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中国の爆買がなくならないのはなぜか? - 高田勝巳

日本経済は、いつから他力本願
いや中国力本願になったのか?

 1993年に当時の三菱銀行の上海支店開設のために上海に派遣され、その後の独立を経てかれこれもうすぐ23年、上海から日本を観察してきた。最近感じるのは、日本経済は、いつから他力本願、いや中国力本願になったのか? ということ。中国株価が暴落すれば、中国人の爆買いがなくなるのではないかと心配し、7%を下回るGDPの統計が発表されれば、これでアベノミクスの先行きにマイナスの影響があるかもしれないと政府が発表する。

 そもそも、外国からの株式投資が完全に自由化されていない中国で、また、中国経済の実態がまともには反映されない中国の株価指数に世界の株価が連動すること自体も私にはよく理解できないが、市場のセンチメントとはそういうものだと金融の専門家に言われればそうなのかもしれない。

 先日中国の株価が暴落してまもなく、あるインバウンドビジネスと関係のある社長さんに質問された。これだけの時価総額が一気に失われたのだから、中国の経済に対する影響は計り知れないものがあるはずで、日本への観光客も減るのではないかと。中国からの旅行客の先行きは社長さんの業績と直接関連するので、真剣にこの問題を心配しているわけである。

 私の口から即時にでた回答は、おそらく、この社長さんの質問を全く満足させることのできるものではなかったと思うが、概ね以下の通り、株価の暴落で日本への旅行が減るとは思えないというものであった。

 ⒈ 上海の町の様子を見ている限り、景気が悪い感じは全くしない。近所のレストラン、ゴルフ練習場はいつも一杯だし、自家用車の登録台数も引き続き減る様子はなく、道路の渋滞はますます激しくなっている。町ゆく人の表情もこれまで通り前向きな雰囲気で暗い感じはしない。

 ⒉ 少なくとも私の周辺に多い、私から見て健全で中産階級とみられる中国人の様子を見ている限り、そもそも今回の相場で株式投資にのめり込んでいる人は見たことないし、株式投資を昔からやっている友人は高値で売り抜けて、家族で1カ月の欧州旅行に行っている。どうしても、今回の暴落が海外旅行にも影響をするという切迫感は全く感じられない。

 ⒊ それまで株を敬遠していた、庶民が株価の高騰におびき出されて、なけなしの預金を叩いてしまったという話は、メディアでは聞いたことがあるのでそういう人もいるのかもしれないが、もともと、市場経済が進展してきた中国では、不動産をやる人と株をやる人は明確に分かれている。これまで長期低迷していた株よりも、多くの人は不動産で資産形成をしてきたイメージが強い。私の周辺の中国のお金持ちの友人たちを見ていても、不動産は少なくとも3戸、多い人で10戸、20戸持っている人も少なくないが(100戸以上持っている強者もいる)、意外と金融資産は持っていない。

 そういう人がもともと比率の少ない金融資産の一部を今回の相場に投入し、すったとしてもどれだけの影響があるのか。これは以下に述べるブロガーから聞いた話だが、今回の株式相場で儲かったらもう一戸不動産を買おうと思っていたけど相場で損をしたので、手仕舞いして、不動産を買うのをやめた。そのお金で不動産は買えないけど、海外旅行するには十分なので、日本に旅行に行ったという人もいるくらい。

 ということで私が思い浮かぶのは極めて感覚的なものであったが、実際10月の国慶節の連休のフィーバーはみなさんご存知の通りで、私の感覚は間違っていなかったことが証明された。

 ただ、私の感覚というだけでは、日本から中国の動向を注視している方々は納得するはずはないので、どのように合理的に説明したらいいかと思っていたところに、面白い話が舞い込んできた。ちょうど、友人が講師を務める日本のある大学の企画で、上海を訪問して中国の経済と株式市場の専門家にその実態をヒアリングし、またフォーラム形式で議論したいので、コーディネートと講師をお願いしたいというものであった。その様子は録画されて、Eラーニングの形で学生が受講できるというものである。

