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「消えた」1億人の女性たち-アジア蝕む男子偏重社会

 【ソウル】アジアでは女児よりも男児の誕生が好まれるという文化・風習がある。それはアジアの社会に大きな犠牲を強いており、人工中絶や子供の間引き、そして育児放棄などで生まれてこなかったり犠牲になったりした女児は、アジア大陸全体で1億人以上に達するとの推計もある。

 これは人権問題というだけでなく、人口動態の面でも由々しき事態を引き起こしている。アジアの出生率がすでに低下しつつあるなかで、母親にならない女性が大勢いるということだ。このことがアジア諸国にもたらす経済的・社会的影響は計り知れない。

 韓国は数十年間にわたり、こうした傾向が最も顕著に表れている国だった。医療の発達で生まれてくる子供の性別を選択することが日常化し、1990年までには新生児の女児100人に対して男児が116.5人と、そのゆがみが世界で最も激しい国となった。

 ところが、そこで韓国は大きくUターンした。

 ひと世代の間に、男児が喜ばれる社会から、女児も同じように歓迎される社会へと変貌をとげたのだ。急速に進んだ産業化や都市化、教育の浸透に加え、フェミニストからの反発もあり、男子が資産を相続し、先祖をあがめ、両親の面倒をみて家系を守るという伝来の風習が消えつつある。

 韓国の新生児は昨年までに、女児100人に対して男児105人と自然な出生比率に戻った。

 この劇的な変貌はアジアの大国であるインドと中国にとって重要な教訓となる。合わせて世界人口の3分の1を占める両国では、いまでも男児の方がはるかに多く生まれている。

 両国を合わせた人口が27億人に達するインドと中国では、向こう数十年間、多くの男性は連れ合いを見つけることができそうになく、社会の仕組みを支えてきた家庭という構成単位が消滅しつつある。

 独り身の男性が多くなりすぎれば、社会や経済に大きな打撃を与えかねない。アジアの一部で起きているレイプや花嫁の人身売買は、男女比率の歪みが一因かもしれないと指摘する社会科学者もいる。

 コロンビア大学のレナ・エドランド准教授らによる研究は、女性に対する男性の比率と犯罪発生率の間に関連性があることを示唆している。中国の省レベルでの犯罪データを分析した結果、16歳から25歳の男性の比率が1ポイント高くなると、窃盗や暴力的な犯罪が5%~6%増えることが分かった。中国では1992年から2004年の間に、犯罪が劇的に増加している。コロンビア大学の研究は、犯罪が増えた分のほぼ3分の1は若い成人世代の男性の比率が高いことに原因があるとしている。その背景として考えられる推論はこうだ。数の少ない未婚女性の争奪戦を勝ち抜くには資産を増やす必要があるため、未婚男性は既婚男性に比べ犯罪に手を染める可能性が高い――。

 ニューヨークに本拠を置く人口協議会が2015年6月に発表した研究によると、世界中で不自然に少ない女性の数は1990年には8800万人、2010年には1億2600万人に達している。その約半数が出産前の性別選択が原因とみられ、アジアだけで1億1200万人超の女性が不自然に少ない。

 その研究によると、2035年までにこの歪みが1億5000万人に達するだろうという。

 アジアでは、1980年代から90年代に男女比が歪められた最初の世代が結婚年齢に達しており、今はその影響が表れ始めたばかりだ。

 韓国では2005年に結婚したカップルの10%近くが韓国人の夫と外国人の妻だった。妻の国籍は中国、ベトナム、フィリピンが大半を占める。

 フランスの人口統計学者クリストフ・ギルモト氏は、女性に対する男性の比率が高いまま推移すれば、中国では未婚女性100人に対して未婚男性は最大186人に達すると推計する。結婚できなければ、未婚男性の数は毎年、累計的に増えるためだ。インドの場合はもっと深刻で、不均衡のピークは100対191になりそうだという。

 インド北部のハリヤナ州で暮らすソンビール・サインさん(38)は12年間、花嫁を探し続けている。3人の兄弟たちもまだ結婚していない。近くの州に何度か花嫁を「買い」に出かけたが、金額や条件で折り合いがつかなかった。花嫁を買うのはインドでは一般的だ。サインさんによると、花嫁の相場は400ドル(約5万円)から1500ドルくらいだが、下限に近い金額を提示してもそれを受け入れる家はなかったという。また、大半の花嫁の家は、互いによく知り合うために数週間、花嫁の家で過ごすよう男性に求めるが、サインさんは長い休暇はとれないという。

 「妻を見つけることができないため、母親があの年で家事や洗濯をすべて一人でやらなければならないことを申し訳なく思っている」とサインさん。「子供を持つことができず、私の代で家が絶えてしまうのかと考えると悲しい」

By Geeta Anand And Jaeyeon Woo

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