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40代・おひとり様女子の移住(後編) 第6回 見知らぬ土地で見つけた“居場所” - にらさわあきこ

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結婚したいし、子供も欲しい

 「当時は、その先にいつか結婚したくなるときがくるかもとすら考えなかったです。むしろ、休日のフードコートにやってくるようなダサイ夫婦にはなりたくないなとさえ思っていましたね。ほんと、好き勝手言ってスミマセン……」

 おどけた調子で笑顔を見せる。

 「その後、30歳くらいになってもまだ、『結婚? なに?』って感じでした。出産を考える女性なら、30前後になったら相手を探すのが現代の……というより、遠い昔も同じ婚活事情なのでしょうが、そんな大切な30前後は、そういえば別居中のオジサマと付き合っていました。今思うと若気の至りですね。

 だから、『気づいたらこの年になっていた』というよりも、そもそも結婚を最重視したことが今までになかったです。

 でも、今は結婚したいし、産めるなら子供も産みたいと思っています。私は子供が大好きなので、人様の子供でもOKです。子連れの方でいい方がいたら、それもまた“ご縁”ですね」

失恋はしたけれど……

 実は、移住と前後して、多恵さんは恋をして、失恋をした。

 「こちらで知り合った方なので、恋が移住のきっかけになった面も少しはあるとは思います。もちろん、彼のことがなくても移住は心に決めていましたが……。それに、失恋をした今も、町に来たことを後悔していませんし、住んでから、ますますこの町が大好きになりました」

 いったい、町のなにがそんなに彼女を引き付けるのだろうか?

“一生懸命”を受け止めてくれる

 実は、彼女と知り合ってから私は、SNSでつながらせてもらっているのだが、彼女とほかの人たちとのやり取りを見ていて、気がついたことがあった。

 一つは、彼女が熱くて、洒落た文章の投稿を頻繁にしていること。

 流石に、「言葉」にこだわってきた人なのだなあと思われたし、「彼女は、やはり熱い魂を持った人なのだなあ」と感じられた。

 でもそれよりも、特に目を見張ったのは、そんな“熱い”投稿に必ず、“熱い”レスがつくことだ。

 レスをするのは、明らかに彼女の住む町の方で、彼女とリアルに繋がっている方たちと思われたが、「同じことを都会で同じように呟いたらどうだろう?」と、思ったのだ。

“リアル”に優しいSNS

 というのも、SNSだけでつながっている人に、SNSの人はときとして、クールだ。

 熱くなり過ぎると「うざい」と評されたり、「痛い」と言われることがあるし、自らも「うざくないかな」と自粛したりして、自由が少ないときもある。

 しかし「リアルなつながり」のあるグループでは、つながっている人に対して、どんなときでも優しい。

 それが“リアルのつながり”のよさなのだ」と思う。そして多恵さんは、きっと今、“リアルなつながり”を大切にしているのだろう。

移住して得た“リアル”

 「住んでいる村では、運動会や文化祭や“歩こう会”などのイベントが色々とあるので、そうした地域のイベントには極力、参加するようにしています。都会と違って付き合いが“べた”なので、とりあえず、地域のお父さん、お母さんの中に入っていく。そして、たくさん顔を見ながらおしゃべりをして、メールや電話ではない、“顔と顔とを合わせた付き合い”を大切にしています。

 プライベートでは、移住する前からのお友達を家に呼んでBBQしたり、役場に勤める同じ年の方々とワイワイ集まることもありますね。

 それと、移住してから新しく知り合った町出身の方や在住の“同窓の仲間”たちは、私より一回り近く上ですが、彼らとは山歩きやランなど、同じ趣味で仲良くさせてもらっています」

“根無し草”からの脱却

 元は「知らない土地だったところ」で、多恵さんはとても人間らしい生活をしているように感じられた。 

 毎日、家でご飯を食べる。

 知り合いとは、ネットだけでなく、リアルでもちゃんと会話をする。

 近所の人たちと飲みに出かける。

 年代を超えた人たちと交流する……。

 地域おこし協力隊は一年ごとの契約で、最長3年まで延長した後は、町に定住するか、東京に戻るかを、隊員本人が決めるのだが、多恵さんはきっぱりと言い切った。

 「私は町に骨を埋める気持ちで来たので、3年後は自分で生計を立てていけるよう、今から自立の道を模索しています」

 この先どう変わってゆくかは、誰にも……もちろん多恵さん自身にもわからない。

 しかし42歳の多恵さんは、今、人生で初めて、“根無し草ではない生活”を手に入れたと感じている。

注:地域おこし協力隊とは、人口減少や高齢化等を食い止めたり、地域の活性化を図る目的で、外の人材を積極的に受け入れようとする総務省管轄の制度。2009年度にスタートし、2014年度には全国444の自治体で1,511人の隊員が活動した。期間は1年以上3年以下のところが多く、給与は平均16万円程度。いずれも地方によって異なる。
→地域おこし協力隊サイト(http://www.iju-join.jp/chiikiokoshi/) 

⇒第7回に続く。

*プライバシー保護のため、個人に関する事実については一部内容を変更しています。

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