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【宮崎】怒りに震える畜産王国、生産性向上で活路模索 TPP現地調査

 TPP対策本部(郡司彰本部長)と経済連携調査会(古川元久会長)は、TPP協定の大筋合意と国内対策大綱の決定を受け、4、5の両日、第3弾の現地調査団を宮崎県に派遣した。同県は肉用牛で全国3位、豚で全国2位、ブロイラーで全国2位と、日本でも有数の畜産王国。生産者団体との意見交換では、将来にわたって経営の見通しが立たないことに憤りや不安の声が数多く聞かれた(写真上は国富町の次世代園芸施設を視察する視察団一行)。

 調査団には、古川元久対策本部事務局長・調査会長、直嶋正行調査会代表代行、岸本周平対策本部事務局次長・調査会事務局長が参加した。党宮崎県連からは田口雄二代表、道休誠一郎副代表、渡辺創幹事長、井上紀代子政策調査委員長が参加した。

県・協中央会との意見交換会であいさつする古川元久調査会長

県・農協中央会との意見交換会であいさつする古川元久調査会長

 4日に行った県農政推進部の担当者や県農業協同組合中央会役員との意見交換では、県農協中央会の見戸専務理事がTPP協定大筋合意について「心情的に怒りに震えた時期もあった。TPP反対で政権交代がなされたはずで、その後、国益を守ると説明を受けてきた。国益とは何だったのか。重要5項目を守るということだったはずだ。農家サイドとしては許しがたい気持ちもある。国会決議の検証も国会で明らかにされていない。しかし背に腹は代えられない。特効薬はなく、今まで取り組んできたことをしっかりやっていくしかない」と、これまでの経緯と思いを語った。

 その後の意見交換では、県や農協の担当者から、「飼料用米、加工用米について予算化を受けて進めているが、2018年以降、生産調整がなくなり、所得補償交付金もなくなったとすれば、耕畜連携も崩れていくのではないか」「現在はきゅうりで全国1位、ピーマンでも全国2位だが、施設園芸や花きなどで高品質のものをつくり、もうかる農業を見せていかないと、後継者に継がせることが難しくなる」「対策で本当に不安を解消できるのか。将来、農業を続けていこうと思えるものを政策として打ち出していかなければならない」「将来的に夢を持てないという精神的な影響を心配している」など、将来の見通しが立たない現状への強い不安の声が出された。

 今後の農政のあり方について、「日本農業というものがあるわけではない。地域農業があっての日本農業だ。地域農業が守られることこそ必要だ」「農政は、常に予算で措置されることしか裏付けがないので、法制化して、しっかり裏付けして欲しい」「産業政策とは別に地域政策を考えるべきだ」などの声があった。政府・与党が力を入れる農地中間管理機構についても「今まであった農地集約の仕組みが機構に引き継がれず、活用されていない」「農政の会議でしっかり決めるべきだ。規制改革会議で政策をつくるべきではない」との厳しい声が相次いだ。

 古川会長は、2010年に発生した口蹄疫の影響について質問。担当者は、飼養頭数は回復しつつあるものの、当時の畜産業者は、高齢化の影響もあり40%ほどが廃業しており、厳しい現状にあると説明した。があった。出席議員らは、定量的な影響試算を県としてもぜひ取り組んで欲しいと要請した。

 翌日の5日には、次世代施設園芸導入加速化支援事業を進める国富町でピーマンやきゅうりの栽培を視察した。同事業は、施設園芸に用いる燃油価格の高騰の影響を回避するため、木質バイオマスを活用したり、最新の情報通信技術を活用して高度な複合環境制御を行うことで、より高い収量を目指す施設園芸経営のモデル事業。同県では、県や市、民間企業、農協などによって構成する「宮崎中央地域次世代施設園芸団地運営コンソーシアム」が主体となり、通常栽培の農家の1.5倍程度の収量を目標に、ピーマン、きゅうりの栽培を行っている。

 同事業に取り組む生産者の福田誠氏は、1966年にピーマンの栽培を始めて以来、施設園芸の拡大に挑戦し、現在ではしょうが、花きなどの栽培も行っている。新規就農者の研修などにも積極的に取り組み、農林水産省などが行う全国優良経営体表彰で今年の農林水産大臣賞を受けるなど数多くの賞を受賞している。TPPの影響や今後の農政のあり方について福田氏は、「他の品目の価格低下の影響で、野菜の価格も大きな影響を受けるのではないか」「規模拡大を進めてきたが、いったん立ち止まって品目を絞る必要がある」「規模拡大をすればいいということではないが、現状の小規模農家では、経営を維持できなくなるのではないか」など、農業の将来への不安も漏らした。意見交換の最後に同氏は「人間が生きるための産業であり、そういう理解が都会には足りない」と話した。

綾町肉用牛総合支援センターの視察

綾町肉用牛総合支援センターの視察

 綾町肉用牛総合支援センターでは、新たな生産者支援を視察した。県のほぼ中央に位置する同町は、農業粗精算額では畜産が最も多く、5割以上を占めている。しかし、高齢化などの影響もあり、1990年に230戸あった繁殖農家の数は、昨年には67戸まで減少した。このような背景から、生産者の労力を低減し、生産性の向上や経費削減などを行うために設けられたのが「肉用牛総合支援センター」だ。同センターでは、生産者から母牛・子牛の親子の預託を受けて育成を行ったり、育成牛・不妊牛の種付・育成を行うなど、生産者の負担軽減を進めている。このような取り組みの結果、分娩間隔の短縮による生産性の向上や、農家の労力低減によって野菜など他の農産物栽培との複合経営への移行などが進んでいる。運営を行う綾町農業協同組合の佐藤畜産課長から説明を聞き、牛舎や放飼場を視察した。

養豚生産者協議会との意見交換会

養豚生産者協議会との意見交換会

 みやざき養豚生産者協議会の日高省三会長とも宮崎市内で意見交換を行った。TPP交渉で重要5項目に位置づけられていた豚肉は、合意の結果、差額関税制度は維持されたものの、従量税は当初482円/キロから、発効時に125円/キロへ下がり、10年目以降には50円/キロまで下がることとなっている。そのような合意結果に日高会長「国会決議が守られていないのではないか。決まった以上は、これから先の再生産が可能となるような仕組みを作ってほしい」「豚マルキン(豚の肥育に対する補てん金事業)が牛並みになり、法制化されることで、最低限の補償は実現したとは思うが、蓋を開けてみないと、影響がどの程度かは分からない。そのため、今たくさんのお予算をつけても使いようがないのではないか」と、今後の施策への期待と不安が入り交じった話を聞いた。と畜場の整備、国産商品の広報展開、他国で使用されている薬剤の国内への影響や食の安全の確保、ワクチン接種に対する支援など具体的な項目についても意見を聞いた。

 TPP対策本部と経済連携調査会は、国内農林水産業への影響を調査するため、今後も精力的に調査団を派遣する予定だ。

民主党広報委員会

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