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  • 祇園
  • 2011年03月04日 07:26

ECB理事会〜4月利上げを示唆

3月3日にECB理事会が開催され、政策金利を1.0%で据え置くことが決められた。そして会見冒頭で、トリシェ総裁は以下のように語り、インフレに対して強いトーンで警戒しているという認識を示した(会見の冒頭の声明は "Introductory statement to the press conference"参照)。

Based on its regular economic and monetary analyses, the Governing Council decided to leave the key ECB interest rates unchanged. The information which has become available since our meeting on 3 February 2011 indicates a rise in inflation, largely reflecting higher commodity prices. The economic analysis indicates that risks to the outlook for price developments are on the upside, while the underlying pace of monetary expansion remains moderate. Recent economic data confirm that the underlying momentum of economic activity in the euro area remains positive; however, uncertainty remains elevated. The current very accommodative stance of monetary policy lends considerable support to economic activity. It is essential that the recent rise in inflation does not give rise to broad-based inflationary pressures over the medium term. Strong vigilance is warranted with a view to containing upside risks to price stability. Overall, the Governing Council remains prepared to act in a firm and timely manner to ensure that upside risks to price stability over the medium term do not materialise. The continued firm anchoring of inflation expectations is of the essence.

定例の経済及び金融の分析に基づいて、理事会はECBの政策金利を据え置くことを決めた。2011年2月3日の会合以降で入手できる情報ではインフレが上昇していることを示すものであり、広範に高騰しているコモディティ価格を反映したものである、経済分析では価格の進展への見通しのリスクはアップサイドであり、金融の拡大の基調ペースは緩やかであると示された。直近の経済指標はユーロエリアにおける経済活動の基本的なモメンタムは確実にポジティブである。しかしながら、不確実性は高まっている。現状の非常に緩和的な金融政策のスタンスは経済活動を大きく支援している。重要なことは、直近のインフレ率の上昇は中期的に渡ってインフレ圧力を高めることではない。強い警戒(を持って見極めること)は、物価安定のアップサイドリスクを含む見方を保証する。総合的に、理事会は、中期的な価格安定へのリスクを具現化させないためにしっかりと、そしてタイムリーな方法で行動していく用意がある。本質的なインフレ期待はしっかりとアンカーとなり続けている。


この、冒頭会見において、"Strong vigilance(強い警戒)"というキーフレーズが出された前回のECB理事会でのエントリ「No Message〜梯子を外されたユーロ相場 」でも紹介したが、このキーフレーズは近い将来の利上げを示唆するものとして捉えられている。以下はRBSがまとめた、総裁会見でのフレーズと政策金利の推移をまとめたものであるが、2005年の場合、このフレーズが出た2カ月あとの委員会で利上げが決定されている。以下はECB総裁フレーズと政策金利の推移(出所:FT)。
図1
この"Strong vigilance"というフレーズが出されたことからユーロは一気に急騰する展開となった。以下はEURUSDのチャート。
図2
さらに、記者との質疑の中で、トリシェ総裁は、
An increase in rates at the next meeting is possible
次回会合で利上げを行うことは「可能」である


とし、4月の会合での利上げの可能性について言及した。「確実」ではなく、「決まっている」ということではないが、トリシェ総裁としてはECBとしてはいつでも利上げが行える状態であるということを示したかったものと思われる。従って、マーケットでは4月の利上げを織り込む動きが活発化となり、EONIASWAPの1カ月までの期間の金利が押し上げられた。以下はEONIASWAPのカーブ(出所:EURIBOR)。
図3
そこからさらに25bpの利上げを織り込むのも7-8カ月程度先となっており、おそらく4月に利上げを行ったあと、追加利上げについては秋頃が示唆されている。
ECBの利上げの示唆については、Fedとは異なり、コア重視ではなく、あくまでも総合的なインフレ率を重視しており、これが政策目標としている2%を超えてきたということから、インフレ圧力が高まっていることを判断したことによるものと思われる。以下はユーロ圏消費者物価(HICP)の推移。
図4
また、もう一つ重要視される指標として信用の状況を表すためにユーロ圏のM3が使われているが、2010年10月には1.7%、2011年1月も1.5%の伸びを示し、信用状況についても安定的なレベルにまで回復してきていることも利上げをサポートしているものとみられる。以下はユーロ圏M3の推移。
図5
LTRO3カ月オペについては4月から6月のオペでも無制限供給が決まった。MRO(主要リファイナンスオペ)についても7月12日までの期間で行われるものについては無制限で供給するとした。3カ月のLTROについては直近3回の利用額が2603億ユーロとなっており、未だに高水準のオペの利用が続いている。以下の票はECBのオペ一覧(出所:ECB)。
図6
利上げを行えば、当然のことながらMRO及びLTROの金利も上昇していくので、借り入れコストも上昇していくことになる。しかし無制限に流動性を供給するということは未だに域内のPIIGSの金融機関が市場で資金を調達することができず、ラストリゾートであるECBでしか資金が取れないことを意味している。こうしたユーロ圏の金融状況には厳しさが残っているにも関わらず、利上げを示唆したのは、それ以上に域内でインフレ圧力が高まってきており、中央銀行としてのCreditability(信任)の維持を優先的に考えた結果なのではないかと思われる。

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