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40代・おひとり様女子の移住(後編) 第6回 見知らぬ土地で見つけた“居場所” - にらさわあきこ

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42歳の吉岡多恵さん(仮名)は、憧れていた広告の仕事を辞め、地方に一人で移住した。地元でもなく、親戚もいない土地に彼女は何を感じて、移住を決意したのだろうか――。

年収が半減しても構わない

 実は、移住を決めた去年の段階で、多恵さんは例のブラックな会社から、企業の広報誌を作る会社に転職を果たしていた。

 年収は400万円。

 正社員で、仕事は夕方には終えられる安寧な職場である。

 過労を強いるうえ、「自由に書けない」ブラックな職場にいたので、「思う存分書きたいというのも転職理由だった」と聞いていた。

 なのに、彼女はその“条件”を捨て、地方の職場を選びたいという。

 ……なぜなのか?

書きたいという気持ちよりも……

 「町がやっぱり好きなんでしょうね。あんなに『書きたい』と思っていたのに、今は書かなくてもこの町のために働けるならいいやという気持ちになっているんです」

 仕事ぶりを評価してくれていた前の職場の上司からは、「フリーでもいいから」と転職後も仕事を継続してほしいと頼まれた。

 「だけど、断っちゃいましたね。今の仕事の邪魔になるものは、一切やる気になれないんですよ」

 変われば変わるものですね、と言って、彼女は笑った。

地域おこし協力隊

 今の彼女の肩書は、『地域おこし協力隊』である(→詳しくは5頁目・注釈参照)。

 総務省の制度にのっとって、全国の市町村が“町”で働く人を募集する。任期は1年から最大で3年。選ばれた隊員は、町の仕事に携わり、その間に定住の準備をする。月収は16万円程度。住まいや仕事や移動手段は、それぞれの町が用意する。

 多恵さんは、「年収400万円で好きな書く仕事のできる正社員」と言う立場を捨てて、「年収200万円で地方に住み、3年先の仕事は不明」という道を選んだのだ。

 しかも、決めた時点でも、今も、「貯金も資産も、ついでに結婚する予定もない」という。

 不安はなかったのだろうか?

飲んでもお金はかからない

 「そうですね。月収は16万円ほどですが、家賃は払わなくていいですし、車もガソリン代も、町から支給されています。食費も、こちらのみなさんは家で食べるのが普通なので、東京いたころと比べると減りました。今は毎日飲んではいますけど、ご飯を食べてから飲みに出かけますし、飲み代自体も、町中で飲む分は、月に1300円ほど出している“寄合費”から出るので、ほとんどかからないんですよ」

 住んでいるのは、職場まで車で20分ほどの一軒家。

 東京の人が聞いたらさほど遠い印象はないのだろうが、田舎で「車で20分」というのは結構な距離である。

 「本当はもっと町中に住めたら良かったのでしょうが、貸してくれる人がなかったんですよ。空き家はたくさんあるんですけどね……」

住まいは10LDKの一軒家

 地方ならではの“慣習”というか、“人目”を意識する風習からなのか、「人に貸すくらいなら、壊す」と考える空き家の持ち主が多いのだ。

 「だけど、おかげで10LDKですよ! これなら子供が10人いても大丈夫じゃないですか」

 子供の話が出たので、気になっていた“結婚観”について、聞いてみた。

 「結婚……ですか。そうですよね、20代のころは、結婚願望はまるでなしでした。同級生たちがハンを押したように結婚してゆく中で、自分には縁のない世界だと思っていました。それよりも、仕事で自分の名前を残したい、たとえば、自分の名前のクレジットが載った広告ポスターを作りたいとずっと考えてました」

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