掲げた15年春の半分。政府や経団連が15年を上回る賃上げを議論するなか、組合要求が15年を下回る異例の展開だ。

 記者会見した金属労協の相原康伸議長は要求水準を月例賃金の1%程度とする理由を「経済情勢や格差是正、物価などを総合的に考慮した」と説明した。定期昇給相当分を含む3%の賃上げを求める政府の動きは「(組合の)要求なきところに回答はない。労使自治の原則に基づいて議論を進める」とはねつけた。

(中略)

 産別労組のある幹部は「15年春は政府主導の賃上げムードに乗って浮ついた要求になった面もある」と振り返る。金属労協の幹部は「将来を見据えた議論が必要だ。今がよければいいという要求はしない」と話す。17年4月には消費税率10%への引き上げも予定されるなか、将来の労働・生活環境の変化を視野に要求を決めたという。

 過度の賃上げは将来の雇用不安につながる恐れもある。ホンダが65歳までの定年延長で労使協議に入るなど、従業員が長く安定して働ける環境づくりに向けて、賃金制度や働き方を抜本的に見直す企業が増えている。政府と経営側が賃上げによる国内経済の活性化を重視した論戦を繰り広げるなか、組合は将来を見据えた現実論に立ち返る考えだ。

 以前にも連合が安倍政権の賃上げ方針に異を唱えたことがありましたが、この辺も同様でしょうか(参考、誰が音頭を取ろうと賃上げとは良いものだ――が、連合にとっては違うらしい)。政府が賃金を上げよと曲がりなりにも動いている中で、労組の中には賃上げ要請の水準を低く抑えるという暴挙に出ているところも存在するわけです。まぁ、ある種の人々にとって自民党への反対は何よりも優先順位が高いようでもあります。組合員の賃金向上よりも大切なものがあると、この金属労協は判断したようです。

 正直、あろうことか最大労組である連合なんかも民主党の勝利が第一で労働者の権利なんかくそ食らえみたいになっている場面もあります。労働者の味方は、少なくとも労組よりは自民党である――そんな冗談みたいな事態が現実のものになりつつあるのかもしれません。金属労協曰く「(組合の)要求なきところに回答はない。労使自治の原則に基づいて議論を進める」とのこと。この種の組合にとって賃上げを求める自民党は、労使協調という蜜月を破壊する侵入者にしか見えないのでしょう。

 自民党の賃上げ方針だって十分とはいえない、強制力が足りずに口先倒れに終わりそうな部分は多いのですが、それなもなお賃上げを求める声を控える労組に比べれば、相対的には自民党の方がマシだと言えます。先日も書きましたが、結局のところ自民党政治に問題は多々あろうとも、それを批判している人々/組織の方が輪をかけて駄目である以上、安倍政権が「ほかの内閣より良さそうだから」との理由で一定の支持率をキープし続けているのは、至って自然なことなのだろうなと思うばかりです。

 類は友を呼ぶと言いますか、駄目な人に賞賛されているのはやっぱり駄目な人だったりするわけですが、今回の労組の姿勢は日経新聞に「現実論」とヨイショされています。賃上げを唱える自民党と、賃金要請を控えることを「現実路線」と称する労組&経済紙、果たして労働者が支持すべきは、二択であったとしたらどちらなのやら。労組のある幹部とやらは「15年春は政府主導の賃上げムードに乗って浮ついた要求になった」云々とのことですけれど、それは労組が一貫して賃上げを主導「しなかった」からであることを恥じるのが先ではないでしょうかね。労組が仕事をしないから、政府が代わりにやっているだけなんですが。

 いずれにせよ長年続いた過度の賃金抑制が、働いても生活が成り立たない人、子育てや老後のための資金を蓄えられない人を増やしてきた、支出を切り詰めざるを得ない人を増やし、それが日本市場の購買力を損ねても来たわけです。金属労協の幹部に言わせれば「今がよければいいという要求はしない」とのことですけれど、賃金抑制で会社の利益を確保するなんて、それこそ目先のことしか考えていない話ではないでしょうか。賃金を上げて、労働者がモノを買えるようにしていくこと、それが将来への投資です。

 かつてヘンリー・フォードは従業員が自社の車を買えるように賃金を大幅に引き上げました。財界筋からの批判もあったようですが、自らの正しさを証明したのがフォードの方であったことは今更言うまでもないでしょう。反対に――労組が望むように――賃金抑制を続けていけば、短期的には会社は儲かるのかもしれません。しかし、それは将来へ向けて貧困の種をまいているだけ、将来的な市場の縮小を招いているだけの話なのです。いやはや、安倍政権には財界だけではなく労組とも戦ってくれることを期待すべきなのでしょうかね。

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