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GDP600兆円は可能か。改めて世界の中での日本の位置を俯瞰してみた。 - 皆川芳輝

アベノミクス「新」三本の矢では2020年までにGDPを600兆円にする目標を掲げました。一方、人口の減少に呼応するように合計特殊出生率を1.8に回復、また1億総活躍というキーワードも出てきました。そこで一国の人口とGDPをキーに世界の中での日本の位置を俯瞰してみました。

■最近の各国の姿

図1は2014年の人口および名目GDP(以下特記ない限り名目GDPをGDPと書きます)をプロットしたものです(横軸:人口、縦軸:GDP)。
まずは、米国、中国、インドの数値が他国と比べて突出していることが目立ちます。日本もGDPが中国に抜かれたとは言え、先進国の中ではまだまだ強い位置を保っています。

【図1】各国の人口およびGDP(2014年)


この図においては原点から引いた線の傾きの大きさが単位人口当たりのGDPを表しますが、一般的には、1人当たりGDPによって以下のように分類されます。

(1)2万ドル以上【高所得国】米国、日本、西欧など
(2)3千~1万ドル【中所得国】中国、ブラジル、ロシア、メキシコ、トルコなど
(3)3千ドル未満【低所得国】インド、インドネシア、ナイジェリア、パキスタンなど

経済発展は(3)→(2)→(1)の方向を目指して進むのが一般ですが、(2)→(1)の段階で、「中所得国の罠」という言葉があります。これは、中所得国のまま停滞し高所得国の仲間入りが中々できない状況(1人当たりGDPが1万ドルから2万ドルに移行しない)のことで、低賃金の労働力等を推進力に経済成長し、中所得国の仲間入りを果たした後、自国の人件費の上昇や後発新興国の追い上げ、先進国の技術力進展などによって競争力を失い、経済成長が停滞する現象のことを言います。
「中所得国の罠」にはまったと言われるブラジルや中国などの今後の動きに注目です。


■最近10年間の変化

それでは10年前はどうだったのでしょうか?図2は2004年の人口および名目GDPを同様にプロットしたものです。すると図1とはだいぶ様相が違っています。

【図2】各国の人口およびGDP(2004年)


(1)2万ドル以上【高所得国】米国、日本、西欧など
(2)3千~1万ドル【中所得国】メキシコなどに加え、ブラジル、ロシア、トルコなどが仲間入り
(3)3千ドル未満【低所得国】中国、インド、インドネシア、パキスタンなど

図1と図2を見比べてみると、特に、中国、ブラジル、ロシアといった国が大きく発展したことがわかります。そして今後はインド、インドネシア、ナイジェリア、パキスタンなどの国が中国化、ブラジル化してくるであろうことが想像できます。

2004年~2014年までの過去10年のデータを見る限り、人口の増加率は数%から十数%程度であるのに対して、GDPの増加率は桁が違います。(具体的な数値は以下図3)

【図3】2004~2014年のGDPおよび人口の変化率

GDPに対しては、人口の増減の影響もありますが、設備投資による資本投下量や技術進歩の方がその影響度は大きいと言えそうです。


■人口が減ってもGDPを増やす方法はある

世界的に見るとこの10年間に世界各国はGDPが増加するなか、日本はGDPが減少するという特異な存在でした。アベノミクスによってGDP拡大を目指して動き出しましたが、参考になる他国はないでしょうか。
この10年間に人口が減少したのはロシア(0.4%減)とドイツ(0.9%減)です。ロシアは日本とは事情がかなり違うので参考にならないかも知れませんが、同じ先進国であるドイツは参考になりそうです。
繰り返しになりますが、ドイツは、2004年~2014年の間に、人口は0.9%減少する一方、GDPは37.2%増加(年率換算で約3%成長)しました。それが可能となった背景には、ユーロ安による輸出産業の活性化、積極的な設備投資、労働市場改革などいくつかの複合要因が挙げられています。
アベノミクスでも通貨安誘導や設備投資推進は行われてきておりドイツと同方向の政策が打たれています。となると大きく違うのは労働市場改革でしょうか?
日本で仮に年3%の成長が5年続けば目標のGDP600兆円も手が届く範囲になります。ドイツとまったく同じ施策が適用できるとは限りませんが、ドイツから学べる点はまだ大いにあると思われます。

注)図の数値は、GDPはIMF統計、人口は国連統計のデータを利用。図1,2はGDP上位50ヶ国についてプロット。
論点として、名目GDPではなく実質GDPではないか、GDPは米ドル換算値でよいのか、生産年齢人口で考えるべきではないか、GDPの拡大路線は正しいのか等議論の余地はありますが、ここではざっと全体を見るという観点から検討したため考慮外としました。



皆川芳輝 ファイナンシャルプランナー/証券アナリスト グローバルライフプランナーズ合同会社代表

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