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流行語大賞批判を批判する その性質、意義を理解すべし

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今年も「ユーキャン新語・流行語大賞」が発表された。大賞は「トリプルスリー」と「爆買い」だった。トップテン入りした言葉、ノミネートされた言葉などはこちらをご覧頂きたい。

例によって「そんな言葉、流行っているのかよ」「実感と違う」みたいな声はネット上でよく見られたし、今年に関しては「政治に関するキーワードが多すぎる」「偏っている」という声が続出し、話題となった。

私も以前は、この賞と実感がずれているなと思ったし、疑問を抱いていた。しかし、数年前から『現代用語の基礎知識』を書かせて頂いたり、「ユーキャン新語・流行語大賞」の審査員でもある清水均編集長を取材させて頂いたり、発表会場に行くようになり、その疑問の正体や、私が単純に誤解していたことなどに気づいたのだった。

なので、気持ちはわかるが、この賞を鬼の首を取ったように批判するのも恥ずかしい行為だと思うので、ここにその背景などを記しておこう。

この清水均さんへのインタビュー記事と・・・
流行語大賞の「メディア陰謀説」は本当か 「集団的自衛権」「ダメダメ」W受賞はなぜ? | 「若き老害」常見陽平が行く - 東洋経済オンライン
http://toyokeizai.net/articles/-/56483

産経新聞のiRONNAに寄稿した記事をご覧頂きたいのだが・・・
流行語大賞「政治的キーワード多すぎ問題」を読み解く
http://ironna.jp/article/2431

ポイントを言うならば
・もともと「国民的流行語」というものが存在することが疑問視された1984年に始まった。
・当初は取材にやってくるメディアも少なかったが、10年経ったあたりから盛り上がり始め、相対的な影響力が増していった。
・別に検索結果ランキングでもなく、審査員が選んだものである。
・一企業が行っていたものが、徐々に権威化していったという意味では、芥川賞・直木賞や、ミシュラン・ガイドなどに近い。
・政治のキーワードはたしかに突出して多かったが、とはいえ政治関連の問題がある年は絶対数も割合も高くなる傾向はある。
・現代用語の基礎知識に掲載されている語から選ばれている(だから、10月以降に流行ったものは選ばれにくいし、逆に年初に流行ったものは失速し、やはり選ばれにくいかも)
ということである。

さらに付け加えるとすれば、受賞語、受賞者というのは単にその年、流行っただけでない。そこに世相を読み解いていることがポイントである。例えば、お笑い芸人安村の「安心してください。穿いてますよ」は、彼のネタのヒットだけでなく、ついつい炎上やコンプライアンス上の問題などを気にしすぎてしまうという風潮とも合わせて解説されていた、表彰文では。資料を振り返ると、受賞語と表彰文がだいぶ印象とズレているということがよくあるわけだ。

なお、余談だが「お前が受賞者かよ」問題というものもたまに発生する。受賞者が辞退した場合などだ。例えば、「新人類」という言葉は栗本慎一郎氏が作った言葉であり、広めたのは稲増龍夫先生や、筑紫哲也氏だし、新人類だと言われた人たちは当時の若手社員や、著名人では著者やスポーツ選手など、まあいっぱいいたわけだが、受賞者は結局、当時の西武の新人、清原、工藤、渡辺だった。

ついでに会場のこぼれ話を。発表前にトップテンが配られていたのだが、やはり政治関連のキーワードが多数で、「やっぱりか」と思いつつ、大賞がそうじゃなくて、ありゃりゃという雰囲気だった。五郎丸登場かと思い、みんながシャッターを用意していたが来なかった時の笑いがすごかった。でも、国民的英雄ってこういうことなのか。会場は照明、フラッシュが眩しく安村はちゃんと穿いていないかのように見えた。修造が出てきて、室温が上がったが弱さをさらけ出していて、感涙していた人もいた。SEALDsは、話が長かった。審査員の鳥越俊太郎選考委員長は「やはり今年は政治の季節だった」という趣旨のことを言い、審査員のやくみつるさんは「主催者に抗議するのは違うと思う」ということをおっしゃっていた。

でも、会場の温かい雰囲気がいい感じだった。なんというか、今年を振り返る良いきっかけになった。

「トリプルスリー」ってその会場で知った言葉だったけどな。

というわけで、今年は「流行語大賞批判」が目立ったわけだけど、これは実は芥川賞批判と同じなのだと思う。この賞の性質を理解すべきだし、公的な賞であることを期待しすぎるのも違うと思う。一つの今年を振り返るイベントとして、普通に楽しむべきだ。単に検索結果ランキングっていうのとも違う賞だし。

そして、抗議の声が上がったというのは、なんだかんだいって、「時代とずれている」という声がありつつ、この賞の影響度が相対的に増していること、さらには誰もがネットで物を言う時代になったということなのだろう。

普通に楽しもうぜ。

リンク先を見る現代用語の基礎知識2016 [雑誌]
佐藤優/谷川俊太郎/金田一秀穂/森達也/木村草太/姜尚中/内田樹/重松清/武田砂鉄/藤井敏嗣/高橋哲哉/開沼博/益川敏英/水無田気流/常見陽平/湯川れい子/金子勝/伊藤真/他自由国民社2015-11-11
現代用語の基礎知識、私も書いているし、水無田気流さんと対談しているのでよろしくね。

文庫化された僕ジムと、最新作をよろしくね。

リンク先を見る
僕たちはガンダムのジムである (日経ビジネス人文庫) [文庫]

リンク先を見る
エヴァンゲリオン化する社会 (日経プレミアシリーズ) [新書]

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