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「航行の自由作戦」継続へ 米国は妥協許すな - 岡崎研究所

10月27日、米国は南シナ海において「航行の自由作戦」の実行に踏み切りました。それに関して、ワシントン・ポスト紙とウォールストリート・ジャーナル紙が社説を掲げ、この作戦の実施を支持しています。要旨は以下の通りです。

ワシントン・ポスト「ラッセンの定期的な通航を」

 10月27日、イージス艦ラッセンは南沙諸島の礁の近傍を通航した。予想された通り、中国外務省はその領域の侵害であるとして「強い不満と断固たる反対」を表明し、「必要な全ての措置をとる」と述べた。潜在的な衝突のリスクが高まったように聞こえるが、オバマ政権の決断は正しく、そもそもとっくに行われて然るべきことであった。

 南シナ海における不埒で法的根拠を欠く領有権の防衛のための中国の挑発的行動に領有権を争う諸国は警戒感をつのらせていたが、これら諸国は米国が対応しようとしないことに同様警戒感を有していた。米国海軍はかねて中国の挑戦に対応すべきことを論じていたが、首脳会談を控えて、オバマ大統領が許可を留保していた。首脳会談で習近平国家主席はこれら人工島を軍事化しないと怪しげな約束をしたが、この約束は実際に試される必要がある。

 これが、定期的な通航が今後も継続されるべき理由の一つである。もう一つの理由はこれが国際法の下で疑いもなく合法だということである。人工島は12海里の領海を有しない。領域が侵されたという中国の主張は9段線の主張に依拠するが、この主権の主張と米艦のパトロールに対する異議を根拠づけるものは何もない。

 習近平は中国がこの地域の物理的現状を変更する間、米国にブラフをかけて傍観させておくことが出来ると結論付けていたらしい。そうではないことを習近平に解らせるためにはラッセンの行動のような更なる行動を必要とするだろう。

ウォールストリート・ジャーナル「作戦日常業務に」

 ラッセンにスビ礁とミスチーフ礁の人工島の12海里内の海域を通航させたオバマ大統領の決定は正しい。これら人工島の周囲の海域、空域に対する中国の主権の主張に根拠のないことを明確にするためには更に多くのこの種のパトロールが必要となる。これら二つの礁は低潮高地であり、領海を有しない。

 驚くべきは中国の動きに挑戦するまでの遅延である。習近平の訪米の雰囲気を壊すことを怖れてホワイトハウスは逡巡した。遅延は高価についた。この間に中国は埋め立てを加速させ、中国海軍は主権の侵害には「正面からの一撃」をもって臨むと脅かした。27日、中国外務省は米国の行動は「違法」だと言い、中国艦船がラッセンを追尾した。

 中国の今後の出方は判らないが、米国が更に通航を続けなければその努力は損なわれる。作戦は日常業務とされるものであり、疑いを持たれている米国の気迫を証明するためには一回のミッションでは充分でない。また、特に価値があるのは豪州、日本、フィリピン、そしてもしかしてインドネシアとともに行う合同パトロールであろう。インドネシアが参加すればマレーシアとシンガポールも参加するかも知れない。

出 典:Washington Post‘Obama was right to order a sail-by in the South China Sea’(October 27, 2015)
https://www.washingtonpost.com/opinions/islands-of-trouble/2015/10/27/d8b6f5f6-7cc0-11e5-beba-927fd8634498_story.html
Wall Street Journal‘South China Sea Statement’(October 27, 2015)
http://www.wsj.com/articles/south-china-sea-statement-1445986915

           *   *   *

「航行の自由作戦」に替わり得るものはない

 上記2つの社説が言っていることに違いはありません。やっとオバマ大統領は決断したかということであり、遅きに失したとはいえ、この決断を支持しています。

 中国を不必要に刺激しないためでしょうか、カーター国防長官の口は重いようです。ホワイトハウスも何も言いたがりません。米国は今回の作戦の全貌を説明していません。通航したのはスビ礁だけなのか、ミスチーフ礁も含むのかも明らかではありません。また、米国は今回の作戦の国際法との関係における性格も説明していません。国務省は、「公海(international waters)を通航することは挑発的ではない」と言っているのみです。米国の認識として「ラッセン」は無害通航の態様で通航したのか、それとも無害通航でない態様で通航したのかも明らかではありません。

 一方、中国外務省は「ラッセンは中国政府の許可を得ることなく違法に南沙諸島の当該島(複数)および礁(複数)の周辺の海域に侵入した」「中国当局はラッセンを監視し、追尾し、警告した」「ラッセンは中国の主権と安全保障上の利益を脅かした」と述べています。この発言振りによれば、中国の認識としては、ラッセンの行動は無害通航ではもとよりあり得ず、そもそも中国は軍艦に対する無害通航権を認めているのかも疑わしい状況です。そういう観点からは、ラッセンの行動は中国の立場を否定する効果を持ったということかも知れません。

 2つの社説は「航行の自由作戦」の継続を求めています。適切な判断だと思います。カーター国防長官は今後数週間、数ヶ月継続する方針を表明しています。ウォール・ストリート・ジャーナル紙がいう関係国による合同パトロールは可能ならそれを排除する必要はありませんが、米国単独の「航行の自由作戦」に替わり得るものにはなりようがないでしょう。米中間の緊張の高まりを心配する声もありますが、米国としては下手な妥協はすべきではありません。

 人工島の軍事施設建設を抑制させることは恐らく出来ません。関係国間の領有権争いを解決に導くことは、この際二義的なことです。中国の長期的な狙いが西太平洋から米軍を追い出すことにあることは疑いありません。従って、最も重要なことは、中国の脅迫に拘わらず、米軍がこの地域で自由な活動を継続出来るよう、その意思を明白に表現し続けることです。それには負担が伴うだけに、日本が適時、適切に支持を表明することが重要だと思います。

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