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大阪ダブル選の結果は大阪衆愚政治の完成—我が国政治の劣化を加速させるか?

11月22日、大阪府知事及び大阪市長の任期満了に伴う選挙、いわゆる大阪ダブル選挙の投開票が行われた。この選挙、泡沫候補を除き、おおさか維新の会の公認候補と自民党の推薦を受けた非おおさか維新候補の事実上の一騎打ちとなったが、結果は府知事選、市長選ともにおおさか維新公認候補の勝利となった。

 府知事選は、非おおさか維新系候補が1,051,174票、得票率にして33.3%だったのに対し、おおさか維新公認候補が2,025,387票、得票率にして64.1%と、100万票近い差をつけた。一方市長選は、非おおさか維新系候補が406,595票、得票率にして38.5%だったのに対し、おおさか維新公認候補が596,045票、得票率にして56.4%と、こちらは20万票近い差をつけた。マスコミ各社の報道のとおり、まさに「圧勝」というに結果となった。

 ただし、投票率は府知事選挙が45.47%、市長選が50.51%と、前回のダブル選挙に比べて府知事選が7.41ポイント、市長選が10.41ポイント下がった。一部マスコミによる出口調査によると、都構想で賛成・反対のいずれに投票したのか訪ねたところ、反対票を投じたと答えた人が42%と半数以下となっており、都構想で反対票を投じた人が、今回の選挙に足を運ばなかったとも指摘されている。

 三連休中日が投票日ということが影響したのか、はたまた都構想が住民投票で否決されたにも関わらず、おおさか維新が再び都構想実現を掲げ、これと二重行政の排除を無理矢理結びつけ、その賛否を大きな争点としたことに有権者が辟易したことの結果なのか。いずれにせよ、この低い投票率がおおさか維新の「圧勝」に寄与したことは、ほぼ間違いないと考えていいのではないか。

 投票率低下の背景として挙げたもののうち、争点について少し掘り下げて考察する。今回のダブル選においておおさか維新は、選挙のキャッチコピーを「過去に戻すか、前に進めるか」とし、自分達は前に進める改革勢力、自分達に対抗するのは過去に戻す守旧派というように、選挙の対決の構図を単純化した。まるでハリウッド映画か、勧善懲悪ものの時代劇か、子供向けのヒーローもの漫画のように。(おおさか維新は善玉ヒーローで、自民党を中心とする非おおさか維新は悪玉悪徳集団、時代劇なら賂(まいない)で私腹を肥やす悪代官か勘定奉行というわけだ。)

 次に、自分達の成果を喧伝するばかりでなく、おおさか維新以前と維新以後を明確に分断し、以前は何もなかった、なされなかったかのように、それまでの首長や府及び市の取組をほぼ否定するか無視した。いくら首長が替わろうとも、行政は脈々とした連続性の上に成り立っており、少し冷静に考えれば、維新以前がゼロなどということはあり得ないのだが。

 そして、大阪都構想を金科玉条にし、二重行政の解消をはじめとして他の政策も全てこれに結びつけて単純化。都構想が実現されなければ大阪が衰退してしまうかのうのように話を歪曲化して、二者択一を迫る。

 争点や対立の構図の単純化、悪者や敵を創り出してそれを攻撃する、熱気とアジテーションで有権者を高揚させて自分達に投票させる、まさに扇動政治家のやり方そのものであり、それに煽られておおさか維新に投票し、「圧勝」させてしまった今回の選挙に、筆者は大阪の衆愚政治の完成を見る。

 しかし、この「大阪衆愚政治」完成の影響は大阪に止まらないように思えてならない。「大阪衆愚政治」の本質を言えば、政策や主義主張ではなく雰囲気に流されやすい有権者の投票によって地域の行く末が決まってしてしまうということである。政治家の側がその動きに過剰に合わせるようになったり、煽ったりするようになれば、選挙は政策論争や政策選択の機会ではなく、単なる人気取り、有権者迎合の度合い、有権者を乗せる空気作り競争の場に堕してしまいかねないのではないだろうか。(ちなみに、有権者の声を聞いてそれを政策に反映させるように努めることは、有権者迎合とは全く異なる。有権者迎合には課題解決のための政策の企画立案は存在しない。その点で、地域密着型の自民党議員は余程ましかもしれない。まさにそうした地域密着型議員も、おおさか維新の「敵」なのだろうが。)

 これまでもそうした傾向は見られたが、今回の結果を受けて、特に来年の参院選を目途に、その傾向が強まることも懸念される。実際、おおさか維新の結党を受けて、これに呼応した動きが元維新の党所属議員を中心に見られる。(軽挙妄動と評したくなるが。)そうなれば、野党が掲げる打倒安倍政権、打倒自民党政権が難しくなるばかりか、政策や主義主張を軸とした野党再編や野党連携の実現など望むべくもなくなるのではないか。

 以前、おおさか維新の動きを日本の政治の劣化の象徴と書いたが、今回のダブル選を気にこれを加速化させるようなことがあってはならない。そうではなく、衆愚政治や扇動政治を懸念し、有権者が覚醒する機会としなければならないのではないか。

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