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水木しげるの戦争 と チキンホークの品格

先日漫画家の水木しげる氏が亡くなられました。
 あの世で妖怪になられたのか、それとも先に逝った戦友たちと交歓されているのでしょうか。

 戦争の悲惨さを訴えつづけた方でした。
 無論水木氏は一兵卒として参戦し、その立場をベースに戦争を批判してきました。

 国家という視点では無論戦争には不可避なものもあります。例えば日露戦争は不可避な戦争だったでしょう。
 軍事作戦で、100パーセント満点で、味方の損害はゼロというものはありませんそれは200パーセント以上の成果を出したともいえる日本海海戦でもそうです。多くの齟齬があり、幸運に助けられました。

 ましては通常の軍事作戦では、「戦場の霧」戦場情報の不足、敵情の不明そして、指揮官の能力の不足などで、多くの将兵が死に、傷つきます。
 死傷した当人はたまったものではありませんが、これを全て無駄な損害とはいえないでしょう。神ならぬ人間がすることですから。
 そして多くの民間人がとばっちりを喰うのは言うまでもありません。
 ですから戦争はしないに越したことはありません。

 ところが、昨今の戦争賛美、ことに先の戦争を賛美する人たちがいます。
 先の戦争は正しかったとか、特攻を礼賛する人たちです。

 まともに軍事史を学べば、そんな与太は出てきません。
 無論、先の戦争でも止むにやまれずに開戦したという部分もありますし、人種差別が当然の時代であり、また弱肉強食の帝国主義の時代であったことは事実です。
 そして倫理観や常識が、現代とは異なっていたというのも事実です。

 ですが、帝国陸海軍がまともな軍隊であれば、大東亜戦争は起こらなかったか、起こってもアレほど無様な負け方をしなかったでしょう。率直に申し上げれば、大東亜戦争は人災にほかなりません。

 昭和の軍隊、特にその指導部は極めて醜い、そして無能な集団でした。

 軍人が政治を私し、ひたすら自分ちたちの利権拡大に走り、国益を毀損し、最後には無様な敗北を喫しました。

 国益を考えること無く、海軍とか陸軍とか自分たちの身内の利権だけを大事にして、国家を蔑ろにしました。正に国賊です。

 これを正当化するのは馬鹿以外におりません。

 昭和の軍隊は政治を私し化しました。

 当初、不拡散だった日華事変を、独断先行で拡大し続けました。
 陸海軍の偉い人達は、それは楽しかったでしょう。
 予算の拡大が官僚の性質とはいいますが、戦時特別会計という打ち出の小槌を得て、国家予算を湯水にように使って、自軍の予算と規模を拡大しました。
 そら、陸海軍の偉い人達はさぞや楽しかったでしょう。予算も権限も青天井で増えるわけですから。

 軍隊は消費するだけの組織です。いくら乗数効果が低い兵器を生産しても国内産業の育成になったり、経済の健全な拡大にはなりません。
 陸海軍こそが日本の経済発展を妨げました。

 そんな状況で、国力も弱いのに、それを自ら弱めておいて米英相手に喧嘩を売ったわけです。

 開戦前に燃料の備蓄ついて調査をしましたが、陸海軍とも正直に備蓄量を政府に伝えませんでした。

 情報を軽視し、帝国陸軍の1個師団は軟弱な米陸軍3個師団に相当する、という都合のいい妄想を元に作戦を立てました。実際はその逆でしたから、戦力差は1:9です。ボロ負けするのは当然です。大和魂とか根性では挽回できません。

 海軍は旧態然とした、艦隊決戦主義で輸送船相手に魚雷を使うのはもったいない、戦う相手は軍艦だぁ、とか言って、連合軍の輸送船団の攻撃にはあまり熱心ではありませんでした。また自国の船団の護衛もおざなりでした。
 対して連合軍は、日本の輸送船団を次々と沈めました。多くの陸軍の将兵と装備が海の藻屑になりました。のみならず、国内に輸送されるはずの燃料や原料もこれまた多くが海の藻屑になりました。

 そんなわけですから、南方戦線では物資、弾薬は勿論、食料や医療品が不足し、多くの将兵が的と戦う前に病死や餓死で命を失いました。これは最善を尽くした結果ではなく、軍中央の当事者能力と軍人としての能力の欠如の結果です。これを「美しい犠牲」とでも言うのでしょうか

