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最期まで大切に生きる、をお手伝い

〈助成先訪問記〉 ホームホスピス縁の家

人生の最期をどこでどう迎えるか。家族にとっても、自分にとっても避けては通れない決断です。その選択肢の一つとして、医療/介護従事者に選ばれている場所があります。熊本県和水(なごみ)町にある「ホームホスピス縁(えにし)の家」。日本財団は、運営するNPO黎明を助成してきました。先駆的な取り組みの現場を訪れました。

画像を見る 熊本空港から車で40分の山間に、和水町はあります。福岡県との県境です。カーナビに添って、細い路地から山手に上がると昔ながらの家屋と畑と立ち並ぶ地区に入りました。案内はそこで終了。しかし、施設らしい建物は見当たりません。行ったり来たりしていると、お馴染み日本財団のロゴ入り車両が止まっていました。

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目指すホームホスピス縁の家はここでした。名前通り、施設ではなく「家」の佇まいです。

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玄関を入ると、代表で看護師の赤星文惠さんが迎えてくれました。「この建物はかつて、私の実家だったんですよ」

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玄関を入ると、正面にテーブルやソファが置かれたスペース。左側には縁側が続いています。現在、3人の利用者が三つの部屋にそれぞれ暮らしています。共通するのはベッドが入っていることだけ。部屋の広さや内装は異なります。民家ならではの落ち着いた雰囲気です。

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利用者の一人と目が合いました。「取材に伺いました」と語り掛けると、にっこり。

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歩いてすぐの、赤星さんの自宅でお話を伺いました。

ホームホスピスは、末期の癌を患うなどして医療の支えが必要となり、普通の家では看取るのが難しい方を受け入れる場所です。自分の家にいるかのような穏やかな環境を整えながら、現在、看護師などのスタッフ6人がケアに当たっていますが、家族はいつでも訪れ、最期も共に過ごせます」

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縁の家では、“自分の家にいるかのような”生活を送ってもらうために、さまざまな工夫がなされています。利用者が自宅で使っていた家具を持ち込んだり、家族が作った農作物を食事に利用したり。それぞれの事情やニーズに沿った工夫です。ここ過ごす日々は、利用者本人にとっても家族にとってもオーダーメードの時間なのです。

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ケアしてもらえる安心感と、自宅のような心地よさ。この環境がなせる業でしょうか、余命はわずかと言われていても1年以上過ごす人もいます。縁の家は、2010年12月にスタートしましたが、途中で退所できた利用者もいて、看取ったのはまだ1人です。

亡くなったのは89歳の女性。2013年のことでした。「その方は脳梗塞で認知症もあり、それまで家で介護を担当していたお嫁さんは1年で6キロもやせてしまっていました。お嫁さんは元保健師。『嫁として、質の良いサービスを提供しているところではないとお義母さんを預けられない。赤星さんのところでなら』と言ってお入りになりました」。

息子さんが自分で作ったお米を持ってきて食べさせるなど、家族も、女性が自宅に近い環境で暮らせるよう心を配りました。1年ほどしてお別れの時が来ましたが、息子夫婦は前の晩から泊まり、最期の時間を一緒に過ごしました。眠るような最期に、赤星さんたちスタッフは、家族から「大切にしていただいてありがとう。親孝行できました」とねぎらわれたと言います。

赤星さんはこの時、同じ屋根の下で最期を察していた他の利用者からも、声をかけられました。「あげなごとして逝くならよかなぁ」。赤星さんは言います。「どんなに年をとっていても死は不安で、苦痛を伴うこともあります。ここは最期を迎える場所ですが、そうした不安や痛みを和らげられるようにしたい。『ここがあってよかった』『ここはよかもんなぁ』と言っていただくのが一番の励みです」
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赤星さんは、ホームホスピスについてこう考えています。「患者さん一人ひとりと向き合うのは素晴らしいことです。でも、病院の中では果たせませんでした。“寄り添う”と言うのは簡単ですが、本当にそれができるのは、このようなホームホスピスだと思っています。うちは利用者の方が3人。時間をかけて、心の部分も寄り添うことができます。人は、人でしか看られないのです。薬とかそういうことではなく、自分を認めてくれる人の中で最期を迎える。それは、最期まで大切に生きるということだと思います」

赤星さんは病院勤務の経験から、ホームホスピスの必要性を実感、いつかは自分で作りたいと考えました。そこで2002年、現・縁の家の前の土地にまずグループホームを設立。認知症の患者に向き合いました。そしてその8年後、全国でも珍しい、認知症にも詳しいホームホスピスとして、縁の家を始めました。口コミで評判が広がり現在、待機者が7人。この先駆的な取り組みを聞きつけ、同様の施設を始めたいという人たちからの見学申し込みや相談も後を絶ちません。

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しかし、赤星さんは、ホームページの開設や一部パンフレットの作成を除いて、大々的な広報をあえて控えています。それには理由があります。

ホームホスピスに関する認識は地域で差があります。『おばあちゃんの最期はどこで?』と話題になった時、答えが“○▽病院”であればおさまりがいいところを、“ホームホスピス”となると、『なんだそれは?』となる傾向が、特に地方では否めません。ですから当面、こうしたサービスの重要性を知っている医療/介護従事者から『家族を預けるならここに』と選んでいただけるような運営や情報提供を心がけています。プロの目に自らをさらしてまずは質向上に励み、口コミで関心を持ってくれる方が増えたときに、よりよいサービスが届けられるようにできたらと考えています」

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質の良いサービスを追求する毎日ですが、課題はもちろんもあります。「やはりお金です」と赤星さん。一番大きいのは人件費です。看護師などの有資格者が24時間体制でケアに当たるので、避けては通れません。お風呂ひとつとっても、車いすごと入られるような設備が必要。NPOとして運営していますが、納税も発生します。「血中の酸素濃度を測る医療器などは10万円以上します。しかし、ケアに向けた必要なデータを得るために欠かせません。財団からの助成で、そうした最低限必要なものもそろえることができました」と赤星さんは語ります。

普段は、医療や介護の関係者を前に話す機会が多い赤星さんですが、来年1月には熊本県庁で講演するなど、行政に対しても働きかけを進めています。地域では中学校と連携し、中学生に福祉体験の場も提供しています。「尊厳のある死について、伝えていきたい」と取り組みに終わりはありません。

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利用者も、預けた家族も、納得できる最期を目指すホームホスピス縁の家。「その時が来てもそばにいるよ」(赤星さん)。「あんたがおるなら安心やね」(利用者)。そうしたやり取りが、今日も続いています。

● ホームホスピス縁の家
住所:〒865-0126 熊本県玉名郡和水町前原90-2
電話番号:0968-86-23230968-86-2323
ウェブサイト:http://www.enishi-ie.com/

● 日本財団 ホスピス・プログラム

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