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アジア開発銀行の「経済見通し改定版」と経済協力開発機構の「図表で見る教育」

本日、アジア開発銀行から「アジア開発経済見通し改定版」 Asian Development Outlook 2011 Update が発表されました。また、昨日、経済協力開発機構 (OECD) から「図表で見る教育 2011」 Education at a Glance 2011 も公表されています。こういった国際機関の発表物を取り上げるのは、私のこのブログの特徴のひとつですので、今夜のエントリーで簡単に振り返っておきたいと思います。

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まず、「アジア開発経済見通し改定版」の成長率の総括表は上の画像の通りです。pdf の全文リポートのハイライト p.xix から引用しています。少し縮小していますので、字が細かくて見づらい向きには、画像をクリックすると、成長率とインフレ率の総括表2ページだけを抽出した pdf ファイルが別タブか別ウィンドウで開くようになっています。大雑把にいって、今年から来年にかけて成長は鈍化しインフレは上昇する、というのが多くのアジア新興国・途上国のシナリオとなっています。もちろん、4月見通しから大きな改定はなく、従来の見通しの延長線上での小幅な改定と受け止めています。

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商品価格の高騰に伴うインフレの上昇はともかく、いくぶんなりともアジア新興国・途上国における成長の鈍化は先進国経済の減速に起因しています。全文リポートの p.4 Baseline assumptions on the international economy, 2011-2012 から引用した上の表の通りです。特に、我が日本はⅡ011-12年は震災とその後の復興需要でいたし方ないながら、その前からマクロ経済安定化政策がいかにも不首尾な印象で、マイナス成長とプラス成長がともにジェットコースターのように大きく乱高下しています。加えて、2011年の日本のマイナス成長というのは、需要面だけでなく供給面のサプライチェーンも含めて、アジア経済の足を引っ張っている可能性があります。もはや死語になったのかもしれませんが、デカップリングは成立していないわけです。

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次に、OECDの「図表で見る教育 2011」については、我が国教員の労働時間が授業以外の事務処理などのために長い一方で、給与は下落を続けていることがメディアにおいて注目されていますが、よく読めば、相変わらず、教育や家族などの勤労世代に財源を振り向けない日本の姿が浮かび上がります。上の表はリポートの日本語サマリー「カントリー・ノート: 日本」の p.5 の表を引用していますが、日本の教育への公財政支出額のGDPに対する割合はわずかに3.3%に過ぎず、先進諸国の中で際立って低水準にあることが明らかにされています。このような状態が長く続けば、一国経済として生産性に支障を来たしかねないと憂慮されます。

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参考まで、上の画像は昨年11月16日付けのエントリーで取り上げた「平成20年度 社会保障給付費」 の p.40 参考表3-2 政策分野別社会支出の対国内総生産比の国際比較から引用していますが、フランスには及ばないものの、我が国における「高齢」分類の社会保障給付のGDP比は、高福祉国として有名な北欧のスウェーデンを上回るほどの優遇ぶりとなっている事実を見落とすべきではありません。

ADBのリポートからは、アジア新興国・途上国の成長鈍化の背景に我が国景気や世界経済の減速が感じられます。相変わらず、OECDの「図表で見る教育」など、いろいろな社会支出関連の指標から、我が国における財政支出の大きな特徴である、引退世代の優遇と勤労世代の軽視が垣間見えます。偏った財政支出の使い方をされる限り、増税に対する反対意見が根強いのも仕方がないのかもしれません。

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