 そしてどうしょうもなくなると、万歳突撃が強要されたり、自分たちで行いました。これは敵の前で首吊り自殺をするようなもので、殆ど効果がなかったことは言うまでもありません。クズの戦い方です。これを全滅ではなく、玉砕と言い換えるのは、自分たちの無能から目を背けるための自慰行為です。
 硫黄島の守備隊が徹底した持久戦を行いましたが、これと万歳突撃どちらが軍事的に正しかったでしょうか。

 陸海軍ともに戦時になっても適所適材を行わず、学校の成績の席次に基づく人事を変えませんでした。

 陸海軍ではそれぞれ工業規格が異なっていました。このため量産効果が出ませんでした。さらに三菱などの工場では陸海軍向けそれぞれ工場があり、工員の交流まで制限されていました。ただでさえ、国力が低いのにわざわざ生産性を低くしていました。

 更に陸軍は海軍向けの向上の熟練兵を徴兵して使い潰していましたから、向上の生産性や品質は下がる一方です。

 「生きて虜囚の辱めを受けず」というタテマエを強要してきたために、将兵に対して捕虜になった時に備えての教育をしませんでした。このため一旦捕虜になり、飯でも喰わせて貰えば、多くの日本軍将兵はペラペラと軍機に至るまでの情報をしゃべりました。

 挙げ句の果てが、単なる自殺の強要の特攻です。
 熟練搭乗員の航空機による特攻も当初はある程度効果がありましたが、米軍もすぐに対策を取りました。そもそも近接信管を実用化した米軍に対して、爆弾を搭載した戦闘機機体で、しかも非熟練搭乗員が特攻しても効果が低いのは当然です。特攻をした人間の中には当然ながら祖国や家族を守るために志願した人間もいるでしょう。ですが強要された人間も多数おりました。

以下に保阪正康氏のインタビューを引用します。
特攻70年:「特攻は日本の恥部、美化は怖い」 保阪正康さんインタビュー
http://mainichi.jp/feature/news/20141024mog00m040003000c.html?fb_action_ids=998167486912382&fb_action_types=og.recommends&fb_ref=s%3DshowShareBarUI%3Ap%3Dfacebook-like

>ある元海軍参謀にインタビューをした際、戦時中の個人日誌を読ませてもらったことがあります。特攻隊についての記述があり、「今日もまた、『海軍のバカヤロー』と叫んで、散華する者あり」と記してありました。部外秘の文字も押されて。この元参謀によると、特攻機は離陸した後はずっと、無線機のスイッチをオンにしているそうなんですよ。だから、基地では特攻隊員の“最後の叫び”を聴くことができた。「お母さーん」とか、女性の名前もあったそうです。「大日本帝国万歳」というのはほとんどなかった。ところが、そうした通信記録は残っていない。故意に燃やしてしまったに違いありません。“軍神”が「海軍のバカヤロー」と叫ぶ。それは当局にとって、隠蔽(いんぺい)すべきことだったでしょうから。

>1945年5月、沖縄で戦死)の妹さんは、兄と仲間たちの会話を手帳に残していました。彼らは「向こうの奴(やつ)ら(=米軍)何と思うかな」「ホラ今日も馬鹿(ばか)共が来た。こんな所までわざわざ自殺しに来るとは間抜けな奴だと笑うだろうよ」と言い合っていたそうです。


 特攻は陸海軍の指導層の無能と当事者能力の欠如の結果です。戦艦大和を中心とする艦隊の沖縄特攻も、何からやないと格好が付かないからというのが本当の理由で、軍事的な整合性はありませんした。つまり偉い人達のメンツのためです。

 それを無邪気に美化することこそ、特攻で命を落とした特攻隊員たちの死を無駄にするものであり、彼らを愚弄するものです。
 また特攻を美化することは歴史を直視せずに、また無能な軍の指導者たちを是とするものです。それが果たして我が国のためになることでしょうか。

 昨今やたらに旧軍を美化する輩が増えております。特にネットに顕著です。おそらく実社会で良いこともなく、人からほめられること無い人たちなのでしょう。唯一のレゾンデートルは「自分は日本人だ」という事実だけ。

