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ネット通販で購入ボタンをクリックさせる方法

 米ボストンに住むシャロン・スピローグさんは、レインコートに追いかけられているような気がした。

 二児の母親であるスピローグさんは最近、小売大手L.L.ビーンのウェブサイトを長時間見ていたが、結局、何も買わずにサイトを離れた。数日後、彼女がインターネットで何を見てもレインコートの広告がついて回るようになった。それはL.L.ビーンのサイトで閲覧した商品や別のサイトで見た品物だ。

 スピローグさんは「(商品について)入念に調べた」と語る。子どもたちに何かを買ってあげる時、彼女は製品のレビューを載せたブログから小売業者のウェブサイト、価格を比較するデジタルツールなどを行き来する。こうした調査をすべて終えた上で、スピローグさんは結局レインコートを買わなかったのだ。L.L.ビーンはコメントを控えた。

 小売業者はスピローグさんのようなデジタルに詳しく、平気でオンラインショッピングに何時間も費やす消費者への対応に悪戦苦闘している。彼らは有望な見込客となるからだ。ネット上でウインドーショッピングをする人々は買い物カゴに多くの商品を登録するが、その後は立ち去ってしまい、実際に「購入」ボタンを押すことはない。

 年末恒例のショッピングシーズンで、顧客の流れはネットショッピングに傾いている。オンライン店舗は消費者をその気にさせ、長く買い物カゴに入ったままの靴やタオルセットの購入ボタンを押させる方法を編み出している。

 ひとつの戦術として、ウェブ上の至る所で顧客につきまとい、買わなかった商品の広告で刺激する手法が挙げられる。また、電子商取引業者の多くは、買い物カゴに残っている商品について、やんわりとリマインドする電子メールを送っている。米カジュアル衣料小売り大手、ギャップの傘下ブランド「バナナリパブリック」は最近、「こんにちは。クロゼットが呼んでいますよ」というメールで顧客を突っついた。

 別の店舗では、テキストメッセージと携帯電話のプッシュ通知で顧客に買わなかった商品を思い出させている。さらに、そうした商品をより魅力的にできると期待して、オンライン上の販売促進や値引きに顧客の注意を向けさせる小売業者すらある。

 コペンハーゲンに拠点を置く電子商取引のコンサルティング会社、ベイマード・インスティテュートによると、1つ以上の商品が入ったネット上の買い物カゴのうち約69%が結局は放棄される。共同創設者のクリスチャン・ホルスト氏によると、この比率は2012年から約3ポイント上昇したという。

 ホルスト氏によると、顧客が買い物カゴに入れた商品の購入を断念する理由はたくさんある。顧客が携帯電話を使っていればあちこちのサイトを行き来する傾向が強まり、その顧客を閲覧モードにしてしまうようだ。ベイマードによると、消費税や配送料など支払い段階でかかる予想外のコストが、購入を断念する理由の33%を占めている。オンライン業者が顧客にアカウント作成を強要することも、断念の理由の約23%を占める。これは顧客にユーザー名やパスワードなどを考えさせ、詳細な個人情報を入力させるというやっかいな仕事になることが多い。さらに、断念の理由の18%を占めたのが「複雑な」決済プロセスだ。

 小売業者によると、モバイル端末でウインドーショッピングするのが好きな人は、商品が買い物カゴに残っていれば後でそれを購入する可能性が高いという。買い物客の多くはスマートフォン(スマホ)で選択肢を絞り込み、あとでデスクトップやノート型パソコンを通じて購入する方法を好んでいる。

 米テキサス州オースティンに住むマーク・ロジャーズさん(30)は生まれたばかりの息子を持つ父親だ。彼はオンラインでベビー服を購入しようとした時、膨大な数の商品やレビュー、ブログ投稿を目にしてマヒ感覚に陥ったと話す。

 2010年に出版された「選択の科学」の著者で、コロンビア大学ビジネススクール教授のシーナ・アイエンガー氏は、こうした難題を理解できると話す。世界がデジタル化する前まで、買い物客は管理可能な一連の選択、あるいは入手可能な選択肢を決めるまでショッピングを続けていた。彼らの買い物は自分の住む町や近隣にある店舗に限定されていた。しかし現在は「どれだけ検索をしても、消費者は見逃したかもしれない何かがあるだろうと感じるようになった」とアイエンガー氏は説明する。

 米高級百貨店ニーマン・マーカスの幹部は、同社が「マイクロ・データ」を利用していると話した。これは地理情報と過去のオンラインショッピング履歴に関する顧客一人一人の特定情報のことを指し、商品の購入を断念したかもしれない顧客にリマインドすることを狙ったものだという。

 この幹部によると、それは買い物客の心に具体的な商品を強く印象付けることと、最初にその人の興味をそそらせたかもしれない「インスピレーションの瞬間」を再現することを微妙にバランスさせる作業だという。同氏は「買い物カゴに入れた靴を売りたいだけではない。あなた(顧客)との関係を作りたいのだ」と話す。

 米百貨店コールズのクリスタ・ベリー最高デジタル責任者は、同社のデジタルリサーチ子会社が異なる種類の端末に特徴的な顧客行動を見分け、端末に応じたショッピング環境をカスタマイズする手法を取り入れ始めたと述べた。

 同社によると、デスクトップを使う顧客はコールズのウェブサイトに約12分間とどまり、スマホを使う顧客は7分間だったという。販促用の電子メールから直接サイトを訪問した顧客はブランドに忠実な傾向がある。検索エンジンから訪れる顧客はサイトに出たり入ったりしたがることが多かった。ベリー氏のチームはこうした顧客を銛(もり)で魚を捕らえる人に例え、「スピアフィッシャーマン」と呼んでいる。

By CHARLIE WELLS

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