今後の中国旅行者の動向

 私は、早速、長年の友人で、中国で有名で政府に対する影響力もある株式市場の専門家とエコノミストで中国の有名ブロガーを招いでお話をうかがった。テーマは、大きく分けて二つで、今後の中国旅行者の動向と中国経済の先行きである。ここでは前者について彼らの見方を紹介したい。中国の旅行者の動向については、二人の見方は概ね重なるもので、ポイントだけ掻い摘んでいうと以下の通り。

 ⒈ 15年に及び10%を超える経済成長の結果、中国に相当な中産階級の層が生まれた。

 ⒉ 彼らは、消費(物、サービス、娯楽など)に対してますます高級、上級な物を求める傾向にあるが、中国国内ではさまざまな要因により満足できない状況がベースとしてある。

 ⒊ 娯楽としての海外旅行は当然の流れとして、中国では手に入れることができない、またはできても関税と流通コストの関係で価格が高い外国の良質な商品を買い求めるニーズが高まっている。

 ⒋ 当初は、中国語が通じる香港が最初の選択肢であったが、最近の香港における大陸の中国人に対する反感の高まりで、大陸の中国人が香港にいっても差別を受けたりして決して楽しい選択肢ではなくなってしまった。

 ⒌ 当然韓国も選択肢であり韓国旅行も増えたが、すぐに飽きられた部分もあった。

 ⒍ そこに日本の観光ビザの緩和が重なり、日本を旅行する中国人が徐々に増えた結果、日本の風景、環境(自然、空気、水、社会マナー)、サービスの良さ、買い物の選択肢の多さ、買い得感などの評判が評判を呼び今日の状況となった。

 ⒎ また、中国の春節、メーデー、国慶節の大型連休はいずれも7日間から10日間程度の連休となるので、日本の旅行はヨーロッパ旅行よりも日程的にもコスト的にもお手軽という点もある。

 ⒏ この方向性は、今後中国の成長率の鈍化が続いても変わらない。日本では中国経済の崩壊論が盛んに宣伝されているそうであるが、日本だって、日本のバブルが崩壊したあとの低迷している20年での間でも日本人は幸せに暮らしてきたではないか。中国もそれと同じことと考えれば理解してもらえるか。

 9. あと、日本の方々に理解して頂きたいのは、まだまだマナーのよくない中国人旅行客もいるかもしれないが、多くの中国人にとっては経済的にも最近やっと自由に海外旅行に出て外国のマナー、安定した社会ルールを肌身で感じ、それを学んでいるところ。今後も少しずつ改善すると思うので、そこは辛抱強く見守ってもらいたい。反対に、万が一、日本で香港のような大陸の中国人に対する反感とか差別が感じられると、一気に冷めてしまう可能性もあるので、この点は留意したほうがいいかもしれない。

 なるほど、全体的な背景としては理解していたつもりだが、香港の要因は聞いていて私も意外な感じがした。

 それにしても、これは前々から感じていることであるが、政治的には日中関係が戦後最悪と言われる状況であっても、日本の観光地、旅館、ホテル、デパート、売店、交通機関などの中国人観光客に対するホスピタリティー溢れる対応に感心することが多い。私は、中国人の友人、家族を日本で案内することが多いので、その対応の良さはいろいろなところで感じている。これは日本人としても大変誇らしいことと考えている。もちろん、お金を払ってくれるお客さんだから我慢しているということもあるのかもしれないが、それだけでは日本人のそうした態度、表情は生まれてこないのではないか。

 日本人の倫理観、自然観、死生観さえも積み重なって、こうしたホスピタリティーが維持されていると考えたい。こうした日本人のホスピタリティーが失われない限り、日本の美しい国土とマナーが失われない限り、中国人観光客にとって日本旅行は魅力ある選択肢となり続けるのではないか。他国の経済を心配するより、自分の国がそうした日本人と日本の資質、環境をいかに維持して行くかを心配したほうがいいかもしれないと思う次第である。

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