 先日書いたエントリー、「「特攻」は自爆テロより悪質 産経新聞は特攻を美化したいのか? 」でもそのような人たちからの批判がありましたが、読むに値しない愚劣なものでした。
http://kiyotani.at.webry.info/201511/article_7.html

 そして旧軍のみならず、政府や防衛省も絶対に正しいのだと検証もなく信じこむ。
 どこの世界にも100パーセント正しい組織なんぞはありませんが、それを信じるわけです。
 『北朝鮮この世の天国』と言っていた左翼と精神構造とその幼稚さは全く同じです。ベクトルの方向が違うだけ。

 特攻は例えれば、さんざんホスト狂いとブランド物爆買いの母親と、キャバクラやパチンコにカネを突っ込んだり、浪費をした父親が、借金を返すために娘に借ソープで働くことを強要し、過労で死ぬまで働かせせるようなものです。仮にその娘さんが「両親のためなら私は死んでも借金を返すために働きます」と健気なことをいっても、彼女の行為は「日本的美徳」とか「やまとなでしこの健気さ」とかいって「美談」にしていいのもでしょうか。

 特攻を美化するのはこれと同じです。

 ネット上で暴言を吐き続けると「愛国者」なったような気になって、自分が偉くなったような高揚感が得られるのでしょう。ですがそれは公衆の面前で行う自慰行為に過ぎません。
 「愛国心はクズの最後の逃げ場である」といいますが、その通りです。

 この手合こそ日本の恥です。一度ご自分の醜い姿を鏡で見るべきです。
 同じ日本人として、恥ずかしくなります。 

 それが、中学生ならともかく、いい年したオトナでは救われません。今更軌道修正は不可能でしょう。自己批判は自己否定となるので、プライドと自尊心だけが異常に肥大したこの手の人たちには、耐えられないでしょう。

 このような手合が、自分は日本人だとか、愛国心がとか宣伝し、自己の主張に反するに人間を口汚く誹謗中傷することこそ、日本人の品格を貶め、国益に反することだと思います。おかくれになった昭和天皇も草葉の陰でさぞや悲しんでおられるでしょう。

 この手合が世の中から消えることが一番我が国のため、国益になると思います。

 自称愛国者の皆様、いっそのことシリアあたりに赴いて、ISに対して特攻をかけてはいかがでしょうかね。何ならあたしが、武器やらの手配をしてあげてもよろしいです。その程度のコネはあります。
 特攻を礼賛するぐらいですから、ご自分が実践されるが一番ではないでしょうか。我が国、ひいては国際社会での我が国の地位向上のために死んで護国の鬼となってはいかがでしょう。
 まあ、そんな度胸も覚悟もないでしょうけどね。

Japan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
【海上自衛隊、空母を持つ野望】~マンガ「空母いぶき」のリアリティ その1~
http://japan-indepth.jp/?p=23226
【海上自衛隊、空母を持つ野望】~マンガ「空母いぶき」のリアリティ その2~
http://japan-indepth.jp/?p=23242
【海上自衛隊、空母を持つ野望】~マンガ「空母いぶき」のリアリティ その3~
http://japan-indepth.jp/?p=23254
【仏同時テロ:中東独裁国家への歴史的介入が原因】~難民急増の深層 その1~
http://japan-indepth.jp/?p=23079
【仏同時テロ:無自覚な“文明的暴力”を批判せよ】~難民急増の深層 その2~
http://japan-indepth.jp/?p=23082
【わざわざ旧式兵器を新たに調達する陸自】~国内企業のライセンス生産守る為?~
http://japan-indepth.jp/?p=22467

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
フランスは原発テロの悪夢にうなされている
自爆覚悟のテロは、防ぐのが難しい
http://toyokeizai.net/articles/-/93096
高額な早期警戒機が日本では「欠陥機」だった
周波数帯をまともに使えない大矛盾
http://toyokeizai.net/articles/-/88753

朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました。
イスラム国がトヨタのランドクルーザーを使う理由
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015110200004.html
陸自が導入した輸送防護車は使えない
机上の空論では済まない邦人救出の現場
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015100200004.html

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